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「スポーツにはドラマがある」という人も多くいますが、スポーツはただ体を鍛えるだけでなく
心も鍛えてくれます。
映画監督である井上秀憲がセレクトし解説したスポーツ映画を通して、もっとスポーツを好きに
なってください。

解説:井上秀憲(映画監督)
“Jam Films2”で第8回釜山国際映画祭において特別招待作品賞受賞。
数々のアーティストの音楽ビデオやドキュメンタリーフィルム、カスタムカー・バイク・
エクストリームスポーツやサブカルチャーを撮り続ける映像作家。“CROSS CHORD”など
映画監督としても、精力的に活動中。井上秀憲の詳しい情報はこちらから。


AMERICANFOOTBALL   
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 AMERICANFOOTBALL
■マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡

監督:マックG
出演:マシュー・マコノヒー、マシュー・フォックス他
2006年 アメリカ映画

“復活するために必要なもの”
名門のアメフトチームを持っているマーシャル大学。それは単なるカレッジスポーツではなく、町の人達の希望であり、町をつなぐ象徴であった。そんなアメフトチームを乗せた飛行機が遠征の帰りに墜落し、全員他界する。残されたのは4人のメンバーと試合に出場出来ない1年生と何人かのアシスタントコーチ。次のシーズンを見送って喪にふくそうとしたが、残されたメンバーや大学の生徒達によって、すぐ復活することを目指すことにした。コーチ選びや選手集めから難航するが、徐々にチームが出来ていく。どんよりとしていた町の人達も、アメフト部の復活で少しずつ元気を取り戻していく。初めてアメフトをやるメンバーもいる急造のアメフト部。彼らは勝利を目指し、チームは1つになっていく。そんなアメフト部の復活の事実を作品化したのがこの“マーシャルの奇跡”である。アメリカの大学スポーツは単に大学だけのものではなく、地元の象徴となっているものが数多くある。町の人達は大学スポーツの勝敗に一喜一憂し、グランドに足を運び、練習を見ながら会話を楽しむ。この感覚は日本では分かりづらいが、アメリカの田舎に行くと、カレッジTシャツやトレーナーを全世代の町民が着ている。復活するためにやってきたコーチは、この町の出身者でない何の関わりもない人間だった。しかし彼は「町を元気にするにはフットボールの力しかない、だから救いたいんだ」ヘッドコーチとなった彼は大学スポーツを“家族”という目で見て復活に力を注ぐ。立ち止まっていても悲しみは増すだけ。一勝して初めて亡き人達に敬意を持てるのだ。彼の考えで多くの町の人達の心も救うことが出来た。復活のために必要なもの。それは前に進むことに対して“恐れない心”。その大切さを教えてくれる、本当に出会えてよかった作品でした。


■栄光の彼方に


監督:マイケル・チャップマン
出演:トム・クルーズ、リー・トンプソン、クリストファー・ペン他
1983年 アメリカ映画

“日本とアメリカのスカラシップ”
トム・クルーズ演じる主人公は、さびれゆく鉄工所の町にある高校のアメフト選手として活躍していた。父も祖父もこの鉄工所で働き、兄も働くのだが人員カットで無職になってしまう。しかしこの町の産業は鉄を作る事しかなく、さびれゆく町の唯一の希望が地元高校のアメフト部だった。彼らの活躍は町全体の喜びだった。主人公はこんな町を出て、自分が将来やってみたい設計の仕事に就けるよう工科大でアメフトと勉強をすることを望んでいた。しかし家は貧しいので奨学金を受ける必要があった。そのためにも人一倍アメフトの練習も勉強もしたのだが、男気が強く友達思いで思った事を言わないと気がすまないタイプなのでコーチと衝突してしまう。コーチは大学の推薦を決める大きな壁となる。若い力でどのように打開していくか?この作品は、そんなアメリカの貧しい田舎町の青年を描いた作品である。この作品で描かれている“大学推薦”だが、日本とアメリカでは捉えられ方が大きく違う気がする。日本のスポーツ推薦は、スポーツの成績がフューチャーされ過ぎている。やりたい学問などよりも「このスポーツの名門は○○大学だから」という理由だけで、高校生が学校を決め過ぎていると思う。アメリカの場合、スポーツはもちろん、学科や学部、研究内容などを事細かに話をし、卒業後の人生までも話をするそうである。トップアスリートのセカンドキャリアも含め、“スポーツと大学”のあり方を考えなくてはならないのかもしれない。


■ルディ/涙のウイニング・ラン


監督:デヴィッド・アンスポー
出演:ショーン・アスティン、ジョン・ファヴロー他
1993年 アメリカ映画

“夢と努力”
ノートルダム大学の1人のアメフト選手の実話を映画化した“ルディ/涙のウイニング・ラン” このルディという青年は背も小さく、読書障害を持っていたため学力もなく、特に運動能力が高い訳でもない、どちらかと言うと兄弟の中でも大学に行くタイプの人間ではなかった。しかし、兄弟とやっていたフットボールが大好きで、テレビの中のノートルダム大学のチームに憧れていたルディは、高校の先生に「無理」というレッテルを貼られ、受験すらせず、高校卒業後、工場で働き始める。そんな中、親友は夢をあきらめないように応援してくれていた。その応援を糧にルディは少しずつお金を貯め、いつの日かノートルダム大学を受験しようと思っていた。しかし、同じ工場で働いていたその親友が、事故で突然他界してしまう。ルディはその日を境に夢に向かう決心をする。特に能力もない普通の人間も、“熱意”と“努力”で夢を叶えることが出来るということを証明してくれる作品である。大学時代もレギュラーになれず、卒業する前にたった1試合だけベンチに入れてもらい、公式試合に5分も出ていないこの青年をフューチャーしている部分が本当にユニークである。スター選手の生き様を描いている作品は数多くあるが、スター選手でないが、チームに必要とされている人間の大切さをしっかりと描いていることで、誰もが夢を持っていいのだということを教えてくれる。夢に向かって努力しているすべての若者に見て欲しい“ルディ/涙のウイニング・ラン”本当に勇気を与えてくれる作品です。


■ロンゲスト・ヤード


監督:ピーター・シーガル
出演:アダム・サンドラー、クリス・ロック、バート・レイノルズ他
2005年 アメリカ映画

“リメイクならではの良さ”
アメフト映画の不朽の名作“ロンゲスト・ヤード”をピーター・シーガル監督がリメイクした作品。1970年代の話を21世紀になった今の話にし、その当時の人種差別的な話を外し、今のテイストでオリジナルを壊さず、エピソードも入れつつ、本当にリメイクの良さが伝わってきた。キャスティングもMTV制作ならではのラインナップ。Nellyなどのラッパーやボブ・サップなどのレスラー、本当のアメフト選手などが主演のアダム・サンドラーを支えている。僕はスポーツ映画に本物のアスリートを起用するのに大賛成の人間である。いきなりプレイに本物感を表現出来るからだ。アスリート達とミュージシャンと俳優が1つになって作った作品は、テンポも良いし、本物感たっぷりでエンターテイメントしている。さらに、ただのリメイクでなく、今の文化をしっかり入れたことで、“昔の話すぎてよい話なんだけど体験しづらいな…”という他人事にならず、すんなりとストーリーに入らせ、VFXを上手く使っているところがなんともニクイ。ロンゲスト・ヤードはまず新しいリメイク版を見てオリジナルを見ると、両方とも新鮮に見ることが出来て良いだろう。年をとった人間が昔の話として出しても伝わりづらいが、今の話に置き換えたら伝わりやすいこともたくさんある。“リメイクならではの良さ”を最大限に活かした素晴らしい作品です。


■ロンゲスト・ヤード


監督:ロバート・アルドリッチ
出演:バート・レイノルズ、エディ・アルバート、マイケル・コンラッド他
1974年 アメリカ映画

“支配と誇り”
看守と囚人達のアメフトチームが自分達の誇りをかけて試合を行う様子を描いた“ロンゲスト・ヤード” 1人のアメフト好きの所長が看守達のアメフトチームを持っていた。そのチームのコーチにさせる為、元プロのアメフト選手を自分の刑務所に囚人として呼び寄せる。コーチを断ったその男にひどいことをする看守達。そんな中、シーズン初めの試合を八百長試合にするようその男に言い、囚人達のアメフトチームを作った。正々堂々、勝利を求めチーム一丸となっていく囚人達。所長の支配に耐え切れず人間として扱ってもらえない男達の意地だった。そしてついにゲームの日がやってくる。八百長試合にしてしまうか?それで少しは仲間を人間的に扱ってもらおうと思っていたが、もっと必要なことがあった。それは人間としての誇りだ。途中心は揺れ動くが、誇りを求め、勝利に向かって走り出す。結果は作品を見て楽しんでもらいたいのだが、この作品を通して、無意味でエゴな支配は反発を生むだけで、何もそこからは生み出されないことを教えてくれる。暴力や脱走でなく、スポーツを通して“誇り”を持つことは大変良いことだと思う。少なくとも皆自分に誇りを持って生きている。しかし、支配を考えている権力者を前にすると、その誇りを捨ててしまうこともある。しかし、そこからは何も生まれないのだ。親が子供にスポーツをさせている時、熱くなって怒る人がいるが、そこからは何も生まれない。誇りを持ちながらスポーツを行える環境を作ることの大切さを教えられました。


■ファンキー・モンキー


監督:ハリー・バジル
出演:マシュー・モディーン、セス・アドキンス他
2004年 アメリカ映画

“アメリカの子供達”
夏休みや冬休みに“ドラえもんや“クレヨンしんちゃん”みたいなアニメ映画で子供達向けに笑いながら道徳を教えていく日本の風習がある。アメリカではまさにこんな作品で子供達に友達の大切さなどを教えているのだろうと感じさせられた作品がこの“ファンキー・モンキー”である。兵器として育てられたチンパンジーと訓練士が組織から逃亡し、たどり着いた街で、秘密を暴く為、様々なことをする中で、アメフトをやりたい少年と出会い友達になり、彼らの力と勇気と正義で悪と戦うというまさに“ドラえもん”などのテーマと同じような展開である。その中に、アメフトやチア、FMXやスケートボードなどアメリカンスポーツが入り込み、“ホーム・アローン”的なドタバタとアメリカンジョークという、アメリカの子供達が好きそうなものを詰め込んでいる。アメリカの子供達は小さい頃からこのような映画を家族で観に行くから、スポーツに憧れを持つようになるのだろう。もちろん、プロのアスリート達の活躍やドキュメントを見せることも大切だと思うが、子供心に親しみやすく、楽しい形でスポーツを見せ、憧れを持たせることも大事だと僕は思っている。幼い子供を持っている親が、子供と一緒にこのような作品を「友達を大事にするんだよ」などと話しながら見るという習慣が出来れば、日本でのスポーツ映画の必要性がもっと広がるのかもしれない。


■ウォーターボーイ


監督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラー、キャシー・ベイツ他
1998年 アメリカ映画

“己に勝つこと”
過保護に育てられたマザコン31歳の給水係がアメフトの選手になり、自分の人生を開花させていくコメディ作品“ウォーターボーイ” アダム・サンドラー演じるアメフトの給水係は、31歳になっても友達もいなく、チームからはいじめられ、チームの和を乱すということで辞めさせられる。給水係をしたくて他のアメフトチームに仕事を求めて行くと、そこでもバカにされ、怒りで選手にタックルするとそのパワーで簡単にその選手をなぎ倒してしまった。その破壊力に驚いた監督は、彼を選手として起用する。大学のチームなので31歳にして彼は大学生に。マザコンで高校にも行かず母と2人きりの世界だった彼にとって、大学生活を送り、チームでプレイすることにより社会への扉が開いた。母との世界は、自分のことを守ってはくれるが、何の広がりも無い。世間に出て行くことは、大変なことはあっても頑張れば認めてもらえ友達も出来る。「己に勝つこと」それは何か一歩踏み出さないと始まらないのである。自分の世界に閉じこもっていると、嫌なことは少ないかもしれないが、未来は広がらない。勇気を出して新しい世界に飛び出そう。そんな力を、笑いの中で教えてくれる作品です。アメフト映画はシリアスなものも多いのですが、この“ウォーターボーイ”はとにかく笑え、楽しさの中パワーをくれる1本です。


■ザ・エージェント


監督:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ、キューバ・グッディング・Jr、レニー・ゼルウィガー他
1996年 アメリカ映画

“スポーツビジネス”
トム・クルーズ主演のスポーツエージェントを描いた作品“ザ・エージェント” 僕もスポーツビジネスをしている人間の1人として、すごく真剣に見ていた。映画としてでなく、仕事のやり方まで考えさせられた。マネーゲームとしてやっている大手事務所の一員だったトム・クルーズ演じるジェリー。選手とエージェントの心で通じる関係を訴えると会社をクビになってしまった。選手は1人のアメフト選手しかついてこなくなり、理想に向けて頑張るが、なかなか上手くいかない。理想と現実の間、大切なものを守り抜く強さが薄らぐ時もある。選手達にハートで戦う大切さを伝えること。スター選手であっても尊敬される人間に育てていくこと。本当のスポーツビジネスの大事な部分を表現している。人によっては確かに綺麗事に聞こえる人もいるだろう。誰だって多くの金は欲しいし、保障もしてもらいたい。でもそのスポーツが好きだという気持ちを持ち続ける大切さ、人を愛する気持ちを伝えることが出来るアスリートを育てなくては、スポーツビジネスそのものの意味が無い。今やっている僕の仕事を改めて考えさせられる作品だった。理想を求め、初心を忘れず頑張ろうという勇気を与えてくれた。選手とサポートする人間との一体感、そして共に掲げる理想。トップアスリートの未来を創るために必要なことを教えてくれるとても意味のある作品です。スポーツビジネスをする人には必ず見て欲しい1本です。


■ゲーム・プラン


監督:アンディ・フィックマン
出演:ドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、マディソン・ぺティス他
2007年 アメリカ映画

“技術と精神”
技術では最高のクォーターバック“ジョン・キングマン”は、誰も信じず、自分のやりたいようにプレイをしていた。絶対的な彼のプレイでチームはついていくしかなかった。そんな時、別れた妻との間に出来ていた娘が登場する。前妻と別れ、一人暮らしをしていたジョン。しかし前妻のことが忘れられず、娘の面倒を見ることにする。娘はおてんばでバレエ大好き、スポーツも好きな子供で、アメフトの練習も見に行くし、スター選手である父もバレエに巻き込んでいく。父と娘の冷ややかな関係も、やがてお互いを信頼するようになり始める。娘を大切にし始めると、徐々にチームのことも信頼するようになったジョン。孤独だったスター選手が、本当のチームのリーダーになっていく。この作品は、真のスター選手は技術だけでなく精神の大きさも大切だということを教えてくれる。スポーツは“心技体”全てで行うものである。その全てを手に入れた時、一流となれるのだ。「“ノー”と言わない」という台詞がこの作品にやたらと出てくる。しかし、前半と後半では全く意味の違う言葉となっている。前半は孤独な人間がスター選手にかじりつく為の台詞であり、後半はチームの為、娘の為、仲間の為に使われている台詞である。同じ台詞が人間の成長でこれほどまでに持つ意味が変わるものなんだということをすごく上手に感じさせる作品。バレエとアメフトのシーンのカットバックも非常に面白い。単純に素晴らしいスポーツエンターテイメント作品である。


■僕はラジオ


監督:マイク・トーリン
出演:キューバ・グッディング・Jr、エド・ハリス他
2003年 アメリカ映画

“知的障害者とスポーツ”
1976年、アメリカ・サウスカロライナのハナ高校アメフト部の“コーチ・ジョーンズ”と知的障害を持つ通称“ラジオ”の実話を映画化した作品“僕はラジオ” 当時アメリカ南部の田舎町の高校は知的障害者を受け入れてなく、施設に入るか自宅で生活するしか、彼らの生きる道は無かった。自宅で生活していたラジオは、病院で働く母のいない時は、高校の周りを歩き、アメフトを見るのが日課だった。ある日、アメフト部の高校生がラジオをいじめているのを“コーチ・ジョーンズ”が発見し助け、ラジオに詫びる。無口なラジオにチームの練習の手伝いをしないかと誘うところから2人の友情は始まる。学校に出入りさせていると、ラジオは少しずつ明るくなり、生徒や職員達と交流を始めるようになる。いつの間にか人気者になってしまったラジオ。しかし、大人達の中には知的障害者が自分の子供と同じ学校にいることを恐怖だと思ったり、コーチの慈善には何かがあると煙たがる人達もいる。そんな中でも友情を育もうとする2人。そしてコーチの家族の葛藤が静かに描かれている。ラジオは今ではハナ高校の名誉コーチとして町の人気者になっているそうだ。ラジオと町の人のふれあいのおかげで、この町には知的障害者と壁が無く仲良くやっているそうだ。僕も時々アスリートと一緒に知的障害者の施設を訪問している。その時思うのは、哀れみなどでは無い。彼達のストレートな応援が、アスリート達の力になっていることがわかるからである。選手達の中から、自主的に施設に行く者も出てきた。アスリート達は彼らが与えてくれるパワーの存在を知っているからだ。知的障害者が純粋にスポーツに与えるパワーを皆にも知ってもらいたい。


■タイタンズを忘れない


監督:ボアズ・イェーキン
出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・ハースト、ウィル・パットン他
2000年 アメリカ映画

“人種の壁”
70年代初頭、公民権法が施行され、法律上は白人も黒人もすべての人種が平等とされたが、実際は差別が続いていた。バージニア州も教育改革として白人と黒人を同じ高校に通えるようにした。この作品はバージニア州立T.C.ウィリアムズ高校が初めて白人黒人混合校になった年に生まれたアメリカンフットボールチームの奇跡の実話を映画化したものである。
最初はチームも黒人と白人が二分化され、2人のコーチも交わることさえなかった。しかし、南北戦争の決戦地“ゲティスバーグ”でお互いを知り、1つのチームになる努力を始めるようになる。カリフォルニアなどの都市部では、既に白人も黒人も無い社会が出来つつあり、そんな転校生がチームに入ってきたので、徐々に差別が無くなってきた。チームは団結したものの、街の人々は人種差別を取り払うことが出来ず、チームへ向ける目も痛かった。しかし、選手達の団結はそんな周囲の偏見もはね返し、勝ち進んでいくことで、少しずつ差別が無くなっていく。1つのスポーツを通し、自分達だけでなく、地域の人までも差別の無い世の中にしていく。“政治の力”で叶わなかったことが、“スポーツの力”で叶えることが出来るということを証明した1つの事実が、この作品に刻まれている。“スポーツ”は何も語らずとも真剣に試合をし、生き様を見せることで、伝える力を持っている。言葉だから伝わらないこともあるということ、言葉でないから伝わること。そんなスポーツが創り出す奇跡をこの作品は教えてくれます。


■しあわせの隠れ場所


監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:サンドラ・ブロック、クィントン・アーロン、ティム・マッグロウ他
2009年 アメリカ映画

“家族の愛とは?チームの愛とは?”
多くの店を経営し、セレブな暮らしを送る白人家族が、親に捨てられ1人で生きている黒人高校生を家族として迎え、
フットボールの選手として大学にまで入れてあげるアメフトヒューマンストーリー
“しあわせの隠れ場所”
黒人高校生“ビック・マイク”は出生届も出しておらず、スラムで生まれ育ち、暴力事件の中、母親から引き離され、里子に行ってもなじめず、半そでのポロシャツ2枚だけで、体育館やコインランドリーなどに寝場所を求めるホームレス高校生であった。誰も信じることが出来ず、勉強も学ぶ意志が無く、典型的な貧しい黒人生活を送っていた。そんな時、彼は“SJ”という少年と出会う。SJの母は“ビック・マイク”を見て、自分の家に引き取り育てることを思い立つ。ビック・マイクは元々持っている運動能力を活かし、アメフトチームを連勝に導き、学問をする意欲も持ち始める。家族の愛とやすらげる空間は、1人の若者が生きる意欲を取り戻し、成長する原動力となったのである。環境は人間にとって大切なもので、その人の人生に大きな影響を与えるものである。ハングリー精神が無いと、人は勝負に勝てないことが多い。しかし、その精神を活かし、自分を育成出来る環境も同時に必要なのだと僕は思う。色々なチームに所属している選手達はたくさんいるが、チームが選手達が育つ環境を作ってあげないと、心も体も技も育っていかないものである。飼い殺しみたいな状態では、才能をつぶしてしまうことだってある。そんなことをしっかり理解して、若いアスリート達と付き合っていかなくては…と自分に言い聞かせるきっかけになる映画でした。家族やチームの愛の大切さを教えてくれる1本です。


■エクスプレス 負けざる男たち

監督:ゲイリー・フレダー
出演:ロブ・ブラウン、デニス・クエイド他
2008年 アメリカ映画

“スポーツが切り開いた平等”
大学アメリカンフットボールで活躍し、23歳で他界したシラキュース大学のアーニー・デイビスを描いた“エクスプレス 負けざる男たち”
アーニーは貧しいながらも炭鉱で働く優しいおじいさんのもとで育てられる。野球の世界では徐々に黒人も進出し、アメフトもプレイヤーとしては出てきているものの、どんなに良い成績を残しても、賞は獲得出来ないし、差別主義のレフリーだと、故意のファールをされてもとってくれない。南部に行くとホテルも泊まれず、客からもブーイングの嵐。タッチダウンの瞬間は白人プレイヤーにボールを渡さないと微妙な時は得点も出来ない。これがスポーツなのか?と疑問を持ってしまう。フェアプレイの精神などどこにも無い。「敵はコートの外にいる」という台詞がずっしりと胸にきた。アーニーはそれでもプレイをし続け、誰もが文句を言えない成績を残し、アメフト界での人種差別を無くすきっかけを創り上げた。今では、黒人無しのNFLのチームなんて存在しないであろう。先人達の苦しみや悲しみの上に、この状態があるのだ。平等なんて普通と思っているが、今でも小さな差別は存在する。派閥であったり、出身校であったり…。アスリートはプレイで見せて、自分の地位を獲得していくしか無いのかもしれない。誰もが認めるプレイをすることこそ、自分の環境を作ることにつながるのである。
“白人コーチと黒人プレイヤー”
コーチはアーニーを守るために試合に出ないことを勧める時がある。しかし、アーニー達は試合の後もコーチが守ってくれることを信じてピッチに立つ。解放なんて、そんな小さな、でも大きい信頼関係から始まっていくのかもしれないと思った。


■奇跡のロングショット

監督:フレッド・ダースト
出演:アイス・キューブ、キキ・パーマー、タシャ・スミス他
2008年 アメリカ映画

“親として守るべきもの”
夫が家を出て、娘を一人にしておけない母が、アイス・キューブ演じる夫の弟に学校後の育児を任せることにした。彼は元々この町の有名なアメフトの選手だったが、けがで選手を断念。その後、工場でまじめに働いていたが、町全体が不況になり、工場も閉鎖。無職となったとき、お金をもらえるから育児を引き受けた。姪は、学校でいじめられ、1人で本を読むのが好きで、モデルに憧れる気弱な女の子だった。そんな姪に、フットボールの性能があることに気づく。社会から外れている2人にとって、2人だけのフットボールの練習は楽しい時間だった。彼は姪に1つの提案をする。
“フットボールチームの入団テストを受けてみないか?”
目立たないように生きてきた彼女にとっては、大きな壁を自ら作るようなものだ。男ばかりのアメフトの世界にQBとして入るなんて…。しかし、彼女は見事合格し、チームに試合ごとに徐々に信頼され、チームにとって欠かせない存在になっていく。アメリカNo.1を決める大会の出場が決まり、TVなどの取材を受けると、突然父親が彼女の前に現れる。僕はこのような父親に対し、むしょうに腹が立つ。いつも逃げていて、良い時だけ現れる。親として常に子供を守り、逃げないことの大切さを教えるというのが、親としての役割だと思う。常に近くに感じられる存在が、親の役目であるはずだ。1人の少女のアメリカンドリームの話ではあるが、親として守るべきものの大切さを教えてくれる作品、“奇跡のロングショット” 親子で見てもらいたい1本です。

 

■リプレイスメント

監督:ハワード・ドゥイッチ
出演:キアヌ・リーヴス、ジーン・ハックマン他
2000年 アメリカ映画

“2度目のチャンス”
NFLの選手達がストライキをシーズン中に起こし、チーム側は代理選手を集め、シーズンを戦うことにする。大学時代、スター選手だったが大敗して失望した者、戦争に行った者、ボディガードとして裏方になった者…。現役でない、しかもアメフトから離れている者達でチームを結成。しかし、彼らはあくまでも代理選手。ストが終わると元の生活に戻らなくてはならない。そんな代理選手達が、一瞬の輝きを求め、チームとして前に進んでいく姿を描いた“リプレイスメント”
憧れのNFLのチームが、どこの誰かも分からない人を代理選手として起用し、ゲームをするのだから、最初はファンの怒りはすごかった。しかし、自分達の存在に近い選手の頑張っている姿を見て、徐々に応援するようになっていく。ここに集められた選手達は、エリートでもないし、スターでもない。何らしかの挫折があって、誰も知らない街の片隅で仕事をし、生活をしている。一瞬の輝きを求め、飛び込んできたチャンスに、個性豊かな人達が必死に汗を流している。悩みも無く、勝ち上がった人は、背負うものが少ないので、“金”や“名声”を求めるようになっていく。アスリートと付き合っている中で、苦労したり、挫折感を味わっている選手のほうが人間的にも面白いし、プレイに対して真摯な態度で接している人が多い。そして、彼らの勝利はもちろん、プレイしている姿にも共感が持て、つい応援してしまう。スポーツのプレイスタイルは、そのアスリートの人生を映し出していると僕は思っている。アスリートと話していて「こいつのプレイを見てみたい」と思わされた人のプレイは、感動させられることが多々ある。今、悩んでいるアスリートは、この作品を見て、2度目のチャンスにトライしてものにして欲しい。


■エニイ・ギブン・サンデー

監督:オリバー・ストーン
出演:アル・パチーノ、キャメロン・ディアス、デニス・クエイド他
1999年 アメリカ映画

“スポーツを愛する気持ち”
アル・パチーノ演じるNFLの監督と、そのチームオーナーであり、前オーナーの娘でもあるキャメロン・ディアス演じる経営者の戦いを中心に、オリバー・ストーンが描いたアメリカンフットボール映画“エニイ・ギブン・サンデー”
真のチームを作るために頑張る監督と、勝ちと派手なプレイ、スタープレイヤーを作って、チームをTVやCMに引っかかるようにし、チームの値を上げようとする経営者。監督は“アメフトの精神”を大切にし、チームを作っていた。
“QBはチームリーダーであり、尊敬される人物になれ”
“みんなで他のプレイヤーを守ってあげろ”
“勇気を持って相手をつぶせ”“全員で前に出て行け”など、アメフトの持っている精神で作戦を作り、バックヤードでも選手を鼓舞していた。一方、経営者は、スタンドプレーをしてでもスターを作り、CMに出演させたり、チームドクターに嘘をつかせて、ケガしそうな選手でも客人気の多い人は出場させようとしたり、金儲けとしてチームを動かそうとしていた。その対立に振り回されるチーム。不安になり、チームに不信を感じる者も出てきて、おかしくなってくる。選手にフォーカスされがちだが、この作品は、監督と経営者にフォーカスしているので、いろいろと考えさせられる。確かに精神も大事だが、プロのチームなので、経営も大事。でも、チームの精神を生かし、経営していく方法は無いのだろうか?確かにこの問題は、僕も時々考えさせられることがある。キッズのスクールなど、良いことをしているのだが、金が足りない時など、本当に頭を抱えてしまう。そんな問題の答えのひとつをこの作品は教えてくれた。それは、“そのスポーツを愛する力”があれば、少し方向性が違っても、お互い前に進めるということだ。アメフト自体を愛する気持ちを皆が持つようになって、この作品の中でも、問題は少しずつ解決していった。僕もスポーツに関わっている人間の1人として、この作品は非常に考えさせられる1本でした。


■インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン

監督:エリクソン・コア
出演:マーク・ウォールバーグ、グレッグ・ギニア他
2006年 アメリカ映画

“ロッキーと並ぶ不屈の男”
1970年代、低迷していたフィラデルフィアイーグルスを再生した男ヴィンス・パパーリの物語を映画化した作品“インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン”
この当時のフィラデルフィアは、工場の人員削減、ストライキと、労働の場が急減し、パパーリ自身も仕事を失い、週2回の補助教員職も失って、バーテンのバイトで生活をつないでいた。妻にも逃げられ、仲間と共にタッチフットしかしていなかったパパーリが、イーグルスのトライアウトを受け、合格する。キャンプのセレクションで落とされるかもしれないのに、夢をあきらめきれず、全力で立ち向かっていく。高校時代、1年間しかアメフトをしていなかったパパーリ。大学はアメフト部が無く、タッチフットに転向。新監督が突然経歴を問わないトライアウトをし、目をつけられたパパーリが他の人と違ったところ。それは才能もあっただろうけれど、“不屈の精神”だったのだろう。NFLのメンバーということで、全員ある程度の能力を持っているはずである。なのに勝てないチームになっていたのは、勝利への熱が失われていたからだろう。町の代表として、自分の頑張り、チームの勝利が、フィラデルフィアの人に勇気を与えると信じて、常に全力で戦うパパーリに、チームは勇気を取り戻し、再び強いチームになっていた。パパーリはイタリア移民で、まるでロッキーのようだ。ドキュメント映像に、ロッキーと同じようにフィラデルフィア図書館の階段を駆け上がっていくシーンがあった。町を走る姿やドキュメント映像の姿を見ると、まさにロッキーだ。彼の不屈の精神は、仕事を失い失望していた人々に元気を与えたはずだ。自分達と同じように失業した人間が、夢をつかみ、相手をタックルでなぎ倒していく姿は、“あきらめずにやれば出来る”ということを証明しているようだ。30歳を過ぎても夢を掴むトライをしているパパーリの姿は、世界中の大人の元気を取り戻してくれるに違いない。

 
■プライド 栄光への絆

監督:ピーター・バーグ
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、デレク・ルーク 他
2004年 アメリカ映画

“17歳とプレッシャー”
1988年テキサスのパーミアン高校アメリカンフットボール部の実話を元に映画化された作品である。英題はFRIDAY NIGHT LIGHTS。
街全体が高校の伝統あるフットボール部を応援し、高校生達は重圧を受けていた。練習にOBは毎日集まり、部室にTVカメラが入って常に中継する。街で食事をしていても声をかけられる。映画だから大げさに描いているかと思っていたら、当時の映像や写真が残っていて、本当に映画とそっくりの状況で驚いた。
父が有名選手で息子もスター選手に…とすごいプレッシャーをかけられる選手。
QBは、母が病気で自分が守らなくてはと考え、大学からの誘いも断ろうとするが、街の人は許してくれない。
高校生達にとってはプレッシャーとの戦いだっただろう。個人競技だったら、彼らはきっとプレッシャーに勝てたのだろう。
チームが絆を作り、チーム全体が強くなっていくと共に、一人一人の心が強くなっていく感じが伝わってくる。
高校のアスリート達を育てるコーチは、スポーツの技術や戦略だけでなく、生き方や人生のコーチもしなくては、強いチームを作れないと感じさせられる。
プロのチームの監督よりも大変な仕事なのかもしれない。
パーミアン高校の期待のプレイヤーが怪我で選手から外されてしまう。フットボールしか取り柄の無い彼にとって、“第2の人生”を17歳で考えなくてはならないということは、大変なことだったに違いない。でもコーチは、テキサス州のファイナルのバスに彼を乗せ、選手達に彼もチームの一員だと伝え、皆の絆を強くした。
もし見捨てられていたら、彼の人生はどうなったことだろう。
高校生という多感な時期に、1つのスポーツを通し人生を学ぶことの大切さを、この作品に教えてもらったような気がする。


 BASEBALL
■ミスターGO!

監督:キム・ヨンファ
出演:シュー・チャオ、ソン・ドンイル、キム・ガンウ、オダギリジョー他
2013年 韓国映画

“友情と期待”
韓国のプロ野球チームに、中国のサーカス団のゴリラが助っ人として入団し、選手になってしまうという完全なコメディ野球映画だが、実は感動ものの作品です。サーカス団を守る1人の少女とゴリラ。金儲けのつもりでゴリラをスカウトしたエージェント。交わるはずのない3人が「お金」の為に手を組んでしまう。サーカスの借金を返したい少女、金を稼ぎたい男。お互いに自分の為に始めたことだが、苦難に共に立ち向かううちに心が通じていく。そしてゴリラにまでその友情は伝わっていく。人は期待に応えようとするが、その感情はゴリラなど動物には関係ないものである。しかし、そんなゴリラが期待に応えようとする。「期待に応えたい」という気持ちは本能なのかもしれないと思わされる作品でした。最初はただのコメディ映画のつもりで見ていたのですが、どんどんこの不思議な世界観に引き込まれ、途中から普通の野球を見ているかのように、応援している自分に後から気づき、少し驚いています。親子で見るにはとても良い作品。「友情」と「期待」に応えられる子どもを育てたい親御さんは、是非お子さんと一緒に鑑賞してください。 


■アゲイン 28年目の甲子園


監督:大森寿美男
出演:中井貴一、波瑠、和久井映見、柳葉敏郎
2014年 日本映画

“スポーツの友”
2015年初スクリーンがこの作品でした。元高校球児が大人になって再び甲子園を目指す「マスターズ甲子園」恥ずかしながらこの作品と出会うまではその存在を知りませんでした。神戸大学の中に大会事務局があり、甲子園を目指していた元球児達という名の諦めの悪いおじさん達が全員野球で夢の甲子園を目指すという面白い大会。ピッチャーは30歳以上で1人2イニング、地区大会では4回以降、本大会では3回以降は35歳以上のメンバーだけで戦うとか、試合は○回までというのでなく、1時間半という時間制。高齢になっても参加出来る、なんともユニークな大会である。ストーリーは本当に大事な「家族」や「仲間」などをうまく織り込んでいて素晴らしい作品でした。ストーリーの部分は実際にこの作品を見てもらうとして、この作品を通して部活やクラブチームで共に時間を過ごした人間は、年をとっても再び同じ夢を見ることが出来ることを感じさせてもらった。聖地甲子園で同窓会を目指しての戦いは、スムーズには始まらなかった。28年という時間を経てそれぞれがそれぞれの道を歩み、考え方や生活もバラバラになった。しかし1度皆で野球を始めると、自然と一体感が生まれていく。若い頃に仲間と共に夢を追いかけた分、時間が経ち、自分が寂しくなった時、そこは戻れる大切な「居場所」なのかもしれない。スポーツの友を持つ大切さを教えてくれるとても心温まる作品でした。



■バンクーバーの朝日


監督:石井裕也
主演:妻夫木聡
2014年 日本映画

“スポーツが希望になれる事実”
第2次世界大戦の前、カナダに実在した日系人野球チーム「朝日軍」の実話をもとに描かれた作品である。1900年代初頭、多くの日本人が新天地を求めカナダに移住した。しかし現実は差別と労働の日々。そんな中で白人チーム相手に戦っていた野球チーム「朝日軍」白人との体格差で負け続けていた朝日軍の新キャプテンになったレジー笠原(妻夫木聡)。チームはバントと盗塁、そしてデータを駆使した頭脳野球でカナダチームと戦っていく。審判のアンフェアなジャッジに怒るカナダ人も出てきて、ひたむきな彼らは民族の壁を越え、人気を勝ち取っていく。彼らはしいたげられた日系移民のヒーローとなるが、第2次世界大戦という歴史の波がこのチームへと押し寄せる。スポーツチームが人々の希望になったという事実を描いている作品であるが、特別なスターの存在は無い。1人1人は小粒だが、日本人の誇りや希望、団結がチームをまとめ、そして周りを巻き込んでいく。フランチャイズとか地域スポーツという言葉があるが、その集大成がこの作品の中にある。僕はチームスポーツをするすべての選手、関係者がこの作品を見て、スポーツをする意義をもう一度振り返る機会を作ってもらいたいと思っている。「バンクーバーの朝日」この作品はスポーツチームの本質を語ってくれる作品である。 


■42 世界を変えた男


監督:ブライアン・ヘルゲランド
出演:チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード他
2013年 アメリカ映画

“スポーツと改革”
史上初の黒人メジャーリーガーとなり、スポーツにおける人種差別の壁を取り払うきっかけとなったジャッキー・ロビンソンの半生を描いた作品。1947年、第2次世界大戦が終わり、アメリカはまだ人種差別がしっかり残っていた頃、ブルックリン・ドジャース(現在のロサンゼルス・ドジャース)のGMブランチ・リッキーはジャッキーとメジャー契約を結ぶ。最初はチーム内からの反対に合い、その後も敵チームやマスコミにたたかれ続けたジャッキー。しかし彼の強い意志とGMリッキーの強い信念がやがて周囲を変えていく。そして今や黒人選手のいない大リーグチームなぞ存在しない。ジャッキーの背番号42番はアメリカ全球団の永久欠番にさえなっている。改革、特に社会的慣習に逆らった時は大変な苦労がいるものだ。しかし“平和の祭典”と呼ばれるオリンピックや国交の無い国との国際試合などスポーツは1つのルールのもと世界を1つに出来る手段でもあると思う。政治とは切り離され、人類を1つにしてくれるスポーツも、いざ改革となると非常に困難であることは間違いない。しかし、ここで成功した鍵は2人が“ジェントルマン”であったことだと思う。それをスポーツマンシップと表現しても良いだろう。スポーツの改革に必要なことはスポーツマンシップとチームワークだと痛感させられた。ビジネスや政治にも使われるスポーツの世界で必要な鍵はこの2つだと再認識させてくれる作品である。


■マネーボール


監督:ベネット・ミラー
出演:ブラット・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン他
2011年 アメリカ映画

“スポーツマネージメントとは?”
私は映画は映画館で見るのが好きだが、飛行機の中で見るのも好きである。水球日本代表がロンドンオリンピック予選直前に行ったオーストラリア合宿の取材の時、この映画を機内で見た。今や松井秀喜選手も入団し、日本にも馴染みのある球団“アスレチックス”。冒頭でヤンキースと年棒の比較を試合中の選手に表示し、いかに貧乏球団かを見せ、ブラット・ピット演じるGM(ゼネラルマネージャー)ビリーが登場する。ビリーは高校の時、有望な選手で大学に行かずに今契約をしたいとスカウトに言われメッツに入団するが、選手としては花を咲かせることが出来ず、球団スタッフとなる。チームを強くする為にビリーが取り入れたものは“経済学”であった。大金が動く大リーグにおいて、実力はあっても評価されない選手達はいた。「投げ方が変だ」「気分屋である」そんなメンバーを安く集め、チームとしてまとめていった。“データ”を重視したビリーも、それだけでは上手く行かなかった。選手と直接話をし、考えを伝え、一体化することで徐々に結果が出てくる。時にはシビアな決断をしたり、時には悩み苦しむ。「チームを作ること」「スポーツマネージメントするとは何か」そんなヒントがたくさん込められている作品であった。僕も考えさせられることがたくさんあった。水球日本代表チームが「チームとして成立していっている姿」を取り上げられた取材の後だったこともあり、非常に感銘を受けた。スポーツマネージメントって何だろう?僕もいつも考えているテーマだ。この作品が世界中で見られていること。これもスポーツマネージメント的には大きな効果だろう。“チーム作り”それはいろいろな世界に通じる永遠のテーマだ。自分の周りのチームを思い浮かべながら見てほしい作品である。


■アメリカンパスタイム 俺たちの星条旗


監督:デズモンド・ナカノ
出演:ゲイリー・コール、アーロン・ヨー、中村雅俊他
2007年 アメリカ映画

“第2次世界大戦とアメリカンジャップ”
中村雅俊も出演しているアメリカ映画。第2次世界大戦が始まり、日系アメリカ人は強制収容キャンプに収監される。アメリカへの忠誠を誓う彼らの中には、日系だけの師団を組まれ、ドイツ・イタリア相手に前線で戦う者もおり、厳しい収監所も自分達でお金を出し合って壁を直したり、病気の人を守ったりして助け合っていた。フェンスの外に出られない生活でもパーティをやったり畑を作ったりと自分達の生活を作り出していた。そんな時、皆をまとめる為、中村雅俊演じる日系1世“カズノムラ”が始めた事が、キャンプの中に野球場を作り、野球チームを作る事だった。自分がアメリカに渡ってきた時、言葉も通じずバカにされたが、野球が上手くなってアメリカのコミュニティに混じれた事がそのきっかけであった。そんな日系キャンプの野球チームがアメリカ人と試合をする事になる。彼らは自分達の尊厳をかけフィールドに向かう。果たして彼らの試合の結果は?というストーリーである。第2次世界大戦時の最後の早慶戦などの作品は何度か見た事があったが、アメリカに残っている日系人を描いている作品は初めてだった。戦争をしている国に残り、そこで生きている人のことなんて戦争を起こした人達は何も考えていなかったに違いない。苦しい中、「1つのスポーツ」で勇気や希望を持ち、敵である国民と違う形で戦い、そして戦った後に互いに信頼や尊厳が生まれる。戦争をせずスポーツで国の尊厳をかけて戦うこと、武器を持たず、ルールの中で体と気持ちをぶつけ合うことの重要さを痛感させられる作品です。

 

■走れ!イチロー


監督:大森一樹
出演:中村雅俊、浅野ゆう子、川口和久他
2001年 日本映画

“自分のダイヤモンド”
3人のイチローがいる。1人は一浪の浪人生。1人はイチローという名前の作家。もう1人はイチローという名の元社会人野球の選手で、いまやリストラされた男。そんな3人が、震災後の神戸に集まり、すれ違う中、当時オリックスにいて大リーグに向かう野球選手“イチロー”を見つつ、自分にとっての“ダイヤモンド”輝ける場所はどこかを探しているというストーリー。阪神淡路大震災の後、力強く生きた人、心に大きな傷を負った人、復興の時は力強かったのに東京に行き心にぽっかり穴を開けた人。大災害は人に様々な影響を与えるものである。2011年に起こった東日本大震災もそのような影響が多々起こるだろう。しかし、イチローの躍動感やオリックスの頑張りは、神戸の人に元気を与えた。東日本大震災から3ヶ月ほど経った今、サッカーのベガルタ仙台や野球の東北楽天などが、東北の人達に勇気を与え続けている。スポーツはそんな力を持っているのかもしれない。自分達の輝ける場所を求めている人達に、復興の後押しが出来るスポーツ。その力はどこから来るのだろうか?きっと必死に戦っている姿を見せることで、自分達だけが頑張っているのではない、という気持ちを与えるのだろう。今回、東日本大震災の後でこの作品を見て、今、自分に何が出来るかを考えさせられた。それはきっと無理に何かをするのではなく、自分なりの出来ることをきちっとやっていくことなのだろう。自分なりのダイヤモンドを見つけ頑張ることこそ、パワーになるのだと再確認できた。もやもやして自分に不安になっている人に見て欲しい作品です。


■英霊たちの応援歌/最後の早慶戦


監督:岡本喜八
出演:永島敏行、勝野洋、本田博太郎他
1979年 日本映画

“平和無くしてスポーツは無し”
巨匠岡本喜八が昭和十年代後半から第二次世界大戦の為、野球を取り上げられた大学生達の短い命の中、燃やし続けた気持ちを描いた作品“英霊たちの応援歌” 野球は欧米から入ってきたスポーツとして弾圧され、六大学野球なども中止に追い込まれていく。学徒出陣も決まり、最後の試合がしたいと早慶戦が行われる。その後、学生達は軍に入り、特攻隊などで命を落としていく。その中でも野球や仲間のことを思い、死と直面しても前に進んでいく。今の時代、もし戦争が起こったとしたら、こんなに熱く生きていける若者はいるのだろうか?教育の問題もあるのだろうが、ここまで熱く生きていたあの時代の若者達が少しうらやましいと思った。もちろん戦争に巻き込まれたくない。戦争中にスポーツをする環境も無くなってしまうし、“生きる”か“死ぬ”かしか考えられなくなり、頭が変になってきてしまう。スポーツというものは平和という基盤の上に成立していると思う。皆が楽しくスポーツをする為には、平和が絶対条件である。“平和に戦う”“フェアに戦う”そんなスポーツマンシップが広がり、終わった後には両者を讃える精神があれば戦争など起こらないはずなのだが。第二次世界大戦が終わって100年も経っていない。しかし、年配の方々はあの戦争を知っていても、僕達は全く知らない。“平和を守る”という気持ちを風化させてはいけない。この作品を通して、“平和の大切さ”そして“スポーツが出来る今の時代の環境の尊さ”を忘れないようにしたい。


■キャプテン


監督:室賀厚
出演:布施紀行、小川拓哉、筧利夫他
2007年 日本映画

“努力を教えてくれるスタンダード”
ちばあきおの漫画“キャプテン”が映画化された作品です。この漫画は昔から散髪屋に行くと“ゴルゴ13”と共に必ずあった気がします。しかも夏休みになると午前中によくアニメで放映していて、ある世代以上の人達にとってはスポーツもののスタンダードとも言える作品です。漫画やアニメだとすごく長い話なのですが約100分にまとまっているので一気に観ることが出来ます。(タカオ中学時代の話だけですが…)漫画原作の映画化の利点は、長いストーリーをコンパクトに一気に観られることも1つあります。ストーリーとしては、名門青葉学院で球拾いをしていた谷口タカオが、墨谷二中という公立の弱小野球部に入部し、名門出身というだけで力も無いタカオがキャプテンにされてしまうところから始まります。野球の下手で弱気だったタカオが努力して上手になり、自信もついて、チームにもダメでいいんだという投げやりな気持ちを捨てさせて勝って本当の楽しさを手に入れたいという道まで持っていきます。ダメな人間が周囲から期待され、“努力”し“成長”する。単純と言えば単純ですが、その“努力”は続けていれば、色々な形で報われるということを教えてくれます。若い人達に一度見てもらい、40代以上の人達はこんな風に“スポーツ”を“野球”を“チーム”を見ているんだということを知ってもらえば同じ土俵に立って色々と話し合えたりするものなんだけどな…と思いました。是非、原作を知らない若い世代の人達に見てもらいたい作品の1つです。


■がんばれ!ベアーズ


監督:マイケル・リッチー
出演:ウォルター・マッソー、テイタム・オニール他
1976年 アメリカ映画

“アメリカの家庭生活を考える”
アメリカの野球映画の定番中の定番と言えば、この“がんばれ!ベアーズ”だろう。だめな子供達とダメコーチ。ダメコーチは、メジャーリーグまで上がれなかった元プロ野球選手。そして、才能のある、彼の元恋人の娘。皆下手だけど野球大好きな子供達の頑張りに、いつの間にか大人のコーチも頑張ろうという気持ちになっていく。この構造で、この後何本のスポーツ映画が出来ただろうか?日本映画でもアイスホッケーの「smile」など数々の作品がこの構造で作られている。いじめられっ子、不良、男女の差、いろいろな問題がある中で、スポーツを通してあきらめていた何かを思い出していく。すごく単純なストーリーだが、ついつい入っていってしまう。ひょっとして単純だから入りやすいのかもしれない。最近、地域の子供達のスポーツが違う方向に行っている気がする時がある。やたらと自分の子供を出場させたがる親や、友達と仲良くすることより上手になることを大切にしている親が多く、子供達が友達を作ったり、道徳や社会のルールを学ぶ場所では無くなっているように思う。子供達のスポーツは上手になることも大切だが、楽しく健康になり、友達と出会い、ルールを守ることを覚える場だと思う。そして地域が子供達を応援してあげて、社会の一員であることを感じる場だと思う。子供にスポーツをやらせている親は、一度この作品を見て、子供とスポーツの関わり方を改めて考えてみてほしい。



■バッテリー


監督:滝田洋二郎
出演:林遣都、山田健太他
2006年 日本映画

“子供達の信頼関係”
小6の終わりから中1の夏前までの軟式野球をしている少年達のバッテリーを描いた作品“バッテリー” ピッチャーの少年は、父が転勤族で、病弱な弟がいる。友達が作れず、自分の球速だけを信じ、孤独に野球を続けていた。キャッチャーの少年は田舎の村ですくすくと育っていった。父の転勤で母親の田舎にやってきたピッチャー。母親同士が友達だった彼とキャッチャー、この2人がバッテリーを組むことになる。ピッチャーの球速が速すぎて、しっかりキャッチできないキャッチャー。しかし笑顔で何回も練習を要求し、2人の信頼関係が築かれていく。この作品の面白いところは“野球”を通して人生の格言にもなりそうなシーンがたくさんあることである。“野球は気持ちを伝える力”を持っていることや、プレイ1つでその人間関係を表現していたり…。スポーツを真剣にすると、言葉にしなくても、いや言葉にしないからこそ伝わることがたくさんある。試合を見ると、そのチームの練習量が見えてしまうことがある。それは上手とか下手ということでなく、チームに信頼関係が出来上がっているとか方向性が固まっているなど、人間関係が深いかどうかが見えてくるのである。最近他人と上手にコミュニケーションできない若者が増えているような気がする。メールやTwitter、mixiなどコミュニケーションツールはたくさん生まれたが、文字にしないと相手に伝えられない人が増えているのではないだろうか?相手の顔を見て、表情で伝え、相手の気持ちを感じる能力を育てるには、スポーツをさせることが一番ではないだろうか?

 

■メジャーリーグ2


監督:デヴィッド・S・ウォード
出演:トム・ベレンジャー、チャーリー・シーン、コービン・バーンセン他
1994年 アメリカ映画

“情熱を無くした時”
毎年最下位のクリーブランドインディアンズが、それぞれ問題のある選手達なのに団結してリーグ優勝するまでを描いたメジャーリーグの続編。チャーリー・シーンをはじめ、ほとんどのキャストが出演しているので、この作品はメジャーリーグ“1”を見てから見ないと面白さが半減してしまうだろう。作品の冒頭に少しだけ前作の振り返り的部分がダイジェストで入っているが、それだけでは変わってしまったキャラクターを理解出来ない。前年優勝し、貧しい中試合をしていたメンバーが大金を持ったことで変化が起こる。ガツガツと前に進み、暴れん坊だった“ワイルド・シング”の異名を持つピッチャーはスーツを着て守りの生活になり、センターの勢いだけの快足男は映画に出たりしてがむしゃらにチームの為に走ることは無くなった。怒りをパワーにしていたホームランバッターは平和主義になりパワーを失った。お金や世間を気にしすぎて、自分を失い、チームの団結も失うインディアンズが、もう一度奮起するきっかけになったのは、若手のがむしゃらに野球をしたいメンバーや、日本から海を渡ってきて、やる気を全面に出す石橋貴明演じる外野手、そして皆が愛する監督の入院だった。プロスポーツ選手は、観客に見てもらって“ナンボ”の商売かもしれないが、彼達が見たがっているのは“ベストゲーム”であり、“俳優的演技”ではない。格好つけてフィールドに立つ人間にファンはついてこない。アスリートの仕事は、最高のパフォーマンスを見せることである。そんな単純なことを思い出させてくれる作品です。この映画を見て、“がむしゃら”にスポーツする楽しさを感じて下さい。

 

■がんばれ!ベンチウォーマーズ


監督:デニス・デューガン
出演:ロブ・シュナイダー、デヴィッド・スペード、ジョン・ヘダー他
2006年 アメリカ映画

“オタクとイジメとスポーツと”
オタク達をいじめるリトルリーグのチーム相手に立ち上がった大人3人の野球チームが戦っていく姿を見せることで、イジメ撤廃と野球は誰もが楽しめるということを教えていく“がんばれ!ベンチウォーマーズ”
オタクをバカにしたり、いじめているシーンは下品なものもいくつかあるが、暗く陰湿なものは少なく、笑えるものが多いので、嫌な気分にはならずに見ることが出来る。オタクでもてない2人と、昔いじめっ子だった男の3人の大人達。昔の立場は違えど、3人とも「イジメ」を撤廃しようと思っている。オタクなりに頑張って徐々にチームがまとまり、リトルリーグの子供達に勝っていく。オタク達はネットで見たり、球場に足を運び人気者になっていく。スポーツは誰もが楽しく出来るものであり、誰もが平等に出来ることだと伝えている。ルールを守ること、誰もが平等に楽しめること、喜びを共有出来ることなど、スポーツの持つ良さがぎっしり詰まっている作品である。運動が苦手な人をバカにする人、オタクでこもってばかりの人に是非見てもらいたい作品。さらに、スポーツファンが楽しめるのは、殿堂入りしたレジー・ジャクソンが出演していることである。古巣ヤンキースのキャップをかぶり、ピックアップトラックから思いっきりバットを振り回し、郵便受けをふっ飛ばすレジーの姿には、ホームランバッターの風格が残っている。ピンポンダッシュに、ドリフターズ的下品な笑い。でもイジメを無くすことを、笑いの中でしっかりと伝えてくれる。娯楽の中での教育という意味でとても良い作品です。


■メジャーリーグ


監督:デヴィッド・S・ウォード
出演:トム・ベレンジャー、チャーリー・シーン、コービン・バーンセン他
1989年 アメリカ映画

“笑いの中に広がる友情”
チャーリー・シーンの出世作となり、あの名曲“ワイルド・シング”と言えば、野球映画“メジャーリーグ”を思い出す人は多いでしょう。ホームタウンを捨て、マイアミにチームを動かしたい故オーナー夫人は、自分のチーム“インディアンズ”が最下位になり集客できないことを望んでいた。そのためチームは、ケガをしてスター選手から落ちてしまったベテラン選手や、名もない刑務所にいる選手など、現在一流とは言えないプレイヤーを集め、チームを運営することにした。しかしそんな落ちこぼれ選手達も次のシーズンに夢を抱き、団結し、勝利に向け頑張っていく。
全体的に笑いがベースになったストレートなストーリーなのだが、アメリカ人が“ベースボール”好きな感覚を見事に表現している。アメリカのベースボールは全てが“阪神のよう”に地元のシンボルであり、チームが強くなると町全体が活気にあふれるのである。バスケットやアイスホッケーやアメフトにも感じるのだが、アメリカに仕事に行くと必ず自分の町のスポーツチームの自慢話を聞かされる。しかしそのチームが弱い時には、誰もその話をしない。アメリカにとってスポーツとは、町の活気度のバロメーターである。そんな町の人達のため、自分のプライドのため、自分達のチームが家族的になるため、友情を育て1つになっていく様子が、笑いながらも心の真ん中に少しずつしみこんでくる。どんな人間も団結し、1つの目標に向かうと、いつか叶うという希望を与えてくれる作品である。


■陽だまりのグラウンド


監督:ブライアン・ロビンス
出演:キアヌ・リーヴス、ダイアン・レイン他
2001年 アメリカ映画

“スラムの子供達の希望”
キアヌ・リーヴス主演、スラムの子供達のチームの監督と少年達を描いた野球映画“陽だまりのグラウンド”
元々、職もまともにつかず、賭けで生活を立てていた男も、借金に追われ、金を借りる条件として、スラムのリトルリーグのコーチをするように言われた。
すぐには賭けの世界から抜け出せず、ダメな生活を送っている。しかし、自分のチームの子供が襲われたりしていくうちに、守ってあげないといけない気分になり、少しずつまじめにコーチをするようになっていく。
貧しくて危ない地域の子供達には、スポーツに夢を持ち、プロになってスターを目指す子供達が多くいるらしい。
しかし、環境が悪く、挫折してしまう子供達もたくさんいる。
スポーツはアメリカンドリームの1つである。
本当に夢を追うことが出来る環境を作ることは、大人の使命である。
そのことを教えてくれる作品だ。
アメリカみたいに貧富の差を日本で感じることは無いが、ハングリーに戦う子供達は、こんなところから出てくるのだろうなと痛感してしまった。
常にスポーツが夢を持てるものであるよう、僕達が出来ることとは何か?
スポーツが創り出す様々な要素がぎっしり詰まった1本である。


■ラストゲーム 最後の早慶戦

監督:神山征二郎
出演:渡辺大、柄本佑、和田光司他
2008年 日本映画

“戦争とスポーツ”
昭和18年10月16日、学徒出陣の5日前、徴兵される学生達が最後に野球の試合がしたいという夢、早慶戦が行われるまでの出来事を事実をもとに映画化した作品“ラストゲーム 最後の早慶戦”
この年の4月、空襲の標的にされるため、多くの人が一箇所に集まらないよう、6大学野球連盟は解散させられ、試合すら出来ない状況であった。
そんな中でも、練習を続けていた早大野球部。学徒出陣が決まり、すべての大学生が戦場に行くことになった。
死ぬかもしれないのなら、最後に試合がしたい。
そこで早慶戦の話が持ち上がった。しかし、早稲田の学長から反対される。
そんな中、野球部の部長が全責任を持ち、早稲田所有の球場、早大戸塚球場で試合が行われた。
その後、多くの若い生命が戦場で消えていったのである。
スポーツは平和の象徴である。
「政治を野球に持ち込んではいけない」という台詞が、この作品の中に出てくるが、今でもオリンピックなどは政治的問題でボイコットすることがある。
アスリート達にとって、戦争は関係ない。
そしてスポーツを愛する人達にとっても、戦争は関係ない。
平和でスポーツを楽しめる時代が続いて欲しいと心から思わされる作品である。


■オールドルーキー

監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:デニス・クエイド、レイチェル・グリフィス、ジェイ・ヘルナンデス他
2002年 アメリカ映画

“夢を持っていい年齢”
子供の頃から野球好きだった少年は、父の仕事で転校続き。父は夢よりも地に足をつけた生活を望んでいた。メジャーリーグの夢に向かって頑張った時もあったが、肩を壊し断念。高校教師をしながら、野球部の監督を務める。情熱も無く野球をやっている高校生と“もし地区大会に出場出来たらメジャーを目指す”という約束をする。夢に向かう大切さを教えたかったのだ。前年、地域リーグで1勝しか出来なかったチームが、1位になり、見事地区大会に駒を進める。先生は約束を守るため、3Aのテストを受け、合格する。3Aは安月給で、妻や子供がいる中年が挑戦するには無理も多かった。妻が「8歳の子供にも夢を持つ大切さを教えてよ」という一言が、中年元教師の背中を押した。教え子、街の人、家族、そして夢の大切さを否定していた父までが、彼の挑戦に期待をするようになっていた。そして、ついにメジャーリーグのマウンドに立つのである。2シーズン、彼はタンパベイの投手として活躍する。しかも、これは、事実が元になっている話なのである。
若い頃は夢を追う人も多いが、大人になり家族を持ったりすると、夢をあきらめる人が多い。「年だから…」「家庭もあるし…」そんな言葉で自分の夢をどこか別のところに追いやってしまう。人生とは、人として生きること。人として生きることとは、夢や目標に向かうこと。夢は若者だけが持てる特権ではない。大人が夢を持ち、頑張る姿は、子供や若者にも大きな影響を与えることが出来る。夢に年齢制限が無いことを、この作品は教えてくれる。皆いくつになっても、新しい夢に向かえば“オールド・ルーキー”もなれるチャンスがあるんだ。


■ナチュラル

監督:バリー・レヴィンソン
出演:ロバート・レッドフォード、グレン・クローズ、ロバート・デュバル他
1984年 アメリカ映画

“運命とは何だろう”
好運と不運に振り回されたロバート・レッドフォード演じる大リーガーを描いた作品
“ナチュラル”
冒頭、無音の中、田舎からシカゴに大リーガーとして呼ばれた男がホームに立っている。汽車の鐘と車輪の音が近づいてくる。
農場で父が倒れて死に、その後、父の倒れた場所の木が雷で倒れる。
父は少年の野球の才能を信じていた。少年は倒れた木でバットを作り、野球を真剣に始め、大リーガーに呼ばれるまで成長した。
しかし、旅の途中で、謎の女に肩を撃たれる。
16年、治療や心を癒す人生を送り、年老いてNYの大リーガーチームの選手として入団。打者に転向し、ホームランを打ちまくり、子供達のヒーローになるのだが、首位を決める試合の直前、毒を盛られ、緊急入院。プレイオフにも出場できず…と、とにかく好運と不運の繰り返しが次々に繰り返されていく。
運命って何だろう…と考えさせられる。
どんな人間も運命に振り回されるが、スポーツは特に、毎回勝ち負けや順位が決まるので、目に見えやすいものである。
あの時、あの人に出会ったから… あの時あそこにいたから…
偶然の繰り返しが運命を分ける。しかし、その運命を受け入れ、前に進む力が大切なのである。不運に文句を言って腐っていても、次の好運はやってこない。不運を怖がって、踏み出さなかったら、好運はやってこない。
前に一歩踏み出し、全てを受け入れる力こそが、自分を大きくしていく力なのである。

 

■ROOKIES-卒業-

監督:平川雄一朗
出演:佐藤隆太、市原隼人、小出恵介 他
2009年 日本映画

“高校野球というもの”
高校野球は野球というカテゴリーの中でも、一種独特なものを感じる。
ルールも格好も一緒なのに、何故なのだろうか?
その答えをこの作品の中に見たような気がする。
学校生活とクラブ活動という生活の中心に、プレイだけでなく、先生と生徒という関係の中で、生き方や精神を学ぶ場所であるということ。
不良だった若者達は夢や希望を見失っていた。
1人の先生が熱く指導し、野球を通して、夢に向かう大切さを教えていく。それぞれの生徒が高校野球を通して、心を育てていくことが重要なのだ。さらにトーナメント形式でやっているので、一度負けると終わりということ。泥臭くても、常に“1点”“1点”と、貪欲に追いかける姿がプロ野球と違うところだろう。
ユニフォームを泥まみれにしながら、大声を出して白球を追う。
甲子園という彼らの聖地には、一度でも負けると行けなくなってしまう。
ひたすら同じ夢を持つ若者達の情熱的プレイに感動があるのだろう。
漫画、ドラマを経て映画になった“ROOKIES”
若い役者達の熱い演技と、ただひたすらに前向きに生徒を後押しする先生の言葉。
“夢にときめけ、明日にきらめけ”
最近の若者は感動が無いのか?なんて言う人も、甲子園球児を見ると、そんな言葉を言えなくなる。
映画“ROOKIES”は、高校生達の挫折から立ち直る力、夢を追うパワーを見せ付けられる。
新しい高校野球映画のスタンダードとして残っていく作品になることだろう。


■フィールド・オブ・ドリームス

監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演:ケビン・コスナー、エイミー・マディガン、ギャビー・ホフマン 他
1989年 アメリカ映画

“天国の野球場”
ケビン・コスナーの野球映画の定番と言えば“フィールド・オブ・ドリームス”
お告げを聞いた男が自分の畑を野球場にしてしまう話。
その球場に、大リーグを追放になったり、1試合しか出場できなかった選手から名選手まで死者なのに現れて試合を始める。
そしてプロ選手だった父も出没し、死んだ父と再会できるというストーリーである。
ケビン・コスナー演じる農園主は、子供の頃に父に野球を強引にやらされたことで辞めてしまったが、父とのキャッチボールだけは楽しんでいた。
死んだ父とやりたかったこと、それはキャッチボールだった。
2人だけでキャッチボールするシーン。お互いに無言で球を投げては捕る。
この繰り返しが何も言っていないのに会話をしているように見えた。
野球をしている人なら誰もがキャッチボールをしただろう。
僕も子供の頃、親子でキャッチボールをしている人を見るとうらやましかった。
一球一球ごとに2人の距離が縮まっていく感じがした。
僕は親子のキャッチボールの経験が無い。だから野球をすることにはまらなかったのかもしれない。この感覚は、世界共通の感覚だと思う。
現在でも、撮影場所になったトウモロコシ畑と、撮影のために作った野球場に世界中から集まる人がいると聞いたことがある。
作品の中で「ここは天国か?」と主人公が聞かれるシーンが2回ある。
1回目は「アイオワだ」と言い切り、2回目は「天国かもしれない」と言っている。
誰もが夢を持ち、叶えた場所は、“天国”である。
自分の夢を信じ、頑張った場所が、その人にとっての“フィールド・オブ・ドリームス”なのかもしれない。
僕もそんな場所を作らなくては…と強く思わされた1本でした。


■Mr.3000

監督:チャールズ・ストーン三世
出演:バーニー・マック、アンジェラ・バセット、マイケル・リスポリ 他
2004年 アメリカ映画

“記録より記憶”
人気タレント“バーニー・マック”が有名メジャーリーガーに扮する痛快な野球映画。ブリュワーズの伝説の選手という役なのだが、役者達は数週間野球の練習キャンプをしたり、脇役の人は、元メジャーリーガーやマイナーの選手、大学のトップ選手などをトライアウトして、メジャーリーガーが本当にプレイしているように見せている。これだけ本格的に“BASE BALL”を見せようとするのは、アメリカ人誰もが知っているからに違いない。僕は、他の作品の解説でも言ったかもしれないが、嘘っぽさが見せた時点でスポーツ映画は冷めてしまう。だからこそ、プレイや立ち振る舞い、衣裳、歩き方、ベンチの様子などしっかり作っていかなくてはならない。さらに本当に思わせるのは、アメリカの本当のテレビ番組が、その出演者、セットの中で展開されているのだ。ESPNの“SPORTS CENTER”や他のスポーツワイド、さらには人気のトーク番組まで出てくる。ここまでやれば、本物なのか?と思ってしまう人も多いに違いない。
ストーリーは、“野球の殿堂”入りと、3000本安打にだけこだわった、わがままで自己主義なプレイヤーを、バーニー・マックが演じている。彼は、3000本安打、打った瞬間、チームのことを考えずにチームを辞めてしまう。ところが9年後、スコアミスで3本足りないことがわかり、“3000本”を売りに商売をしていた彼はチームに戻り、あと3本ヒットを打つ決心をする。本当に身勝手な男だが、オーナーは客寄せになるから彼を利用しようと決める。しかし、チームに戻った彼は、自分の居場所が無く、若い頃の自分みたいな選手を見て、記録よりチームのために戦うようになっていく。他人のために何かをすることは幸せにつながることを教えてくれるハートウォーミングな1本です。


■サマーリーグ

監督:マイク・トーリン
出演:フレディ・プリンズ、ジェシカ・ビール、ブリタニー・マーフィー 他
2001年 アメリカ映画

“誇りとは?”
全米の大学生が夏の時期に集められ毎日のように試合を行い、MLBやマイナーのスカウトが見に来る“サマーリーグ”このサマーリーグに7年ぶりに地元の若者が参加し、プロを目指す最後の挑戦を描いた作品である。
リゾート地でもあるこの地には、多くの金持ちが別荘を持ち、若者は、父と共にこの別荘の草刈りを仕事にしつつ大学で野球をやっていた。他の選手達はすでにスカウトから声を掛けられていたり、全米代表ということで有名になっている。“草刈りボーイ”の叶わない夢としてさげすんで見ている選手や、貧乏人をバカにし、夢を持つなと言う金持ちなど、彼に対し冷たい人々は多々いた。「夢を持つことを怖がらないで。夢にリスクはつきものよ」という金持ちの娘に恋をし、「お前は俺達の誇りだから」と地元の友達に応援される。チームの監督も夢を掴みきれなかった1人なのだが、“頑張っていたら夢に手が届く瞬間がある”ことを教え、彼の心の弱さを取り除いていく。僕の印象に残ったシーンは、父が金持ちに言った一言だ。
「貧乏人にもプライドを持つ権利がある」
夢は誰もが持てて、夢に向かって誰もが努力できることをずばり表現していたあのシーンはとても力強かった。アメリカンドリームは、アメリカに住んでいる人誰もが可能性がある。同じようにジャパンドリームもきっとあるのだろう。何か自分の夢に向かって走っている人に“誇りを持つ大切さ”を教えてくれる作品です。

 

■プリティ・リーグ

監督:ペニー・マーシャル
出演:トム・ハンクス、ジーナ・デイビス、マドンナ、ロリー・ペティ 他
1992年 アメリカ映画

“女子ベースボールの殿堂”
第2次世界大戦の頃、あの大リーグきっての名選手だったジョー・ディマジオも戦地へと召集され、最大の娯楽“プロフェッショナルベースボール”がアメリカ人の前から消えようとしていた。そんな時、女子だけのプロ野球のリーグが始まった。この話は、実話を元に創られた。その作品こそ、“プリティ・リーグ”である。
全米から、戦地に行った夫を待つ田舎の主婦、ダンスホールのホステスなど様々な女性が集められ、テストされる。この頃、“台所から工員へ”と、戦地に行った男手を女性がフォローしていた時代だった。女性にとっては戦争が終わるまでのつなぎでしかなかった。しかし、彼女達は“ベースボール”という、その頃の女性にとっては少しはしたないと思われていたスポーツの世界に染まっていくことで、自分達にとって大切なものを1つずつ手に入れていく。トム・ハンクス演じる監督。かつて大リーグの大スターだった彼は、ひざを壊しスターの座から降り、酒びたりになって堕落していった。しかし、彼女達と出会い、彼女達のパワーによって、再び“野球人”の心を取り戻していく。日本でもプロ野球の選手が“野球人”“野球道”という言葉を口にすることがある。僕の中で印象的なのは、元巨人の桑田真澄である。スポーツというものは、ただのスポーツではない。それぞれのスポーツの中に、“精神を導く道”が在ると思う。野球というものは、9人でやるものではない。リリーフもいれば、監督もいて、スタッフがいて…。つまり“チーム”がそこに在る。よく、自分の成績よりもチームの勝利というコメントがあるが、まさに“チーム”スポーツなのである。“プリティ・リーグ”は、皆で移動しているところやロッカールーム、仲の悪かったチームメイトが1つになっていくさま、同じスポーツをしていたからこそ思いやりの気持ちを持てるようになった姉妹など、ベースボールのチーム観が全面に出ている。数年しか行われなかった全米女子プロ野球リーグ。女性達が創り上げた“野球道”を見よ。


■ラブ・オブ・ザ・ゲーム

監督:サム・ライミ
出演:ケビン・コスナー、ケリー・プレストン、ジョン・C・ライリー、ジェナ・マローン他1999年 アメリカ映画

“引き際の美しさとベースボール”
スポーツ選手には誰でも引退する時がやってくる。美しく去っていくか、醜くても限界までやり続けるのか?引退を考える時、誰もが悩む選択であろう。
この作品“ラブ・オブ・ザ・ゲーム”の主演ケビン・コスナー扮するビリー・チャペルは、大リーグ“デトロイト・タイガース”に20年在籍した有名ピッチャーである。しかし、年齢と肩の痛みを感じつつ、トレードに出されそうになっていた。まさに、人生の岐路である。そして、私生活でも愛する女性ジェーン・オーブリー(ケリー・プレストン)がロンドンに去っていこうとしていた。ビリーのピッチャーとしての人生と一人の男としての視線をミックスし、ニューヨーク・ヤンキース戦のピッチングで表現している。まずは、ヤンキーススタジアムやユニフォームなどをそのまま使っていることに注目。大リーグが全面協力している。さらに、ケビン・コスナー始め役者達の野球をしている姿がしっかりしていることもストーリーに入りやすい理由の1つであろう。日本のスポーツ映画では、有名タレントにやっつけでやらせているようなものも多々あるが、海外ではその辺をしっかりトレーニングしてやっている。以前“GOAL!”の主演クノ・ベッカーと話す機会があり、サッカーのトレーニングをどうしたのかと聞くと、3ヶ月プレミアリーグ“ニューカッスル”のコーチにみっちりトレーニングさせられたと言っていた。スポーツ映画は、そういうリアリティが無いとしらけてしまう。この作品は、そんな気持ちにならずに入っていける。引退に対して決断出来ないまま、そして、愛に悩みながらマウンドに立つビリー。走馬灯の様に野球と愛をベンチで考えながらも、マウンドでは集中し最高のピッチングを続ける。ピッチャーには2人の女房がいると言う人がいるが、この作品でもキャッチャーと恋人の2人の女房が回を追うごとに、どんどんストーリーとして描かれていく。ロマンスとベースボールが紡いでいく9イニング。欲張りな人にはオススメの作品である。


 BASKETBALL 
■恋のスラムダンク

監督:サナー・ハムリ
出演:クイーン・ラティファ、コモン、ポーラ・パットン他
2010年 アメリカ映画

“トレーナーの力”
ニュージャージーに生まれ育った“NETS”を愛するリハビリトレーナーがNETSのスターバスケットボーラーと出会うことから始まるラブコメディ映画“恋のスラムダンク”クイーン・ラティファ演じるリハビリトレーナーが偶然ガソリンスタンドでスター選手と出会い、同居人の女友達が彼女を利用してその選手と付き合い始める。そんな時、彼は試合中大怪我をする。セレブになりたかった友達は、来年引退ともささやかれる彼の元から去ってしまうが、彼女はトレーナーとして彼を必死に治していく。体のリハビリだけでなく、昔バスケを始めたコートに連れて行ったり、けつを叩いて心のケアもしている。僕もいろいろなスポーツのトレーナーと出会ってきた。名トレーナーと言われる人は、チームのメンバーの一員のように、選手達と一緒に戦い、プライベートもよく知っている。心も体もケアしている感じがすぐにわかる。トレーナーの力はチームや選手にとって実に大きいものである。スポーツは体だけでなくメンタルも大きく影響する。ただ体だけが完璧でも、試合で使い物になるわけではない。そんなトレーナーの力の大きさを痛感できる作品です。ラブコメ映画が大好きな人も楽しめるライトな内容なので、一度見てみてはいかがでしょうか?


■フライング☆ラビッツ


監督:瀬々敬久
出演:石原さとみ、真木よう子、滝沢沙織他
2008年 日本映画

“女性の力”
合気道をしていた1人の女性が、キャビンアテンダントを目指しJALに入社。同じ名前のバスケ部入部の子と勘違いされバスケ部に入部し、女子バスケリーグに出場するという笑いあり涙ありのこの作品“フライング☆ラビッツ”は、今の女性アスリートの色々な要素が詰め込まれている。仕事をしながらトップアスリート達も頑張らなくてはいけない現実。仕事と恋とバスケットと全てに全力でぶつかっている女性達。そしてチームが一丸となり、笑って前に進む力。まるで、W杯で優勝したサッカーの“なでしこJAPAN”のようではないか?自分達の好きなもの、やりたいことの為にひたすら前進する姿、チーム力。そんな環境下だからあきらめないで最後までやりきるのかもしれない。“男”より“女”の方が感情も激しい部分があるかもしれない。女性のアイドルグループなどにはすぐ派閥ができ、グループがうまくいかない話などよく聞く。男はその点少しドライかもしれない。しかし、スポーツというわかりやすい目標“勝つこと”という為には、まとまる力も出来てくるのかもしれない。男性よりもパワフルで一所懸命で、今のスポーツシーンを表している“フライング☆ラビッツ”なでしこJAPANに感動した日本人が見るとさらに楽しめる作品です。


■SPACE JAM/スペース・ジャム


監督:ジョー・ピトカ
出演:マイケル・ジョーダン、ウェイン・ナイト、テレサ・ランドル他
1996年 アメリカ映画

“最強のスタームービー”
往年のNBAが好きな人ならこの作品は必ず楽しめます。マイケル・ジョーダンが主演し、ユーイングやチャールズ・バークレーなどのトップ中のトップバスケット選手や殿堂入りのラリー・バードなどが出演する“SPACE JAM” バックスバニーなどのアニメキャラとマイケル・ジョーダンが他星のアニメキャラとバスケットで勝負するというシンプルなストーリーのコメディ映画。ユーイング、バークレー、ラリー・ジョンソン、ショーン・ブラッドリーなど当時のNBAトッププレイヤーのバスケの才能を奪った宇宙人達。バックスバニーとバスケの試合で勝つとバックス達、アメリカのアニメキャラを宇宙に連れて行くと約束をさせた。助っ人として当時MBLでプロ野球選手になっていたMジョーダンをアニメの世界に引き入れ、マイケルは宇宙人達に、試合で宇宙人が負けたら選手達にバスケの才能を戻すことを約束させる。アニメ、バスケのスター総出演のイージーな作品と言えばそうとも言える。当時アメリカの批評家達は、この作品をすごく否定した。しかし興業としては大成功だった。当時のトップアーティスト、RケリーやJay-Z、LLクールJ、バスタライムス、クーリオ、モニカなどHipHopやR&B界総出でサントラに参加し盛り上げた効果もあったと思われる。スポーツ、音楽、アニメのスター達で1つの作品を創り、子供達を中心に誰もが楽しめるものを発表することはとても素晴らしいと思う。様々なエンターテイメントがしっかり組むことで広がりも増えてくる。アメリカにとってバスケ、R&B、HipHop、アニメなどは文化であり、生活であり、憧れであるということを再認識させてくれる1本。これぞ最強のアメリカンスタームービーと言えるだろう。


■モア・ザン・ア・ゲーム


監督:クリストファー・ベルマン
出演:レブロン・ジェームズ他
2008年 アメリカ映画

“スーパースターの作り方”
世界が注目するNBAのスーパースター“レブロン・ジェームズ”と彼を取り巻くチームメイトとコーチのドキュメンタリー作品“モア・ザン・ア・ゲーム” オハイオ州の救世軍の体育館で出会った4人と1人のコーチ。レブロンやメンバーの中の数人は貧しい生活を送り、父親の顔すら知らない子供達もいた。しかしコーチが彼らの父親的存在となり、バスケットを通じて“人間としての道”を教え、家族同様に扱うと、次第に4人は親友となり、その後同じ高校へ行き、バスケットを続ける。転校生のロメオを加えた才能あふれ家族のような絆で結ばれた5人は“ファブ・ファイブ”と呼ばれ全米でも注目を集めるようになる。高校生にとって異常なまでの熱狂は人生を狂わす時もある。おごりが生まれ、敗北を味わったり、アマチュア規定にひっかかって出場停止になったりするが、そんな数々の苦難を乗り越えられたのも仲間がいたからである。子供の頃からのビデオや当時のTV番組、大人になってからのインタビューを中心に構成されているのだが、リアリティの中にドラマ以上のドラマを感じる。作られていない本物の表情が、余計にドラマチックに見せているのだ。もしレブロンの近所に彼らが住んでいなくて、コーチであるドリュージョイス2世に出会わなかったら、天才はただの天才で終わり、世界中が注目する選手にはならなかったであろう。プロプレイヤーとしての道を選ばなかったメンバーもいるが、いまだに彼らは家族のような関係らしい。スーパースターは、絆とともに戦う気持ちが持てる仲間を創り出すものなのである。


■バスケットボール・ダイアリーズ


監督:スコット・カルヴァート
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロレイン・ブラッコ、マーク・ウォールバーグ他
1995年 アメリカ映画

“ストリートの栄光と挫折”
NewYorkでドラッグに苦しみ抜け出した若者を、若き頃のレオナルド・ディカプリオが演じた、実話を元に作られた作品“バスケットボール・ダイアリーズ” NewYorkのストリートで生きていた1人の青年は、、ストリートで悪さを働きながらも高校に通い、バスケットボール部で活躍していた。治安の悪い街に住み、遊び半分でドラッグや盗みに手を出す仲間達。そんな中でも、青年は学校に通い、校内ではスタープレイヤーになっていった。そんな中、バスケ仲間の1人が白血病で若くして死んでしまう。青年は、ドラッグにのめりこみ、バスケも手につかなくなり、バスケも学校も辞めてしまう。唯一続けたことは、趣味の詩や物語を書くことだった。バスケ仲間の1人がドラッグに手を出さず、スター選手になっていく姿をテレビで見て知る青年。自分もなれたかもしれないと過去の栄光を引きずりつつ、さらにドラッグに身を投じ、殺人や盗みの現場に足を踏み入れていく。アメリカほどドラッグは近くにないのかもしれないが、日本でも手を伸ばせば、誰もがドラッグの道に入ることが出来る。「自分ははまらないから一度だけやってみよう」とか「やらないと仲間から勇気の無い奴と思われる」など、変な勢いは人生に必要無い。“断る勇気”“やらない勇気”こそ本当の勇気だと思う。アメリカではストリートの掟みたいなものがあるかもしれないが、“真の強さ”を知り、ドラッグに手を出さず、自分の力で悲しみ、苦しみを乗り越えて欲しいものである。




■俺たちダンクシューター


監督:ケント・オルターマン
出演:ウィル・フェレル、ウディ・ハレルソン、アンドレ・ベンジャミン 他
2008年 アメリカ映画

“マヌケ度No.1のバスケ映画”
とにかくマヌケでバカバカしくて下品なバスケ映画である。オープニング曲からダサくて下品。その歌をヒットさせたミュージシャン“ジャッキー・ムーン”がバスケチームを買収し、選手兼オーナー兼監督をするというストーリー。リーグがNBAに吸収され、トップ4のチームしか存続できないというところで、主人公のジャッキーは、最下位で動員も無い自分のチーム“トロピックス”を何とかあの手この手で救おうとするのだが、すべてがバカバカしい。選手自らが着ぐるみショーをしたみたり、クマと戦ってみたり、バスケと全然関係ないところで頑張る。テンションだけ高くて感情だけで動く男ジャッキーとチームの友情の物語。とにかくバカバカしいのだが、バスケットボールとチームを愛している男達の友情は絶対だということを伝えてくれる。こんな映画が出来るのは、バスケットボールとコメディが大好きなアメリカ人がたくさんいるからだろう。陽気でバカ好きなアメリカ人のための映画だ。ジャッキー・ムーンを演じるウィル・フェレルはサタデーナイトライブの人気者である。アウトキャストのラッパー“アンドレ・ベンジャミン”やウディ・ハレルソンなど大物を使ってバカバカしい作品を作っているにもかかわらず、NBAのピーター・コーネル(日立サンロッカーズに所属していたこともある)を起用するなど、バスケの本質はきちっと取り入れている。音楽もダイアナ・ロスやクラプトン、マドンナなどのヒット曲を作ったナイル・ロジャースがやっているのだから、実はぜいたくな作品なのである。各界のトップ達がこんなに集まってこんなマヌケな作品を作っているのだから、スゴイ。バスケを使ったコメディ映画としては最高の悪フザケ映画である。


■ウィニング・パス


監督:中田新一
出演:松山ケンイチ、堀北真希 他
2003年 日本映画

“本当の強さを教えてくれる車椅子バスケムービー”
北九州の車椅子バスケットチームを描いた作品。以前、AND1 Mix Tape TOURのオープニングアクトゲームとして車椅子バスケを見たことがある。普通のバスケよりガツガツ当たっていて、格闘技を見ているような興奮を感じたことを覚えている。ゲーム中はやたらと“アツイ”のに、ゲーム終了後、お互いのチームがとてもフレンドリーで全員笑顔だった印象が残っている。松山ケンイチの初主演作品でもあるこの作品は、ひたむきな高校生がバイク事故で車椅子生活になり、その苦悩をしっかり表現している。バスケ部のエースが事故を起こして、彼だけでなく、家族・友達・彼女など周りの生活が一変する。足が使えないことで生活が思うようにいかない本人の悩みはもちろんだけど、それを迎え入れる親、障害者の兄を持っていじめられた妹、学校の中でも変な目で見られたり、彼女の母は交際に反対したりと、今までの人間関係が崩れていく。車椅子バスケと出会い、青年は生きるパワーをもらい、努力を始める。今までエースでパスも出さず、自分でシュートまで持っていった彼も、皆の協力で生きていくことを学んだことで、チームで戦うことを覚えていった。周りの人達も頑張っている彼のパワーに影響を受け、大学を目指して勉強を始めたり、何か目標を持ち始める。障害者で何かをやっている人を見ると自分に無いパワーを感じる。どん底に落ちて、立ち上がってきた人間だから持つ“本当の強さ”は、一緒にいる人間に勇気を与えてくれる。以前、バスケットボールが目に当たり、色が見えなくなった少年のドキュメンタリー番組を演出したことがある。彼とAND1のスタープレイヤー“プロフェッサー”が1on1をして何が変わるのか?というテーマで作った番組でした。初めて彼と会った時、お母さんと一緒にいないと話せなかった中学生も、今、大学生となり、薬の開発をする人になろうと頑張って勉強をしている。時々クラブチームでバスケを楽しんでいる。僕もたまに彼とバスケの試合を見に行っている。一人の青年が障害を乗り越えていく力は、周りに勇気を与えてくれることを僕は実感している。彼と出会って、障害者だからといって変に何もかもやってあげたり、かわいそうな目で見る必要は無いと感じた。お互い前に進むパワーを持ち、協力してほしいというシグナルが出ていたら協力すればいいし、普通に応援しあい、彼からのパワーをもらい、自分の力に変えればいいだけである。この映画は障害者とどう向き合うのかという問題だけでなく“本当の強さ”を手に入れるパワーを与えてくれる作品である。


■コーチ・カーター

監督:トーマス・カーター
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・リチャード、ロブ・ブラウン 他
2005年 アメリカ映画

“リアルに勝るドラマは無い”
ケン・カーターという大学で活躍した元名プレイヤーが、地元の高校のバスケットコーチになって選手達と共に成長していく話である。
実際の話をベースにしているだけあって、ストーリーがリアルに展開していく。カリフォルニア州リッチモンドは、産業が少なく、クスリを売ったり、犯罪率が当時非常に高く、高校を卒業する人間も少なく、バスケットボールはNBAに入るか高校までで辞め犯罪者になるかのギャンブル的感覚でやっていた。そんな感じでやっているからチームワークなども成立していない。カーターは就任する時、選手と保護者に契約書を作り、サインをさせた。その内容は、バスケのことよりも学業や生活のこと中心のものだった。カーターはバスケ部員全員が大学やプロをきちっと目指せる道を作ろうとしていたのである。チームは強くなり、街からも注目を集めていく。その後ストーリーは二転三転していくのだが、これが事実だというのだから驚きである。
スポーツには“教え”がある。野球道、柔道魂…。バスケットにある“教え”が、カーターの口から選手達に伝えられていく。指導者は、スポーツのプレイを教えることも大切だが、その奥にある“人としての生き方”を教えていくことが大事なのだと感じさせられた。MTVが作っているだけあって音楽も最高である。バスケット版“スクールウォーズ”である。


■THE HEART OF THE GAME


監督:ウォード・セリル
製作総指揮:ラリー・エステス
配給:グラッシィ
2006年 アメリカ映画

“ドキュメントが創り出すドラマ”
アメリカの高校女子バスケットチームの監督と選手を数年に渡って追い続けたドキュメンタリー作品であるこの作品。
高校生の女の子達の揺れる気持ち、人種や貧富の違う生徒達、高校生ながら出産し、学校と母とバスケを両立させようとする女の子…。いろいろな問題を抱えながら、チームを強くするために様々なアイデアでトレーニングさせ、試合を組み立てていく監督。選手達の問題は、選手達自身にとことん話し合いをさせ、時に喝をいれ、時に優しく受け入れていく監督。ストリート的個人のバスケをチームバスケに取り入れ、個性を生かしていく。そして、チームは年を重ね、州No.1のチームとなっていく。まるでストーリーがあって撮ったのではないかと思わされるくらいドラマチックだった。“スポーツはドラマ”である。そんな言葉を再認識させられる作品であった。ストリートでバスケをやっていた人間がチームに入り、新たに“WNBA”や大学リーグに夢を持つ。貧しい家に生まれても、ボール1つで人生を切り開いていける。そこにはチームメイトがいて、応援してくれる家族や地元の人がいて、父親のような監督がいる。これは作り話ではない。ドキュメンタリーだからこそ、事実だからこそ、説得力がある。“ボール”が人生を変えることができる。“スポーツ”をすることで人生を変えることができる。パワーを与えてくれる本当のストーリーがこの作品に在る。

 

■CROSS OVER


提供:NIKE 製作・監督・脚本:カーン・コンクイザー+キップ・コンクイザー
製作総指揮:マジック・ジョンソン+ペニー・マーシャル 
音楽:チャック・D(パブリック・エネミー)+プロフェッサー・グリフ(パブリック・エネミー)
配給:デックス・エンタテインメント
2005年9月テアトルタイムズスクエアにてレイトロードショー

“世界のバスケットボールシーンの入門書”
マジック・ジョンソンが製作総指揮をしているバスケ映画があると言ったら見たくない人はいないはずである。
“CROSS OVER”はそれだけでも価値がある。そしてジョーダンやバークレーなどNBAのスーパースターが出ているとなると価値はあがる。
世界のバスケシーンを集めたバスケットドキュメンタリームービーであるこの作品、あのバルセロナのUSAドリームチーム、02年の世界バスケでの敗退、ユーロリーグの実態、NBAやAND1など、アメリカンバスケしかなかなか見れない日本で、世界のバスケシーンを見ることができる。
もちろん、ゲーム、アスリートとしてのバスケから、南アフリカで生きる為にやっているバスケシーン、アメリカのストリートカルチャーとしてのバスケも見ることができる。皆、自分のブロックにあるパブリックパークでゴールがある所に集まり、HOOPの周りで遊びだす。そして、そこに音楽があり、HIPHOPシーンと結びついていく。
ゲームとして、カルチャーとして、いろいろなバスケットシーンが詰まっている。
音楽はパブリック・エネミーのチャック・D。ザ・ニューヨークスタイル、ハードHIPHOP。この組み合わせこそ、まさにアメリカという感じである。
日本ではゲームとしてのバスケットが中心である。AND1が来日したり、ストリートバスケがO-EastやAXなどのクラブでやり始めているが、なかなかカルチャーとして定着していない。それはプレイヤーだけが先行し、オーディエンスを育てていないからかもしれない。
だからこそ、この作品はバスケットを“生”で見たことはないけど、少しだけ興味があるという人に是非見てもらいたい。きっと価値観が変わるはず。もちろんプレイするのも楽しいが、見るのも楽しいということがわかるはず。


■AND1 MIXTAPE TOUR in JAPAN【FINAL】

出演:SAMURAI、THE PROFESSOR、BAD SANTA他
2009年12月2日発売

“一人で海を渡ったストリートボーラーSAMURAIの散り際”
森下雄一郎a.k.a.SAMURAI。
NBAを目指してアメリカで挑戦し、NBAの夢が破れ、ストリートボール最高峰“AND1 MIXTAPE TOUR”で唯一のアジア人としてプレイを続けたSAMURAIのラストゲームが収められた作品。
彼は日本のJBLやbjリーグなどでもプレイをすることが出来たはずなのに、現役という世界からあっさりと足を洗い、今はバスケットボールを通じた教育活動に取り組んでいる。
はっきり言って、カメラワーク、音楽はアメリカのストリートを意識した物まねに過ぎない作品である。派手好きな人は見ても面白いだろうが、コアなファンにはオススメ出来ない。
なのに、何故紹介するのか?
森下雄一郎という男の散りざまを記録にして、記憶として保存して欲しいからだ。日本人が世界に混ざりプレイしている姿を忘れて欲しくないからだ。1人の戦い続けた男の姿を忘れず、次のボーラーが出てきて欲しい。
この作品の良し悪しは多く語りません。ただ、森下雄一郎という男の第1章の終わりを、多くの人に保存してもらいたいと思っています。


 BICYCLE
■ヤング・ゼネレーション

監督:ピーター・イエーツ
出演:デニス・クリストファー、ダニエル・スターン、デニス・クエイド他
1979年 アメリカ映画

“地元の誇り”
アメリカ・インディアナ州に住む4人の若者達。地元住民は「石切り(カッターズ)」と呼ばれる汚くつらい仕事に誇りを持ち従事していた。しかし、彼ら若者達の世代は、地元にやってきた有名大学の者達に、汚い原住民扱いをされ少し気持ちが折れていた。この作品はそんな4人の若者達の生き様を描いた青春映画である。主人公のデイヴはイタリアかぶれでロード自転車にのめりこんでいた。大学生の女の子に一目ぼれすると、自分をイタリアからの留学生と偽り、地元の仲間を裏切ってしまう。父は息子に大学などは行かなくていいから一生地元で働くことを望んでいた。しかし父の目を盗み、大学を受験し合格する。ある日、その彼女のことが原因で大学生と4人はケンカをし、警察沙汰になってしまう。大学側は大学主催の自転車レースで勝負し、二度とケンカをしないようにと告げる。地元vs大学生のプライドを賭けた自転車レース。しかし、地元チームで出ると彼女についていた嘘がばれてしまう。最終的には地元の仲間との友情を裏切ることは出来ず、彼女に本当のことを伝え、レースに臨む。果たして結果は…というストレートだが、若者の心理描写が上手く映し出された作品である。ロード自転車のレースの魅力やアメリカが受け入れるヨーロッパスポーツの実態が上手く表現されているだけでなく、レースの臨場感もたっぷり感じられる。ロードなどは実際生で見ると、目の前は一瞬しか見ることが出来ないし、テレビ中継でも選手目線の映像は見られない。この作品は普段見ることが出来ない映像も入っていて、非常に面白い。「地元の誇り」日本人には少ない感覚かもしれないが、「郷土愛」を深く考えさせられる1本である。


■バリオ19


2006年 MTV作品

“世界のストリートを知ろう”
MTVが制作し、世界中に様々なストリートスポーツを知らしめた“バリオ19”どのジャンルに入れればよいか迷ってしまったが、日本人BMXライダー“田中光太郎”がかなりフィーチャーされていたので、自転車というジャンルに入れることにした。この作品はBMXだけでなく、インライン、B-Boying、スケートボードや中華鍋を使ったスケートボード、フリーランニング、ヨーヨー、川でのサーフィン、インラインサッカーなど世界中のストリートスポーツがぎっしりと詰まっている。日本人もフリースタイルフットボールのマルコを中心とする球舞のメンバーや、B-Boy“KAKU”、ダブルダッチ、BMXも北山努などたくさん出演し、世界に発信された。ストーリーは無く、2分くらいの短いクリップがこれでもかというくらい、どんどんたたみかけてくる。世界のストリートスポーツやカルチャーを飽きることなく見ることができるだろう。おしゃれな作りなのでBGVとしても楽しめる1本。映画という観点で、ストーリー性は無いけれど“文化”を世界に広めるという意味では大事な役割を果たしていると思います。(MTVの番組として作ったものをまとめたものなので、制作側にその意図は無いと思うが…)ストリートスポーツに興味のある人は、是非一度見てみてください!!


■スティック・イット!


監督:ジェシカ・ベンディンガー
出演:ジェフ・ブリッジス、ミッシー・ペリグリム他
2006年 アメリカ映画

“ジャッジの立場”
元体操選手だったBMXライダーの女の子が、人の家のプールでストリートをやり、その家を壊してしまう。賠償金の支払と体操クラブに入ることで少年院入りを免れる。彼女は古いしきたりと減点ポイントしか見ていないジャッジのやり方に反抗し、あることを考え付く。体操人生の中で、家族にうらぎられたり、友達も作れなかったり、コーチを信じることができなかった彼女が、ついに信じられるコーチの元、才能を開花させていくという青春ストーリー“スティック・イット!” まず、この作品、オープニングからすごく気持ちが良い。アパッチのリミックスにグラフィティだけで構成され、BMXのシーンにつながる。Z-BOYZを思い出させる人の家のプールでのパークライドっぽいストリートシーン。すごくワクワクさせられる。この作品は、“信じられる人はいるか?”というテーマと“古いしきたりのジャッジを変えられるか?”という2本のテーマで構成されている。ストリートで自由に新しいものを表現するBMXをやっているアスリートにとって、体操は決まりに縛られているかもしれない。さらに、人間関係で点をつけるジャッジもいる。その意識改革をアスリート側がやったら…というストーリーなのだが、ジャッジの変な感情で点をつけられた時点でルールなど成立していない。公平であることがスポーツの基本。体操だけでなくアイススケートやBMX、スノーボードなど、ジャッジで決められるアスリートは一度見ておくと良い作品です。


■シャカリキ


監督:大野伸介
出演:遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹 他
2008年 日本映画

“ロードレーサーの世界観”
廃部を迫られた高校自転車部の若者がロードレースを通して、チームの大切さを学んでいく自転車映画“シャカリキ”。漫画で見たことはあったので、ストーリーにはすんなり入れた。元々、名門自転車部の監督の息子が“エース”になれなかったので他校に移り、残された者達が細々と活動しているのだが、インターハイの予選で負けると廃部というがけっぷちの状態の時、1人の若者が入ってきて、チームとしてトラブルがありながらも成長していく話である。ロードレースは“エース”をチームメンバーがアシストして勝たせるというスポーツである。タイヤがパンクしたら、自分のタイヤを外し、リタイヤしてでもエースに渡す。順番に先頭を走り、風除けになってエースの体力を残させたり、集団の中で道を開けさせるため体を張ってコースを開ける。個人競技のように見えるが、完全なチーム競技である。ヨーロッパでは自転車競技は国民的スポーツである。ただ誰が一番速いかだけでは、ここまでスポーツとして広がらなかったかもしれないが、“チームスポーツ”としての面白さがあるから盛り上がっていくのだろう。“自転車が好き”という同じ感覚の人間がチームになって勝利に向かう。その勝利の為には、それぞれ違う得意部分を必要とする。道を開けさせる為、パワーのある人間、山を昇る時、先導する体力のある人間、風除けになるスタミナのある人間。自分の得意な部分をすべて“エース”の為に捧げる気持ち。将棋やチェスにも似ている気がする。仲間の為に自分のすべてを出すことの大切さを教えてくれる作品です。


■joe kid on a STING-RAY the HISTORY of BMX


監督:ジョン・スウォアー&マーク・イートン
出演:スコット・ブライトハウプト、ボブ・ハロ、マット・ホフマン、デニス・マッコイ、
デイブ・ミラ、スパイク・ジョーンズ他
2007年2月17日〜23日シアターN渋谷にて限定ロードショー

“BMXの歴史の全てはここに詰まっている”
BMXは色々なスポーツの影響を受け、今が在る。
誕生の時、子供達がモトクロスを真似たくて始まった。ストリートやバートは、スケートボードの影響を大きく受けた。
スポーツを進化させたものは人である。“joe kid on a STING-RAY”の中に出てくる名文句だ。僕もそう思う。
1963年シュウイン社が作った1台の自転車“STING-RAY”からBMXの歴史は始まった。その当時の映像がBMXの歴史を証言している。
子供達にレースの場を与えたスコット。彼みたいな人物が歴史を創り出すのであろう。子供達より少年の心を持った大人。無邪気にBMXの現場を創り出していく。
そして、この映画で語っているのは、レジェンドBMXライダー達。ボブ・ハロー、デニス・マッコイ、マット・ホフマン。僕もホフマンバイクスのBMXを所有しているが、彼の挑戦を見ていると、余計に愛着がわいてきた。巨大なバートを作り、エアの高さに挑戦していく。自らケガをしながらトライしていく姿は、BMXに対する何にも変えられない愛情を感じる。
BMXの歴史を語る上で日本も大きく関わっていたことを、この映画で知った。
1974年、YAMAHAがゴールドカップを開催し、シマノもBMXツアーをスポンサードしている。
そして、あの映画監督スパイク・ジョーンズがBMXの専門誌“Freestylin”のフォトグラファーだったことにも驚いた。
時代が動いていく時、多くの人達が関わり、文化にしていく。BMXの歴史は栄光と冬の時代を繰り返していた。
日本でもそうかもしれない。そこには、情熱あふれるライダーと支える人々がいた。
今、日本のBMXシーンはそこのリレーションがうまく行っていないかもしれない。
もっとBMXシーンが大きくなるには…と考えると、この作品にヒントがいっぱい隠されている気がした。
うれしかったことは、日本でライダー達が開催しているK.O.G.という大会が、この作品の中に入っていたこと。そして、ヤンマーこと山本亮二がライダーとしてピックアップされていたこと。日本のBMXシーンを世界が見ているということだ。
BMXのことを知りたいなら、一度この作品を見るべし。


 BILLIARDS
■ハスラー

監督:ロバート・ロッセン
出演:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリーソン他
1961年 アメリカ映画

“勝負の世界”
ポール・ニューマン主演のビリヤードの賭け師“ハスラー”の世界を描いた不朽の名作“ハスラー” 世界最大のスポーツネットワーク“ESPN”もスポーツとして扱っているし、僕の中では一定のルールの中で体を使って勝負するものをスポーツとして考えているので、ビリヤードもスポーツ映画としてとらえています。小さなプール(ビリヤード場)を渡り歩き、ハスラーとして生きる男と、マネージャーと称してその機会を作る男。しかし、プレイヤーはただの賭けではなくキューとの一体感、ゲームのスリル、そして自分の技術など、僕が言うならば、“スポーツとしてのビリヤード”、勝負や相手、そしてダメな自分への挑戦としてビリヤードに向かっていく。愛する女性と、自分のハスラーとしての生き方に悩み、金を稼ぐだけでない“本当の勝負”に魅せられていく。「勝負の世界」はただ勝てば良いのではない。相手を認め、相手の凄さを知り、己を磨くことにある。「勝負の世界」を知っていくと人生において相手のことを考えるようになる。この作品では、そんな勝負師の生き様を描いている。ただ勝ち負けで勝負を考えている人に、昔から語り継がれているこの作品を見て、自分自身を見つめなおして欲しいものである。


 BOBSLEDDING
■クール・ランニング

監督:ジョン・タートルトーブ
出演:レオン、ダグ・E・ダグ、ラウル・D・ルイス他
1993年 アメリカ映画

“未知へのトライ”
雪を見たことも無いジャマイカの若者達が冬のオリンピック出場を目指してボブスレーに挑戦する姿を描いたコメディ作品“クール・ランニング” 陸上で活躍していた男がオリンピック予選でたまたまこけてしまい、オリンピック出場を断念しなくてはならなかった。父もオリンピック選手で、アメリカ人から体力をみこまれてボブスレーにスカウトされたことがあったことを知り、そのアメリカ人を訪ねる。元々BOX CARTも得意だったのでオリンピックに出場したいがために仲間を探し始める。雪を見たことも無いジャマイカ人にとって、ボブスレーという競技自体も未知なものだ。僕も昔アメリカのサーフィン雑誌で“スノーサーフィン”の写真と記事を見て、サーフボードを持ってゲレンデに行ったことがある。今で言うスノーボードのことだったのだが、当時はまったく情報が無く、とにかくトライしたかっただけだった。今思えばクール・ランニングに出てくる4人と変わらない。格好も変だったと思うし、少し恥ずかしく笑える部分もあるが、楽しかった日々を覚えている。未知へのトライは充実感も楽しさも与えてくれる。全編にレゲエがかかっているのだが、そのミスマッチもワクワクさせる。楽しみながら挑戦している姿こそスポーツの真の姿だと思う。この作品を通してスポーツの真髄を見て欲しいと思います。


 BOXING
  ■リベンジ・マッチ

監督:ピーター・シーガル
出演:ロバート・デ・ニーロ、シルヴェスター・スタローン他
2013年 アメリカ映画

“人はいくつになっても闘える”
「ロッキー」のシルヴェスター・スタローンと「レイジング・ブル」のロバート・デ・ニーロがタッグを組んだボクシング映画。作品の各所にロッキーやレイジング・ブルを思い出させるようなシーンが出てきて大人にとっては共に同じ時代を過ごしている気分になりリアルに感動できる作品です。ストーリーは30年前のタイトルマッチの再戦。お互いに70歳近くなった2人が老体に鞭打ち、1勝1敗同志決着をつけるというものなのだが、このリベンジ・マッチは単なるボクシングのリベンジだけでなく、若い頃の自分に対してのリベンジでもある。シリアスな話だが、笑えるシーンがたくさんあり、そのギャップが余計に「ジーン」と心に残る作品です。「若い頃の失敗」あの時こうしておけば今の自分はもっと違う人生が送れていたのに…そんな感情を持ってはいても行動できない人はたくさんいると思います。この作品の2人の主人公もそんな中から「リベンジ・マッチ」を始めようとします。その行動は世間の笑いものにされたり、やっぱり辞めようと思ったり、思ったように体が動かなかったりといくつもの壁が立ちはだかります。でも人はいくつになっても闘える。しかもその人生の「リベンジ・マッチ」の先には、どんな結果になっても新しい未来が待っているということを教えてくれる作品でした。「ロッキー」や「レイジング・ブル」のファンが絶対に見るべき1本です。 


■ザ・ファイター


監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール他
2010年 アメリカ映画

“事実に基づいた究極のボクシングムービー”
ゴールデングローブ賞2冠に輝き、世界中の映画祭で数々の賞を受賞した、実在の兄弟ボクサーを描いた感動作。兄“ディッキー”は天才と呼ばれたボクサーだったが、短気でおちゃらけた性格でドラッグに手を出し、警察に捕まってしまう。弟“ミッキー”は兄に憧れ、子供の頃からボクシングを始めたが、家族の金儲けの為、無理な試合ばかり組まれ、花開かない生活を送っていた。兄の指導を受け、世界チャンピオンを目指していたが、監獄送りになった兄に頼れないので、新しいトレーナーをつけ、再起を図る。今まで家族の犠牲になっていたミッキーは、解放されボクシングに集中できるようになると次々と結果を出し、ついに世界タイトルマッチ出場権を手にする。そんな時、ディッキーが出所してくる。どん底の生活をしている家族がボクシングを通して絆を深めたり、ボクシングに全てを賭けていた故に、家族が壊れたり…。事実だからこそ全てが簡単には上手くいく訳では無いことを教えてくれる。試合のシーンは実にスピード感あふれ、見ているこちらも思わず痛くなってしまうほどである。HBOのボクシングの試合をいつも撮影しているスタッフが試合を撮っているそうで、まさに、現実、スポーツ中継を見ているようだった。どんなに苦しい生活をしていても“夢”はあきらめなければ叶えられることを教えてくれる、事実に基づいた“究極のボクシングムービー”である。

 

■チャンプ


監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ジョン・ヴォイト、フェイ・ダナウェイ、リッキー・シュローダー他
1979年 アメリカ映画

“カムバックの力”
かつてのボクシングのチャンピオン・ビリーは、妻に逃げられ今や酒とギャンブル漬け。競馬場で1人息子を育てながら生活をしている。息子の為にも再びリングに上がり、強い父の姿を見せようとするが、最後は逃げてしまい、息子に1度も闘う姿を見せてあげられないでいる。ある日ギャンブルで勝ちまくり、馬を1頭買い、父子は馬主となる。この馬を競馬に出した時、別れた妻が2人を見つける。金持ちと再婚し、裕福な生活を送っていた別れた妻は、ビリーがギャンブルで刑務所に入れられた時、息子を引き取ろうとする。しかし息子は父の元に戻ってくる。その息子の姿を見てビリーはリングに戻ることを決意する。この後は感動のストーリーへとつながっていくのだが、このカムバックを決意する父の姿が、僕がこの映画で最も注目して見た部分である。全てのスポーツ、いや人生において、1度自分が失敗したことに再挑戦することはたやすいことではない。自信を失っている部分もあるし、恐怖もある。特にモチベーションを必要とするスポーツは、余計にその重さを感じるであろう。この作品の場合、何度も再挑戦しかけては逃げてしまうビリーの姿を描写している。しかし、最後は挑戦する。大切なことを残し、伝えたいという父の気持ち。それも本当に強い意志が必要なのである。カムバックは初挑戦の何倍もきついはずである。だからこそ、応援する力が必要なのだ。周囲でカムバックをしようとする人がいたら、真の応援を送ってあげよう。そんな気持ちを持たせてくれる作品である。


■ボックス!


監督:李闘士男
出演:市原隼人、高良健吾、谷村美月他
2010年 日本映画

“ライバルとは?”
大阪に住む2人の片親の男の子。彼らはいつも一緒に過ごしていた。1人はケンカが強くて人気者。もう1人は少し静かな勉強の出来る男の子。小学生のある日、勉強の出来る男の子は東京に引っ越しする。数年後、彼は大阪に戻り、偶然に電車の中で2人が再会するところから、この映画“ボックス!”は始まる。勉強ばかりしている友人にボクシングを勧め、2人は共にボクシングを極めていく。共に練習する仲間がいることで、2人はどんどん成長し、大阪府の決勝の場で共にグローブを交えることになる。親友だからこそ、真剣に拳を交える。本当の仲の良さは、共にベストを尽くし、相手と戦えることでもある。友達だからといって手を抜くことは、相手を下に見ることになってしまう。だからこそ、本当の親友とは最大限の力を出し合って戦えるのである。手を抜いて戦う間柄なんて、見せ掛けの友達に過ぎない。幼少期からお互いのことを知り尽くしている親友なら、手を抜くことは、後に罪悪感を感じることくらいわかっているだろう。男と男の本当の友情をとても丁寧に描いている作品である。ライバルと呼べる相手がいることは、成長するために重要な要素となるであろう。特に個人スポーツにおいて、“ライバル”は必要なものである。具体的に目標を決めることによって、練習も頑張れるし、共に成長することや挫折することで、お互いが喜んだり、助け合ったりすることも出来る。トップで戦っているアスリートを見ていると、ほとんどの人がライバルと呼べる存在の人がいる。良きライバルを見つけること。アスリートとして人として、成長する最大の要因ではないだろうか?


■レイジング・ブル


監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、キャシー・モリアーティ、ジョー・ペシ他
1980年 アメリカ映画

“パーフェクトとは?”
マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ出演のNYブロンクスに住むイタリア系アメリカ人のボクサーを描いた名作“レイジング・ブル” ボクサーである兄とマネージメントする弟が、自らの“男としてのパーフェクト”を求めボクサーとして立ち向かっていくストーリーを描いているのだが、女にもてて強くて金を持っていて見栄えが良くて…という男の欲をすべてむき出しにしている。そんな見た目と欲のパーフェクトを求めているボクサーを利用しようとする人もたくさん出てくる。真のパーフェクトでなく、見た目のパーフェクトを求める人間は、本当の意味で信頼してくれる人や助けてくれる人はいない。自分も相手に利益だけを求めているから、相手の真意も見えてこない。派手な世界にいるが、実際は孤独であることにも気付かなかったりする。見栄をはって生きていると、相談する相手すらいなく、外ではスター、内でな孤独な人生って本当にパーフェクトなのだろうか?マーティン・スコセッシらしく、状況を見せるカットや白黒の映像に写真や8mmフィルム的なカラー映像が織り交ぜられ心情描写が巧みに表現されている。“男の美学”とは何かを考えさせられる。人生には調子の良い時と悪い時がある。自分の見栄と我を通すと、調子の悪い時、誰も話すら聞いてくれなくなるだろう。人生の光と影を表現しているこの作品を通して、見栄だけのパーフェクトの薄っぺらさに気付いてください。


■ミリオンダラー・ベイビー


監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン他
2004年 アメリカ映画

“尊厳のある生き方”
クリント・イーストウッド監督のボクシング映画“ミリオンダラー・ベイビー” この作品はボクシングを通した人生の名言がたくさん出てくる。“ボクシングは相手の尊厳をやっつけることだ”とか“相手の逆をやらなくてはならない”など、ボクシングを通して人生を教えてくれるこの作品は、イーストウッドらしいメッセージ性の強い作品だ。その中でも特に考えさせられるテーマは、“尊厳のある生き方”についてである。タイトルマッチを完全に勝てると思えるまで試合を先送りにするか、チャンスがあるならチャレンジするか?どちらも正しい選択である。トレーナー達は選手を守り、将来生きていける為の道を残そうとし、ついつい安心出来るまでは試合に出したがらない。しかしボクサーは死を覚悟してでもチャレンジしたいと思っている。その結果、負けてボクサーとして生きれなかった時、何を求めるのか?というテーマである。“死んでいるみたいに生きたくない”そんな人間の生きる道はどうすればいいのかを本当に考えさせられる。「夢をもてなくなった人間は人間であるのか?」そんな重いテーマを考えるきっかけになる作品です。“人生の選択”すべてが正解であるが、結果失敗になることがある。そんな時、僕ならどうするのだろう。人生を見つめ直すスポーツ映画として一押しの作品です。


■ファイティング×ガール

監督:チャールズ・S・ダットン
出演:メグ・ライアン、オマー・エップス他
2004年 アメリカ映画

“男の世界、女の世界”
リングの女王と呼ばれ、男社会だったボクシングの世界で女性マネージャーとして活躍した“ジャッキー・カレン”の物語を描いた“ファイティング×ガール”
メイキングを見ると、ジャッキーには夫や子供がいたり、設定は映画用に少し変えられているようだが、基本的には男社会に女が入っていく、新しい扉を開ける物語である。
メグ・ライアン演じるジャッキー・カレンは、貧しくて教育を受けていない黒人にボクサーとしての才能を見出し、仕事を投げ出し、マネージメントをする決意をする。
映画の中の彼女は、自分が注目され、女性として男性と同じ地位に行くことだけを考え、いつの日か自分の思い通りにそのボクサーを動かそうと考え始める。
アスリートとマネージャーは、常に二人三脚でやっている。どちらかにエゴが発生すると、チームは崩壊してしまう。誰もが出世欲を持っている。しかしその欲望のために仲間を利用していくと、お互いに成功から遠のいていくことをこの映画は教えてくれる。
たとえば、あるアスリートに、世界に通じる道を導いてあげたとする。そのアスリートは、いつの間にか自分ひとりでやっていると感じ、その恩を忘れ、いつの日か導いてくれた人間を尊敬することさえも忘れてしまう。まるで一人で今までやってきたかのように思い込んでしまう。
その逆もあるだろう。選手が成績を残したことで有名になったエージェントが、まるで自分一人がやってきたかのように思い込むことも…。
その状態になってチームを続けていくと、うまくいかない。チームは、才能ある人間と才能を生かす人間がお互いに認め合い、優しさと強さと信頼でつながっていくものだ。
この映画の中の“ジャッキー・カレン”は、そのことを悟る。そして、一人のボクサーを守り抜くのだ。
チームスポーツで選手間や監督、コーチも含めチームになっていく作品はたくさんあるが、個人スポーツでチームの大切さを伝える作品は少ない。
この作品は、ボクサーという一見孤独なスポーツが、こんなにもチームを必要とするスポーツであることを伝え、その大切さを教えてくれる。
プロフェッショナルな個人スポーツをしている人達に、是非一度見て欲しい作品である。


■モハメド・アリ かけがえのない日々

監督:レオン・ギャスト
出演:モハメド・アリ、ジョージ・フォアマン他
1996年 アメリカ映画

“社会を動かせるアスリート”
ザイールで行なわれた伝説のヘビー級タイトルマッチ“ジョージ・フォアマンvsモハメド・アリ”この試合を中心に、モハメド・アリを追ったドキュメンタリー映画“モハメド・アリ かけがえのない日々”
この映画は、アリをアスリートとして描いているというより、一人の黒人解放運動のカリスマとして描いている部分が多い。
ベトナム戦争の兵役を拒否し、逮捕された時も「ベトコンは僕に攻撃したことは無い」と平和主義を貫き、黒人の教育や自由を求める発言を、スポーツ番組のインタビューでも行い、常に社会と闘っていた。
元々、アフリカから“奴隷”としてアメリカに連れて行かれた黒人達が、世界中に平等を訴える場として世界にアピールできた“世紀のタイトルマッチ”スピナーズ、ジェームス・ブラウン、B.B.KINGなどのライブもあり、音楽とスポーツの世界で、黒人パワーを証明することになる。
試合前、アリの敗北を多くの関係者が語っている。しかし、ザイールの人達の力や精神力で、勝利を手に入れる。多くの人達の希望や夢を抱えている人間の強さというものをすごく感じさせられた。
スパイク・リーや様々な文化人が、アリのことを語っている。ボクサーを語っているのではなく、“アリ”という偉人を語っているようだ。
トップアスリートは、本当に多くの人達から、その行動や発言に興味をもたれる。彼らの発言は、政治家よりも力をもつことがある。社会貢献、教育、地域に対して、影響力を与えられるからこそ、心も体も鍛えているのだろう。
この映画は単なるボクシングドキュメンタリーではない。アメリカで黒人が自分達の当たり前の権利を勝ち取るまでの激しい歴史の一片なのだ。


■THE BOXER

監督:トーマス・ヤーン
出演:ジョシュア・ダラス、ステイシー・キーチ、ケリー・アダムズ他
2009年 アメリカ映画

“生き方を教えてくれるボクシング映画”
刑務所から出所してきた若者がボクシングを通し、自分の人生を生きていこうと前に進んでいくストーリーを描いた作品“THE BOXER”
出所して家にも迎え入れられず、仕事も断られ、やっとのことで見つかった仕事がボクシングジムの清掃員。病気のトレーナーが細々とやっているジムだったが、唯一彼が存在できる場所だった。
若者は母に暴力を振るう継父がにくくて殴り、大怪我をさせ、服役することになるのだが、出所の時、自分のやったことを反省し、もう二度と人を殴らないと決意する。しかしトレーナーはボクシングを勧める。
「ボクシングはスポーツである」「戦わずに勝ち取れるものは無い。人生も同じだ」
彼はボクシングを通して、人生を強く生きることを伝えたかったのだ。
あきらめないこと、気持ちを強くすること。
ボクシングを教えているのに、言葉の一つ一つが人生の教訓みたいに感じられる。トレーナー自身が、リング上での事故で相手を殺したことがあったからこそ、言葉の一つ一つが重いボディブローのようにじわじわと効いてくる。
スポーツ映画を通して、心が強くなり、豊かになれる作品が、僕の中で正しいスポーツ映画だと思っているが、この作品はまさにそのような作品である。
誰でも自分にとっての壁があるが、その壁は越えない限り、ずっと壁として残っている。もしその壁を乗り越えることが出来たなら、後ろを振り向いたとき、その壁は無くなっていることだろう。
自分の人生は自分で勝ち取っていく強さを与えてくれる“THE BOXER”
自分が主人公になった気分で見ると、トレーナーの言葉が自分に向けて言われているように思え、熱いものを感じることが出来るはず。
前に進みたいのに、勇気がちょっと足りない人にオススメの1本です。


■ALI

監督:マイケル・マン
出演:ウィル・スミス、ジェイミー・フォックス、ジェフリー・ライト、ジョン・ヴォイト 他
2001年 アメリカ映画

“アリ ボンバイエ”
ボクシングファンでなくても名前だけは知っている元世界ヘビー級チャンピオン“モハメド・アリ”の1度目の世界チャンピオンになる前から、タイトルを奪われ、2度目の王座を取り戻すまでの人生を描いた作品“ALI アリ”
通算成績 61戦56勝37KO 5敗という、ものすごい成績を残しているモハメド・アリ。日本ではアントニオ猪木との異種格闘技戦をしたことでも有名である。
1964年から74年までの10年間を描いているのだが、単なるボクサーとしてだけでなく、黒人解放の1つのシンボルとしてアメリカと戦っている様子や、苦悩の人生を表現している。
マルコムXと出会い、ブラックムスリムに入り、黒人解放を訴えるようになるが、過激な発言が多く、FBIの警備付で試合をやったり、ベトナム戦争の徴兵を断り試合が出来なくなって裁判が続くなど、チャンピオンなのに、順風満帆にボクサー人生を送れていないアリ。
さらに、友人にチャンピオンベルトを売られたり、利用しようとする周りの人間に振り回されたりと人間関係もうまくはいっていない。
徴兵も「自分がベトナムと戦う理由が見えない」という理由だし、何故黒人がバスの座る場所を分けられるのか?という差別に対して、ただ真実を求め、自分の考えをはっきりさせる為に戦っていただけの男アリ。
彼が3度もタイトルを奪取できたのは、人間の大きさ、苦労の多さ、自分という人間を信じ抜く強さがあったからだと痛感させられる。
マイクパフォーマンスやマスコミに対しての毒舌、相手への挑発などの部分がやたらと取り上げられ、そのイメージも強いのだが、彼の人生観を知って、過去の試合や当時のドキュメントフィルムを見ると見方も変わるだろう。
アリ役のウィル・スミスも初めの10分くらいはウィル・スミスに見えていたが、試合のフットワークとかを見ていると、だんだん“モハメド・アリ”に見えてきて、作品にのめりこんでいけた。
アリのマイクパフォーマンス、特に「蝶のように舞い、蜂のように刺す」とか、相手を挑発する喋りは今考えるとラップ的だから、元ラッパーのウィル・スミスのタッチが受け入れやすかったのかもしれない。
アフリカザイールでの伝説の試合のドキュメントを見たことがあるが、本人のフィルムを見ても違和感を感じさせないことは凄いことだと思う。
“ハングリー精神”とは、ただ個人が勝ちたいという気持ちでなく、多くの人の夢や希望を背負い、自分を追い込んでいくことだということを教えてくれる作品です。
熱い気持ちを失っている人に見てもらいたい1本です。


■ガールファイト

監督:カリン・クサマ
出演:ミシェル・ロドリゲス、ジェイミー・ティレリ、ポール・カルデロン 他
2000年 アメリカ映画

“何の為に闘うのか?”
サンダンス映画祭を始め、世界の数々の映画祭を受賞した作品。当時予告を見て見に行かなきゃと思いながら、公開期間がそんなに長くなかったので見逃してしまった作品だった。
父親の暴力のせいで、母親が自殺してしまった姉弟。弟は優しく物静かで人に合わせるタイプの男の子だが、スラムで生きる為にと父親はボクシングを習わせる。姉は自己主張が強く、自分は自分で守るというポリシーの中、喧嘩に明け暮れる毎日。
そんな姉がボクシングジムに弟を迎えに行った時、1人のトレーナーと出会う。貧しい国でプロボクサーであったが、あと一歩のところで負け、NYにやってきたトレーナーは女性がボクシングをすることに反対するが、彼女の情熱に負け、トレーナーを引き受けるのだった。
不良少女は生きがいを見つけ、トレーニングを真剣に始め、学校でも喧嘩をしなくなり自分の道を見つけていく。
このジムに貼られた様々なメッセージ“チャンピオンは1日にしてならず”“自分に勝て”“自分がさぼっている時他人はやっている”など、人間として強くなっていくメッセージのボードが時々インサートされる。
彼女はボクシングを通して、腕力だけでなく「人間として」強くなっていくのだ。
常に上目使いで人をにらんでいた少女が、トレーナーや愛する人に対して優しい目になっていく様子は見ていてとても温かな気持ちにさせられる。
そして、アマチュアの決勝戦の相手が…。
この展開は考えていなかったが、人としてボクサーとして、本当の強さを求められる試合となった。
自分を高め、最大限にお互い闘うこと。そして闘った者が共有できる気持ち。
“スポーツは人を育てる”という人がいるが、まさに、それを表した作品。
劇場で見たかったと後悔させられる1本でした。


■ロッキー・ザ・ファイナル

監督・脚本・主演:シルベスター・スタローン 
出演:バート・ヤング、アントニオ・ターヴァー、ジェラルデン・ヒューズ、マイロ・
ヴンティミリア、トニー・バートン他
2006年 アメリカ映画

“闘う理由と闘う気持ち”
ボクシングの世界的名作シリーズと言えば、シルベスター・スタローンの“ロッキー”であろう。現在まで5作出ているが、この6作目でファイナルである。
ロッキーと言えば、全体の8割でロッキーやその周辺の人々の気持ちへ共感を覚えさせ、残りの2割の時間でリアリティのあるボクシングの試合を見せ、アドレナリンを上げ、エンディングにつながるという作風。
今回も、そのロッキー的王道パターンの作品。
今回一番気になったのは、ロッキーの闘う理由。チャンピオンを経験し、貧乏からも抜け出し、店も持ったロッキー。息子も大きな会社に入り、何故、今さら闘わなくてはならないのだろうか。その部分に注目して見ていた。
結論は“ボクサー”であるからということだと思った。
話し下手で、拳を合わせることで相手を知る男、闘う気持ちが自分のアイデンティティであること、そんな男こそ、ボクサーなのであろう。
ロッキーの“ボクサー”としての人生がすべてのくじけそうな周りの人々に立ち向かう勇気を与えてくれ、スクリーンの向こうの人々にも強い気持ちを送ってくれるのだろう。
自分をあきらめない。そんな映画のテーマがストレートに伝わってくる。
この映画は一貫してストレートな台詞でメッセージのパンチを打ってくる。
「人生ほど重いパンチは無い」「大切なのはどんなに強く打ちのめされてもこらえて前に進み続けることだ」
「好きなことに挑戦しないで後悔するより醜態をさらしても挑戦するほうがいい」
ロッキーが出してくる台詞のジャブがどんどんボディブローのように効いてきて、最後の試合のシーンでは思わず“倒れるな”と手を握ってしまう僕がいることに気づく。これがアメリカンヒーローの作り方なんだと感心してしまう。
これはボクシングだけの話ではない。
誰もが闘う理由も闘う気持ちも持っている。それをストレートの思い出させてくれるのが“ロッキー”だ。


 BUDO
  ■ベスト・キッド

監督:ハラルド・ズワルト
出演:ジェイデン・スミス、ジャッキー・チェン、タラジ・P・ヘンソン他
2010年 アメリカ映画

“絶望の後に”
ウィル・スミスの息子とジャッキー・チェンがリメイクしたあの空手映画の決定版“ベスト・キッド” 初めに言っておくと、“空手”映画ではなく“カンフー”の映画に変わっていて、舞台も中国になっている。設定は小学生と低年齢化し、不良グループ的なリーダーはヒロインの元彼から親同士が知り合いの関係になったりとテイストだけは残しているが、全く違う映画と言って良いだろう。もし過去のベスト・キッドと比較して見たいのなら“ベスト・キッド”の1だけ見ると比べて楽しむことが出来ます。共通の考え方は、“師弟”のつながりくらいなもので、ストーリーは完全に現代になっている。今の人達は、こちらの“ベスト・キッド”の方が見やすいかも?カンフーは生活の中にあり、自分を磨くことがカンフーを磨くことであると、武道の考え方の基本を教えてくれる。どん底に落ちている時、立ち上がる力は自分自身の中にあることをメインテーマにしているのだが、体を強くするだけでなく、心を強くする工程を丁寧に描いている。いじめられている子がいたら、一度親子で一緒にこの作品を見ると良いでしょう。強さというのは、やみくもにケンカをすることでなく、心を強くすること、友達を大事にすることなどを教えてくれて、本当に強い子に育てられるはずです。

 

■少林少女


監督:本広克行
出演:柴咲コウ、仲村トオル、キティ・チャン他
2008年 日本映画

“技より心”
柴咲コウ主演、仲村トオル、江口洋介、岡村隆史など豪華キャストで、少林拳を修行した少女が大学のラクロスチームを通して、少林拳の心を体得していくエンターテイメントムービー“少林少女” はっきり言ってしまうと“少林サッカー”のラクロス版+死亡遊戯という感じだろうか…。ダイナミックなのに、細かいCGと、やたらと動き普段見れないカメラワークで目には楽しい作品だが、スポーツ映画として何を教えてくれるのだろう?と思っていた。途中からチームワークの大切さ、相手を信じること、武道は戦うものではなく守ることなどを伝え始めると、最後は“少林の教え”が人の心を救う的展開になり、後半のたたみかけてくる感じは面白かった。個人スポーツをやっている人は、自分の価値観が全てになってしまう傾向がある。チームプレイをすることにより“技や強さ”よりも“仲間を信頼し皆でプレイする”ことの大切さを知ることが出来る。“技”より“心”を磨くことが大切なのである。堅い映画は苦手なんだけど…という人にオススメの作品である。単純に痛快で“和”の心を学べるはずです。


■武士道シックスティーン


監督:古厩智之
出演:成海璃子、北乃きい、石黒英雄他
2010年 日本映画

“「道」の教え”
女子高剣道部の2人を成海璃子と北乃きいが好演する青春映画“武士道シックスティーン” 全国中学剣道大会で優勝した子が、中学時代唯一負けた女の子がいた。友達も作らず道場でひたすら剣の道と向かい合った彼女にとって、中学時代の一敗が忘れられず、同じ高校に入り、その女の子を負かすことをただ考えていた。しかし、当の本人は、剣道を部活の一つとして捉え、友達と楽しい学園生活を送る中で、剣道も楽しんでいるだけだった。友達も作らず剣の道だけを突き詰める子と友達と楽しみながら楽しい剣道を求める子という正反対の方向の道を歩む2人。同じ剣道部でまったく逆の道を歩む2人も徐々にお互いに惹かれ、剣の道を探り始める。中学・高校の部活は、単なるスポーツでなく、社会性や“道”を知る為の重要な要素である。スポーツを通して目的を持ち、友情を知り、相手を応援する心、自信、平常心の大切さなどを知ること。それは、自分の“道”を作ることである。この作品では、2人の女子高生、そして先生や仲間、先輩達を通して、押し付ける訳でなく、すーっとそんなことを気付かせてくれます。1つの道を極めようとその人なりに努力をすること。それは時に勝ち負けを超越することもある。そんな“道”の作り方を教えてくれる1本です。部活やスポーツに行き詰っている人、その父母が子供に見せるにはオススメの作品です。


 CHEERLEADING
  ■チアガールVSテキサスコップ

監督:スティーヴン・ヘレク
出演:トミー・リー・ジョーンズ、クリスティナ・ミリアン他
2005年 アメリカ映画

“応援力”
缶コーヒーのCMでお馴染みのトミー・リー・ジョーンズが演じる無骨でジョーク1つ言えないテキサスの刑事と、今や盛りの5人のチアリーダー達が繰り広げるコメディタッチの作品“チアガールVSテキサスコップ” 刑事が事件を追いかけている時、たまたま取り逃がした犯人を見てしまったチアガール達。彼女達が狙われると判断した刑事は、チアガール達の寮に住み込み、事件解決まで守ることに。しかし、自由気ままな彼女達の生活に高校生の娘を持つ刑事は頭を抱えてしまう。しかも自分の娘と言っても、離婚をしていて別れた妻の元にいるので、なかなか会うことも出来ない。チアガールである彼女達はフットボールの試合や決起集会など人がたくさんいる所に出て行くので、警備も大変である。「27点差付けられた時、誰が必要?」「それは私達チアガールよ!!」負けている時の応援の力を知っていて誰よりも応援力を持っている彼女達。常に前向きでポジティブに生きることこそ、“応援力”の源である事を笑いの中で教えてくれる。応援は形ではない。応援は“心”“気持ち”なのである。試合会場だけでなく人生においても自然に応援できる彼女達を見て元気になってしまう。少し落ち込んでいる人に是非見てもらいたい1本。応援力、CHEER SOULを感じる作品です。


■クライムチアーズ


監督:フランシーン・マクドゥガル
出演:ミーナ・スヴァーリ、マーリー・シェルトン他
2001年 アメリカ映画

“アメリカの学校スポーツ”
高校のチアリーダーとアメフト部のQBが付き合い、子供を作ってしまい、家を出て2人の生活が始まる。そんな2人を応援するチアの仲間達。しかし、お金などに困って銀行強盗?そんなアメリカンハチャメチャ青春ストーリー“クライムチアーズ” 内容は青春ドタバタムービーなのだが、アメリカの映画ではチアリーダーのキャプテンとアメリカンフットボール部のクォーターバックがヒロイン、ヒーローになる作品がやたらと多い。実際の高校や大学でもチアリーダーやアメフト部のメンバーが学校行事や町の行事によく出演し、校内の生徒やOB、町の住人によく知られ、人気者になっている。アメリカの学校スポーツは学校や地域が本当にバックアップしている。日本だと全国大会に出場すると、学校の校舎や壁に大きな横断幕をかけていても「あっそうなんだ」くらいな感じで、特別何があるわけでは無い。アメリカだと激励パーティや地元で寄付金を集めたり、地域と一体化してやっているところが多いように思える。選手達も地元が応援してくれていると思うと、誇りを持ち、マナーなどもきちっとするし、何しろ負けて地元に帰りたくないと思い、練習にも身を入れて頑張るものである。日本でももっと学校スポーツを地域が入って応援する風習が出来たらよいと思います。


■チアーズ!2


監督:デイモン・サントステファーノ
出演:アン・ジャッドソン=イェガー、ブリー・ターナー、フォーン・A・チェンバーズ他
2004年 アメリカ映画

“チアの真髄”
アメフトとチアで全国に名を馳せている大学に、チアリーダーになりたくて入学してくる1人の少女。彼女は名門チアリーディング部に合格し入部するが、特別意識や階級を勝手に作っている実態にがっかりする。アメフト部は応援するが、マイナースポーツは応援しない。キャプテンの奴隷のように凝り固まった考え方の応援。アメフトやバスケ以外の人間は下に見て、自分達の大会での優勝のことしか考えない。彼女は、そんな名門チア部を辞めて、ダンサーや演劇など学校の中で追いやられた人達とチームを組み、メジャー、マイナー関係なく、全ての学生達を応援するチームを組む。アクロバットになり、今や1つのスポーツとして発展しているチア。しかし真髄は先頭に立って応援をリードし、チームに勝利や喜び、勇気を贈り、応援者を一体にさせることだと思う。注目されるとついつい「自分達がすごいんだ」と勘違いしてしまう人がいる。何事も真髄を追求していかないと、道から外れていってしまう。一度間違いを起こすと、全てが見えなくなってしまうものだ。「応援の力」は相手がいてこそである。自分の身勝手なもののためではない。この作品は、全ての人を応援する楽しさを全面に押し出してくる爽やかな青春グラフィティである。友情、団結、夢への挑戦…青春映画に不可欠なものが全て詰まった“チアーズ!2” どんな人も元気にしてくれる1本です。


 CURLING
■シムソンズ

監督:佐藤祐市
出演:加藤ローサ、藤井美菜、高橋真唯他
2006年 日本映画

“何かを見つける力”
北海道の田舎の女子高校生達がカーリングを通して成長していく姿を映画化した“シムソンズ”。しかもベースストーリーは実際冬季オリンピックに出場したメンバーを描いているというのだから、前々から見てみたい作品だった。チーム青森の活躍で“カーリング”というスポーツが徐々にメジャーになってきた。僕もオリンピックの中継を見て、カーリングというスポーツに興味を持った。選手達の試合中の声やコーチの声まで放送されたので、選手の心理やチームの考えも伝わり、解説の人が実に分かりやすくカーリングの面白さを伝えてくれる。“氷上のチェス”と呼ばれるくらい心理戦であり、正確さを競うテクニックを必要とする面白いゲームスポーツだ。カーリングを面白く見るには、選手達のキャラクターを知ると何倍もふくらむだろうと思い、オリンピックを見ていた。映画“シムソンズ”では、4人の個性の違う田舎の女子高生を描いている。昔トップ選手で、今はエリートチームに在籍せず殻に閉じこもっている子、誰とも話せず孤立している女の子、町を出たくて勉強はするものの、明るい将来を描けない女の子、そして思いつきで色々やるものの将来が見えず何をしていいのか分からない子。そんな4人がカーリングを通し、ぶつかり、本音を語れる仲になり、オリンピックという夢を抱くようになる物語である。友達と助け合い、自分に無い部分を補って、苦しみながらも1つの目標に向かうこと。それが“何かを見つける力”である。1人でただひたすら自分勝手に何かをやっていても、何かを身につけることは出来ない。自分を成長させたい人に見てもらいたい作品です。


 DANCE
■ストリートダンス TOP OF UK

監督:マックス・ギワ、ダニア・パスクィーニ
出演:ニコラ・バーリー、リチャード・ウィンザー他
2010年 イギリス映画

“世界共通のテーマ「融合」”
ストリートダンスものの映画で時々テーマになる「バレエ」と「ストリート」の融合。有名なもので言えば“STEP UP”アメリカ映画に多いテーマだが、イギリスでも同じようなテーマで作られた。その作品がこの“ストリートダンス TOP OF UK”である。ストリートダンスで夢を追い続ける少女。彼氏は自分が優勝したい為、チームを抜け、昨年の優勝チームに入ってしまう。仲間と自分達が求めるダンスを創り上げる為、稽古場を探していた時、バレエの名門校の先生と出会う。バレエのダンサーをチームに入れるなら学校を稽古場にして良いといわれ、いやいや納得し、始めていく。考え方がまったく違う人間も、お互いのことを認めれば、新しい世界が開けていうことを教えてくれる作品。アプローチは、“STEP UP”などと同じなのだが、アメリカ映画と違って貧富の差はあまり描かれていない。その分、考え方の違いの部分をより多くの時間を使って表現している。日本人には、こちらの方がすんなり入りやすいと思われる。ダンスシーンはとても丁寧に表現しているので、色々なストリートダンスの魅力が、迫力も十分あって楽しめる作品である。元々イギリスは「UK B-Boy Championships」などブレイクダンスも盛んで、テレビなどでもダンス番組がたくさん放送されている。イギリスのストリートダンスシーンを見るなら、この作品に限る。


■ステップ・アップ3


監督:ジョン・チュウ
出演:リック・マランブリ、アダム・G・セヴァーニ、シャーニ・ヴィンソン他
2010年 アメリカ映画

“踊るということ”
ストリートダンスをフューチャーし、ダンサー達の競技性(大会)をフォーカスするステップ・アップシリーズの第3弾“ステップ・アップ3”作品も毎回ステップアップしていき、今回の作品はシリーズの中で最も面白い作品であった。ダンス的に言うと、ブレイクダンス“B-Boying”のチームバトルがメインに扱われているのだが、タップやジャズ、タンゴなど様々なジャンルと、今回主役の1人がNY大学の工学部に入った若者という設定なのでエレクトリックな部分もある。BMXやスケーターも上手く取り入れ、ストリートのにおいプンプンの作品です。友情、愛、裏切り、信頼、いろいろなテーマが上手くストーリーとして綴られているが、ダンスシーンの格好よさは文句のつけようが無い。ダンスの良さもきちっと見せ、B-Boyバトルの真剣勝負も伝わってくる。この作品の良さは、視点が偏っていないことだ。スラムや貧しい子達にフォーカスして、その人達の言い分だけで描かれたダンス映画は今までもたくさんあったが、この作品は主人公の1人として、高校でダンスをやっていたが我慢して、普通に受験し大学に受かった若者を描くことで、様々な境遇の人の“踊る”意味を表現している。貧しい人にとってはダンスという共通点で今まで味わったことの無い“家族”を感じ、普通の生活で愛情たっぷり育てられた若者もダンスをしている時だけ感じる“特別感”や“解放感”をモチベーションとしている。ハングリーなことだけがモチベーションではない。それぞれの人間が“スポーツにかける理由”がある。“踊るということ”は人それぞれ理由は違えど、表現することや目標が1つになれば皆で前に進めることを教えてくれる素晴らしい作品です。


■ステップ!ステップ!ステップ!


監督:マリリン・アグレロ
2005年 アメリカ映画

“子供達のスポーツ教室”
NYの子供達が学校別で社交ダンスにチャレンジするドキュメンタリー作品“ステップ!ステップ!ステップ!” マンハッタン、ブロンクス、クイーンズ、ブルックリンとニューヨークの全地区の小学校の中にクラブというか、プログラムを作り、予選から勝ち上がっていく様子、練習風景などを密着している。貧しい地域、犯罪の多い地域、高級な地域、いろいろなところを取り上げている。日本で言うと、地域クラブのような形で無料で希望者を募り、参加させ、Pick Upしたメンバーが大会に出場する。ダンスを通して友達を作ったり、ダンスが出来ても学習態度や生活態度が悪いとメンバーから外されたり、ダンスを通して礼儀や文化、社会を学ばせつつ、スポーツとしての指導をしている。僕も総合型地域スポーツクラブなどでスポーツを時々教えているので、この作品はとても参考になった。スポーツを通じて子供達に教えてあげられること、伝えられることはたくさんある。教える人間もそのことを理解していないといけない。1つのことに集中し、チームで目標を持つことの大切さ。最初は文句を言っている子供やチームを乱す子供、相手の目を見ることが出来ない子供達が大会が進むにつれ、一体化していくのが本当によくわかる。とても勉強になる良い映画でした。


■ターン・イット・ルース


出演:TAISUKE、BENJ、HONG10、LILOU、RONNIE、ROXRITE他
2009年 フランス映画

“B-Boyが背負うもの”
2007年のRed Bull BC OneというB-Boy(ブレイクダンス)個人世界一決定戦と、出場した16人の中から6人をピックアップし、ドキュメンタリーを加え構成された映画“ターン・イット・ルース” 南アフリカで行われたこの大会に集まった世界から選ばれた16人のB-Boy。日本人のTAISUKE(2008年準優勝)も取り上げられ、長崎から東京に出てきた若い頃の苦悩を見ることが出来る。BC Oneの常連でもあるフランス在住のアルジェリア人のリルーや、メキシコからの移住者、アフリカのスラム出身者と、この大会に出場しているB-Boy達は裕福とは言えない人達が多い。皆、“ダンスが無ければ犯罪者になっていた”とか“自分の表現すら出来なかった”とダンスに助けられ生きていると語る。このくらいのハングリー精神が無いと、この大会には出られないのかもしれない。僕も2009年のNY大会と2010年の東京大会を生で体感している。会場の興奮度は他のダンスの大会では見られないものだった。人生そのものを表現しバトルするこのBC Oneは単なるダンスの大会ではない。己の全てを相手に見せ付ける大会である。人生を賭けてダンスでバトルする。これはB-Boyingのルーツであるアメリカ・ブロンクスで、けんかの替わりにダンスでバトルしたあの精神を今でも最も表現しているのではないだろうか?単なるダンスの映画ではない。スポーツが人生を救うことを教えてくれる作品である。


■ストンプ!


監督:イアン・イクバル・ラシード
出演:ルティナ・ウェスリー、ドウェイン・マーフィ、トレ・アームストロング他
2007年 アメリカ映画

“親が望むこと”
姉が薬物中毒で亡くなり、お金が苦しくなったので、私立の高校を辞め、地元の公立高校に通いだす1人の女の子。その地区はスラム的な地区で犯罪は日常的に行われており、奨学金をもらい大学に行って、早くこの地域を出て行きたい彼女は、母の夜も寝ないで働く姿を見て、“STOMP”の大会の賞金で少しでも楽にしてあげたいと思う。亡き姉はSTOMPの天才的ダンサーで多くの大会で優勝していた。そんな姉の姿を見て、自分もやっていたSTOMP。勝ちそうなチームを渡り歩き、友達も裏切ってしまう。彼女にとってSTOMPは街を出て大学に行く為の資金作りであり、大学に行く金を作ろうと必死で働く母を楽にしてあげる為の道具でしかなかった。しかし、そんな気持ちで踊っている彼女はあと一歩のところで負けてしまう。仲間に許してもらい、楽しむ為、皆と一体化する為だけに踊った時、本当の喜びを手に入れるのである。スポーツで夢や金やいい生活を手に入れたいという人もたくさんいるだろう。しかし、それは結果的についてくることであって、根本にそのスポーツ自体が好きであったり、仲間と共に頑張りたいという気持ちが無いと、真の成功には結びつかない。“ストンプ!”は、そんなピュアな心を取り戻したい時、見て欲しい作品です。


■最強絶叫ダンス計画


監督:ダミアン・ダンテ・ウェイアンズ
出演:ショシャーナ・ブッシュ、デイモン・ウェイアンズ・Jr他
2009年 アメリカ映画

“ダンス映画ファン必見のパロディムービー”
昔“裸の銃を持つ男”という色々な映画をパロディでつないでいく映画シリーズがあったが、この作品“最強絶叫ダンス計画”はダンス映画・音楽映画ばかりを集めたパロディムービーです。“フットルース”“YOU GOT SERVED”“ストンプ・ザ・ヤード”“STEP UP”“フラッシュダンス”“ヘアスプレー”“フェーム”“ダンスレボリューション”などのダンス映画に加え、“Ray”“ドリームガールズ”などの音楽映画も入っている。日本で言うと「とんねるず」などがよくやっているようなスタイルでパロディをやっているのだが、そこはMTVが制作しているだけあって、ヒップホップなどのダンスシーンも“セイブ・ザ・ラストダンス”の振付師が指導していたりと、音楽やダンスの制作チームも超一流でダンスのクオリティはすごく高い。ストーリーやテーマはパロディなので、強引なところも多々あるが、このような作品を通して色々なダンス映画に興味を持つ人は多いのではないかと思われる。元々、ダンス映画が好きな人にとっては何倍も楽しめる作品になっています。このようなパロディ作品が、ダンス映画やスポーツ映画を見るきっかけになってくれるのならとても良いことではないかと思っています。ゲイとか下品な部分もたくさんあるので、そういうものが大丈夫な人は是非見てください。


■昴-スバル-


監督:リー・チーガイ
出演:黒木メイサ、Ara、平岡祐太他
2008年 日本映画

“バレエの世界”
僕はこれまで数々のダンス映画を見てきたが、バレエの映画を見たことはほとんど無かった。トゥシューズを履いて、踊り全体を見せ、芝居もしなくてはならない。演舞的要素も多いだろうから、吹替えも難しいし、吹替えをするとやたらと上半身と下半身が別カットの画になってしまう。バレエの映画は制作が本当に大変だと思う。バレエ映画を作るには、本当に踊れて芝居が出来る人が必要なのである。そんな不安を抱えながら“昴-スバル-”を観た。主演の黒木メイサの踊りを見てそんな気持ちが一切無くなった。完全に踊っていて、突き刺さるような芝居をしているではないか。彼女が1人のバレリーナに見えた瞬間、一気にストーリーに入っていくことが出来た。スポーツ映画の良さでも悪さでもあるのだが、役者が1人のアスリートに見えた時、ストーリーに引き込まれていく。しかし、この人絶対にプレイヤーじゃない!と思った時は、全てが単なるつくりモノに見えてくる。その点ではこの作品は大成功なのではないだろうか?病気の双子の弟の為に、体で表現して毎日の出来事を伝えていた少女は、やがて大人になり、バレエという踊りで自己を表現する世界にのめり込んでいく。小さなキャバレーで教えてもらっていたダンスから、プロのダンスの世界に歩み出すのだが、そこは競争と孤独さえも感じる冷たい世界。多くの事を学び、練習し、自己を磨き続けなくてはならない。どんなスポーツでも同じだと思うが、バレエは伝統や派閥などがある世界。上を目指す為、立ち向かっていく勇気が伝わってくる。夢の途中を走り続けている人に是非見てもらいたい作品です。

 

■メイク・イット・ハプン!


監督:ダーレン・グラント
出演:メアリー・エリザベス・ウィンテッド、テッサ・トンプソン 他
2008年 アメリカ映画

“田舎と都会”
シカゴから何百kmと離れた地に住むダンス好きの少女。母もダンサーを目指していて彼女が10歳の頃に他界。自分が夜遅く帰った日、父が家で倒れていて手遅れで他界。ダンサーになりたいという夢を持ちながら兄と2人で、父の残した自動車工場を守るために働く日々。しかし、3年たって、自分の夢を捨てきれず、1人シカゴに向かう。ダンスアカデミーに通っていると兄に嘘をつき、キャバレーのダンサーとしてダンスを磨く。いつかダンスアカデミーの狭き門に挑戦し、トップになることを目指して…。そんな時、工場の経営がうまくいかない中、兄がシカゴまで会いに来る。ダンスアカデミーで勉強していると信じていたのに、キャバレーで踊る妹の姿を見て肩を落とす兄。父の形見でもある工場を救うためにシカゴから再び田舎に戻る彼女。そんな彼女の夢は?というストーリーなのだが、ストレートに友情、家族愛、夢が描かれていて、すがすがしく見られる作品だった。この作品で「私は田舎者だから…」というニュアンスのフレーズが時々出てくる。僕はこの時代に、田舎に住んでいようが、都会に住んでいようが大差は無いと思う。むしろ田舎だからこそ発信できることだからいい部分もあるのでは?とも思う。音楽の世界でも、沖縄や仙台のアーチスト達がライブの時だけ東京に来て、制作は地元でやるなんて、いっぱいあるし。(仙台はそんなに田舎ではないが、僕の知っている和太鼓グループの拠点・美里町などは本当に田舎だったもので…)自分たちのペースで創作活動をし、世界に向けて発信出来るのだから、ダンスもスポーツも音楽も、どこでやっていても構わないのではないか?と思う。しかし、ただやっていても埋もれるだけである。そこにアイデアや仕掛けが必要だし、苦労もすることだろう。全ての人間が発信者や表現者になれるはずなのだから…。


■ダンス・レボリューション

監督:ビリー・ウッドラフ
出演:ジェシカ・アルバ、メキー・ファイファー、リル・ロミオ 他
2003年 アメリカ映画

“子供を信じてあげる心”
ニューヨークの空撮とリズムの効いたラップミュージックとクラブから始まる“ダンス・レボリューション(原題HONEY)”。CDJから繰り広げられる音楽とHIPHOPダンス。クラブの1歩外に出るとB-BOY達のブレイキン。金や変な争いも無く楽しい世界が広がっていた。でも彼らは札付きの悪とされていて、警察が来るとBMXで逃げていた。主人公のハニーはセンターでダンスを教えている。バスケ、インライン、BMX、HIPHOPダンス、ブレイキン…ストリートのカルチャーがつまりまくっている。ギャングに憧れているが、ダンスの才能のある少年と出会った彼女は、少年に自分のスクールに来るように勧める。ヤクの売人の手先のように使われていた少年。プロモーションビデオの現場に連れて行ったりして、ダンスには“夢”があることを体感させていくと、少年は徐々にギャングから離れ、“夢”を追いかけようという気持ちが芽生えていく。しかし、父からの暴力、業界を仕切っている人からあっけなく切られたりすると、少年は“夢”を持つことに失望し、ギャングに戻っていく。しかし、彼女はそんな子供達の集まれる場所を作ることを目標にチャリティライブを行なう。このライブで“夢は自分達の力でつかめる”ということを学ぶ。子供達の才能を信じ、大人達がその環境を作ることの大切さを、この映画は教えてくれる。格好よいものに子供達は憧れる。“ダンスやスポーツは格好よい”“人のために何かをすることは格好よい”など、大人が子供達をひっぱれる存在になって示していかないといけないのだと痛感した。特別なことではなく、生活の中から自然に何かを伝えられる大人になりたいと思わせてくれる1本です。作り的にはティーンエイジャー向けに作られている作品だと思うのですが、是非大人に見てほしい作品。子供達を信じてあげる心、あなたは忘れていませんか?

 

■STEP UP2〜THE STREET〜

監督:ジョン・M・チュ 製作総指揮:アン・フレッチャー
製作:アダム・シャンクマン他
出演:ブリアナ・エヴィガン、ロバート・ホフマン 他
2008年 アメリカ映画

“B-BOYINGは全ての人のもの”
前作“STEP UP”は、B-BOYNGやHIPHOPダンスの世界に生きてきた男の子と、バレエダンスの世界に生きてきたお嬢さんが、ダンスを通じて住んでいる世界を超え、1つになっていく融合の素晴らしさを教えてくれたダンスムービーだった。この作品の第2弾はどんな作品だろう?と思ってみたが、まったくの別ものだった。これは“B-BOYING”は全ての人の“自由”を表現するダンススタイルだと教えてくれる1本。ストリートでワイルドに生きている人が“リアル”で、学校に行っている人はB-BOYになれない訳じゃない。自由にダンスで表現し、友達と1つの目標に向かって何かを創り出そうとしている人全てがB-BOYになれるということを教えてくれる。B-BOY No.1を決める“BC ONE”の世界大会でニューヨークに行ったが、そこは本当にフレンドリーな空間でバイオレンスのにおいなど無い。“B-BOYは怖い”みたいな変な空気が流れているが、“B-BOYING”は全てのブレイクダンスを愛し何かを創ろうとしている人達のものだと教えてくれる作品だった。作品のカラーリング、色やトーンも好きな作品だし、HIPHOP、B-BOYINGのパワーがあふれている気持ちの良い1本です。


■プラネット B-BOY

監督・制作:ベンソン・リー
配給:トルネード・フィルム+イーネット・フロンティア
2010年1月9日〜渋谷シネクイントにてレイトショー

“カルチャースポーツの真髄を見よ”
世界三大B-BOYバトルの1つ、バトル・オブ・ザ・イヤーのドキュメンタリー映画
“プラネットB-BOY”
B-BOYとは、ブレイクダンスをする人のことを言うのだが、この大会はクルー対抗バトルである。フランス・アメリカ・日本・韓国のチームがフューチャーされていて“個”が強いストリートカルチャーにおいて、“チームのつながり”と“HIPHOP”という文化への尊敬の念が詰まった1本である。
それぞれの“生き方”と“世界大会”。
アスリート的一面が強くフォーカスされている作品だが、カルチャーとしての部分もそれぞれの国民性も含め、しっかりと描かれている。
NewYorkで個人のB-BOY世界一決定戦“BC ONE”を生で見て撮影をしてきたが、B-BOYバトルの面白さは人生や考え方がストレートにダンスに表れてくることであろう。規定が無い分、自由に発想できるこのジャンルでは、それぞれが新しいスタイルを追い求めている。
物まねでなく、自分達のスタイルを創り出し、創り上げたチームが世界一をとることができる。規定が無い中で勝敗をつけるのは難しいと思うが、気持ちのぶつかり合いを楽しく見る事ができた。まさにエクストリームスポーツであり、エンターテイメントショーだ。
NewYorkブロンクスで生まれたHIPHOPカルチャーの1つ“B-Boying”が、しゃべらなくても人に伝えることのできるエンターテイメントツールだということ確信させてくれるドキュメンタリー映画“プラネットB-BOY”
この1本を見てカルチャースポーツの真髄を知ると良いだろう。


■Shall we ダンス?

監督:周防正行
出演:役所広司、草刈民代、竹中直人他
1996年 日本映画

“きっかけと自分の世界”
社交ダンスの定番となっている周防正行監督の“Shall we ダンス?”
僕はあるタレントの社交ダンスの1つ“タンゴ”の舞台のプロデュースや演出をやっていたので、この世界のすごさを知った。
タンゴのアジア大会に撮影で行った時、舞台裏を見て、エンターテイメントであると同時にスポーツだと思った。
ESPNなどのスポーツ専門局で、社交ダンスを扱っている理由を肌で感じてしまった。
伝統と創造性、練習と相手とのコンビネーションなど、大会で勝つためには、実に多くの要素を必要とする。しかし、社交ダンスのイメージは“セレブのもの”とか“少し恥ずかしい”など決して誰もがすぐにやってみたいものとして、日本人はとらえていないだろう。
そんなダンスの世界に飛び込み、はまっていく様子を、この作品はうまく取り上げ、人間ドラマとして繊細に描いている。
たまたまダンス教室から外を見ていた女性に惹かれた男、医者に健康のために進められた男、妻がやっていてバカにされたくないからこっそり始めた男、3人の違うきっかけで始めた男達が、同じスクールでどんどんダンスにはまっていく様子を描いている。
どんなものでもやってみないと、その面白さや奥深さに気づかない。しかも、楽しみ方は個人の自由である。しかし、その人なりに思いっきり練習したり、トライしないと本当の楽しみは生まれないのである。それぞれの立場や生活があり、その中で思いっきり楽しむことで、仲間が出来たり、人生や考え方を変えてくれるものになる。
“Shall we ダンス?”は、トップダンサーから始めたばかりの男達まで、いろいろな立場の人がそれぞれ影響を与え、良い方向に進んでいくことを教えてくれる。基本にあるのは、そのスポーツそのものを愛することが出来るかが大切なのだ。


■フラッシュダンス

監督:エイドリアン・ライン
出演:ジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー 他
1983年 アメリカ映画

“B-Boyの存在が世界に”
決してHIPHIP映画ではないが、この映画が世界中にブレイクダンス、B-Boyの存在を知らせたという事実は誰にも曲げることは出来ないだろう。
ジェニファー・ビールス主演の“フラッシュダンス”はバレエダンサーになりたい1人の女性が夢を掴む為、まっすぐに生きていく様を描いた作品である。
アイリーン・キャラのフラッシュダンスの曲に乗って街の中を自転車で走り、男に混ざって溶接をしているオープニングが終わると、バーでのダンスシーン。有名な椅子を使って上から水をかぶるあのダンスだ。水しぶきを飛ばしながら、逆光の中、踊っている様子は何十年経っても忘れることは無い。
独学でダンスをやってきた主人公は、バレエ団のオーディションを受けようとするが、願書の時点で過去の経歴を書かなくてはならなかったり、自分ひとりだけが貧しい格好だったので逃げ出す。
トレーニングが終わり、帰っていくシーンで突然ジャージや革ジャン姿のロックステディクルーが登場し、ブレイクダンスを踊りだす。
路地に置かれたラジカセ。流れてくる曲は“IT'S JUST BEGUN”クレイジーレッグス、プリンスケンスウィフト、Mr.フリーズ、Normski、Frosty Freezeの5名が出演。傘を使ったムーブや、オールドスクールのすごいスピンを見せつける。
最後のコンテストのシーンで、主役のアレックスがブレイクダンスを取り入れた時の審査員の拍手と笑顔が印象的である。
伝統のバレエの中に、ブロンクス生まれのブレイクダンスを入れた時、ダンスが持つ“自由な表現”という幅が広がったことを伝えたかったのだと思う。
僕もあのシーンで初めてブレイクダンスを知った。
この映画が持つ意味は大きい。B-Boyを世界に発信した映画なのだから。


■YOU GOT SERVED

監督:クリス・ストークス
出演:オマリオン、マーカス・ヒューストン、ジェニファー・フリーマン 他
2004年 アメリカ映画

“圧倒されるダンスシーン”
オープニングから圧倒されるようなダンスバトルで作品に引き込んでいく。
全編“B-BOYING”のチームメイトの友情のストーリーなのだが、悪ながら、ダンスで、生活や気持ち、友情の大切さを手に入れていく話である。
数チーム出場するのだが、それぞれのチームにスタイルがあって面白い。
既存のチームかと思っていたが、この映画のキャスティングで、1からオリジナルということに驚かされた。コリオグラファーの人のネタの多さにびっくりしてしまう。ネタのバリエーション、コミカルにバカにしていく感じ、まるで本当のバトルの迫力がある。撮影中に、負けるはずのチームが押しすぎて、撮影を中断したというエピソードもあるそうだ。
ブレイクダンスのバトルの面白さの全てが見られる1本である。
さらに、ストリートバスケやLAスタイルのストリートファッション、ストリートの若者の問題など、ストリートカルチャーをふんだんに盛り込んでいて、B-BOYING、ブレイクダンスのチームバトルやその考え方を見る第一歩として見たい人にはオススメの1本です。


■ダンサー

監督:フレッド・ギャルソン
出演:ミア・フライア、ガーランド・ウィット、ジョシュ・ルーカス 他
1999年 フランス映画

“障害と兄妹愛”
ニューヨークで兄と暮らす1人の失語症の妹。
彼女は毎週土曜日にNYのクラブでDJからあらゆるジャンルの即興リミックスに合わせ踊るというバトルを受け、勝ち続けている。兄は妹を守ることを生きがいとし、自分ものし上がることを考えていた。
そこに現れた1人の科学者。ダンスの動きで音を創る発明をした男が彼女に近づく。
金にもならないことなので兄は反対するが、彼女は“音”を自分から出せることに喜び“自分の新しい未来”のために踊り始める。
ミア・フライアの圧倒的な存在感とダンス。
リュック・ベッソンチームによる立体的カメラワーク&編集、そしてJB、オーティスからプロディジー、ファットボーイスリムなど、オールラウンドクラブミュージックがうまく作品の中で使われている。
障害を持つ女性の苦しみ、この苦しみから解放してやりたいため何でもやってしまう兄。2人はお互いに1人立ちできていなかった。
しかし“未来”が見えた時、共にある部分は共存し、ある部分は自分のために歩いていくことを知る。
ダンスとは、“体と音と感動を表現すること”この映画でダンスの素晴らしさを再認識させられました。
今、自分を勝手に枠におさめている人に見てもらいたい作品です。


■ステップ・アップ

監督:アン・フレッチャー
出演:チャニング・テイタム、ジェナ・ディーワン、マリオ・ドリュー 他
2006年 アメリカ映画

“夕陽にジャンルはとけていく”
バレエとHIPHOP。伝統と破壊。上流階級とゲットー。厳格なステージとストリート。とにかくこの“ステップ・アップ”は、対極的な2人の主人公が融合することが全てである。
まずはアメリカのアートスクールとゲットーのクラブ。アメリカのアートスクールはよくアメリカの映画やドラマの題材になっている。例えば、“フェイム”とかがそうだが、上流階級の人達だけでなく、貧しくても奨学金で入ってきた生徒達がダンスやアート、音楽という夢に向かって邁進している場所である。
一方、ゲットーのクラブは、夢を持たない若者の溜まり場として表現されている。この差がテーマになっていて、そこから抜け出し夢の場に行くというストーリーなのだが、ゲットーからでも夢をつかむことはできるのでは?と思ってしまった。
この作品の監督はコリオグラファー、振付師出身の人だそうだ。だから余計、そんな人達がいっぱいいることを知っていると思うのだが…。
中盤のシーンで、アートスクールの女性とゲットー出身で社会奉仕中の男性が夕陽にそまる海辺で踊るシーンがある。あれがエンドシーンであればよかったのに…。
あとは、夢をスクールで追いかけるには?とかダンスアカデミーに入るために頑張るとか、ひかれたレールの上をただ進んでいくだけ。オリジナリティを追求していく姿は中盤で終わってしまう。優等生が正しいと言われている気がして少々悲しくなった。
全体的なストーリーは、ストレートでわかりやすいし、ダンスの良さはいっぱいあるけど、本当に融合したのか?と思うと少々疑問が残る。
エンドロールに一般のオーディションで勝ち残った人達のがダンスをしている映像が出てくる。これは面白い試みだと思う。


■フットルース

監督:ハーバート・ロス
出演:ケヴィン・ベーコン、ロリ・シンガー、ジョン・リスゴー、ダイアン・ウィースト他
1984年 アメリカ映画

“不滅の青春ダンス映画”
あの熱血ラグビードラマ“スクールウォーズ”のテーマ曲“HERO”を聴くと、この作品を思い出す。
校舎の中を松村雄基がバイクで走るシーンより、ケヴィン・ベーコンが畑の1本道をトラクターでチキンレースの勝負をしているあのシーンがよみがえる。
何と言っても、オープニングの足元のステップのアップがダンス映画らしい。スニーカー、パンプス、色々な靴のアップ。様々なステップ。ナイキのスニーカーとかも格好よい。Gパンに白のTシャツのシンプルなポスターも印象深い。
物語は、海とロックとダンスの禁止されたある町に、都会からレン(ケヴィン・ベーコン)が遣ってくるところから始まる。
Quiet RiotみたいなLAメタルやメンアットワーク、ポリスといった新しいロックを聴き、ダンスが好きで、ファッションは革ジャンにGパンといったイギー・ポップみたいな子が来たものだから、町は混乱してしまう。
ボロボロのワーゲンもストーリーにマッチしている。
そんなレンが青春を楽しみ、最後にプロムパーティでダンスをしようと立ち上がるという、いたってシンプルなストーリー。そこに甘酸っぱいラブストーリーが流れていく。
人は何かのせいにして嫌な記憶を葬ろうとする。まさにこのストーリーのベースに流れているものがそれだ。
しかし、友情、愛情、親子の愛というものが、新しい扉を開いていく。
ストレートだからこそ、伝わってくるものがある。
アメリカンなオープンなからっとした感じが、よりこの作品の色気を作っていく。
80年代のダンス映画の決定版。不滅の青春ダンス映画“フットルース” 
アメリカならではのプロムパーティ(卒業パーティ) ストレートでPOPで音楽とダンスに満ち溢れたこの作品を通じて、ダンスの気持ちよさを汲み取るがよい。
なぜだか、甲子園球児のさわやかな感覚につながるものも感じてしまう。


■フットルース〜夢に向かって

監督:クレイグ・ブリュワー
出演:ケニー・ウォーマルド、ジュリアン・ハフ、アンディ・マクダウェル他
2011年 アメリカ映画

“現代版リアルフットルース”
ダンスのスタンダード映画の「フットルース」のリメイク版。製作はMTVだが、個人的にMTVのリメイクは毎回期待している。アメフト映画のスタンダード作品「ロンゲスト・ヤード」を見た時、映画をリメイクする面白さを感じた。ストーリーや台詞は最大限に活かしつつ、時代を現代にして共感出来るようにしている。さらに現代の問題も巧く挿入してくるので、よりテーマが広がる。今回も期待をかなり膨らませ見始めたのだが、まったく裏切られる事は無かった。元々は1984年に公開された映画。オープニングからオリジナルと同じテーマ曲が流れ、作品中も当時の音がふんだんに使われている。さらにHIPHOPや今のダンスミュージックも入り、時代的な違和感はまったく感じさせない。トラクターのチキンレースはバスのレースに、使っている車も原作と同じVWのビートル。白のTシャツ。僕が若かった時感じたドキドキ感をこの作品なら今の若者にも感じてもらえると思う。テーマは84年に公開した作品に加え、デジタル社会でより地域の人との絆が希薄になっている事を強調している。前作のフットルースを先に見て、それからこの作品を見ると、何倍も楽しめるだろう。時代が変わっても若者達は同じことを悩んだり、問題になっていたりする。青春の不変の悩みを教えてくれる作品である。


 DODGEBALL
■ドッジボール

監督:ローソン・マーシャル・サーバー
出演:ヴィンス・ヴォーン、ベン・スティラー、クリスティン・テイラー 他
2004年 アメリカ映画

“アトラクションのようなアメリカのドッジボール”
まずアメリカのドッジボールを初めて見た。日本とまったくルールが違う。日本のドッジボールとはまったく違うスポーツだ。
日本みたいに内野・外野がない。ダイレクトキャッチすると、フィールドの外に出たプレイヤーが1人、コートの中に入ってこれる。
最も違う点は、ボールが1つではなく、6つあることだ。コートエンドに並んだ6人のプレイヤーが、スタートのホイッスルと共に、センターラインに並んだ6個のボールを奪うところからゲームが始まる。
フィールドプレイヤーが相手のフィールドの選手にボールをぶつけ、ぶつけられた人はコートの外に出るというルール。
ボールがいくつもあるので、日本のドッジボールよりスピーディであちらこちらで色々な展開が起こる。コートも得点ボードもPOPで、ESPNが全米中継しているという設定も個人的には笑えた。
さらに、ツールドフランスのスーパースター、ランス・アームストロング本人が出演したりと、とにかく面白さ満点。
対立している2つのジムがあり、みんなの為にやっているジムが、隣の傲慢なジムに買収されそうになり、5万ドルを作らなくてはならなくなった。
その時、雑誌で見つけた全米ドッジボールの大会の賞金が5万ドルだったので、皆で出場することになる。
伝説のボーラーに指導を受け、団結していくというストーリーなのだが、ちょっと下品なところもあるが、笑いながら、いつの間にかこぶしを握って頑張れ!!と言っている自分がいる。
落ちこぼれと思われる人もそれぞれの人生があって、皆が頑張っているパワーが集まればすごいことが出来るということ、そしてチーム団結を笑いの中から教えてくれる作品です。


 GOLF
■俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル

監督:デニス・デューガン
出演:アダム・サンドラー、クリストファー・マクドナルド、ジェリー・ボーウェン他
1996年 アメリカ映画

“誰かの為に…”
スケートがまともに出来ないのにパッティングだけは凄い、アイスホッケーに命をかけているアダム・サンドラー演じる“ハッピー・ギルモア”。彼の最愛の祖母の家が税務署に差し押さえられ、ひょんなことからプロゴルファーになり、賞金で家を取り戻そうとする。基本はコメディ映画なので、笑って楽しめばいいのだが、単純に楽しみながら、愛する祖母や仲間の為にゴルフをしている“ギル”と、賞金と名誉の為にやっている人間の違いを善悪はっきりさせて描いているので、誰もがわかりやすい作りの作品である。誰かに夢や希望を与える人間の“正しさ”“強さ”を笑いの中で表現しているのだが、シリアスな目で見ると、実に真実をついている。若いトップアスリートの中にも、自分の為だけにスポーツをしている人間が多い。この作品ほど目に見えるような卑怯なことはしていないが、本当の友達が1人もいなくて、実は孤独な人も多いと思う。ただプレイするのでなく、プレイを通して自分を表現し、仲間や応援者、家族を大事に出来ない人間は、一流になれないと僕は思う。こんなコメディ映画の評論で、こんな文章を書いているのは少し滑稽だが、笑いの中にある真実は、シリアスなものよりグサッと心の奥を刺すときがある。この作品はそんな作品であった。子供から大人まで楽しめて、周りの人間の大切さ、楽しむことの重要性を教えてくれる1本です。


■ティンカップ


監督:ロン・シェルトン
出演:ケヴィン・コスナー、レネ・ルッソ、ドン・ジョンソン他
1996年 アメリカ映画

“立ち上がる力”
テキサスの田舎のしがないゴルフのレッスンプロが、自分の人生を切り開くため一念発起し、USオープンを目指していく“ティンカップ” 何の目標も無く、昔の彼女に金を借り、遊びまくり、だらだら仕事をしていた主人公が、一人の美人精神科医と出会うことで人生が変わっていく。才能はあってもメンタルが弱く、その反動ですぐ怒ったり、ゲームを捨ててしまうゴルファーが、トッププロゴルファーを彼に持つ精神科医を落とすため、その彼を潰すべくUSオープン出場に向け、トレーニングを始める。彼の周りの人間も、光の当たらない人達だらけだった。しかし、トレーニングを続け、彼女の優しさとメンタルトレーニングの中、徐々に成長していく。“一か八か”的攻めのゴルフをしていく彼も、弱気になると急にダメになっていく。そんな中、仲間や友達の希望の星となり、逃げられなくなることで心も少しずつ強くなり、ついに…。結果は単なるハッピーエンドというわけではないのだが、自分を貫いたゴルフをやっていく。この作品は少し自虐的になっている人達に見て欲しい1本。才能はあってもメンタルが弱く、何かのせいにしてしまうことは誰でも簡単に出来る。でも成長はそこで止まってしまう。挑戦していくことは、年齢に関係なく、いつでも出来ることなのである。この作品を見て、挑戦する気持ちを取り戻して欲しい。


■グレイテスト・ゲーム


監督:ビル・パクストン
出演:シャイア・ラブーフ、スティーヴン・ディレイン、ピーター・ファース他
2005年 アメリカ映画

“アメリカとゴルフ”
100年近く前、全米コンテストで優勝した20歳のアマチュアゴルファーと、プレイオフで最後まで戦ったイギリスの名プレイヤーを映画化したゴルフ映画“グレイテスト・ゲーム”
この頃は“紳士のスポーツ”として特殊階級のものとされていたゴルフ。しかしこの米英の2人は庶民であった。
アメリカ人の若者はゴルフ場のそばで生活していたので、キャディで金を稼ぐことからゴルフを知り、イギリスの名プレイヤーは、自分の家が、ゴルフ場を作る敷地内だったので、取り壊されることからゴルフと関わることになった。
最近は身分の差で偏見を持たれるスポーツは無いと思われるが、身分の差で偏見を持つスポーツを果たして“紳士のスポーツ”と呼んでいいのか疑問である。
この作品はカメラアングルがとにかく面白い。ゴルフ中継ではありえない玉を追っていく目線や、カップの下からの目線など撮っている位置が非常に面白い。
ゴルフというスポーツが、何倍も面白くなってくる。
それぞれのスポーツに対して面白い目線というものがあるだろうがそのスポーツをより分かりやすく見える目線にカメラがあることこそ、最大にそのスポーツの面白さを撮れるアングルなのではないだろうか?
そんな当たり前だけど、時々忘れてしまうことを思い出させてくれる作品でもありました。


 HANDBALL
■ダブルスカイ!

監督:田口仁
出演:渡部秀、市井紗耶香、南沢奈央他
2012年 日本映画

“アスリートと闘病生活”
実在のハンドボール選手“宮川大”さんの実話をもとに作られた作品“ダブルスカイ!”ダブルスカイとはアーリーウープの様に空中でボールをパスし、跳んだ選手が足を着く前にシュートを打つことだそうだ。ハンドボール選手だった宮川選手は急性リンパ性白血病となり、過酷な闘病生活を送り克服し、今はハンドボールの審判をやっている。その時実感した血液の大切さ、チームの仲間や後輩が献血をしてくれたことを通し、献血の大切さを訴える作品になっている。赤十字血液センターやTSUTAYAで無料レンタル出来る作品になっている。突然の怪我や病気でアスリート人生を絶たれたり、復活をする為に長い闘病生活を送る人も多い。僕の周りにもそんな選手は常にいる。突然のことで現実を受け入れられない選手もいるが、病気や怪我と向き合って真剣に辛抱強く付き合わない限り、そこから抜け出すことは出来ないのである。その為に必要なものは、周りの人達のサポートである。アスリートの闘病生活のリアルな気持ちがしっかりと描かれている作品である。このように、アスリートが献血の大切さを伝える事は、本当に意味のあることだと思う。この企画を立ち上げた人に大きな拍手を贈りたい。


 HORSERACE
■シービスケット

監督:ゲイリー・ロス
出演:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー他
2003年 アメリカ映画

“不屈の精神とパートナー”
20世紀前半のアメリカの歴史の解説から入り、アメリカの盛栄と不況、そして立ち上がっていく様子が、1頭の競走馬“シービスケット”と騎手通称レッドの人生と照らし合わせ描かれている感動の作品。名馬の息子だったのだが、性格や扱いでダメな馬のレッテルが貼られる。レッドは家族が裕福だったのだが、アメリカ大不況に巻き込まれ、家族から1人巣立ち、競馬の世界に入る。しかしいつも1人孤立していた。そんな時、1人の調教師と1つのファミリーに拾われる。「少しダメなところがあっても殺す必要は無い」調教師のそんなポリシーと馬主ファミリーの温かさでどんどん成長していく1頭の馬と1人の人間。先日鳥羽でディスクドッグのJAPAN CUPの取材をしてきた。犬と人間が心を通わせ、苦楽を共にし、1つの競技に臨んでいる姿を生で見た。馬と騎手の関係もこんな感じなのだろう。動物と共に競技をするスポーツは、人間のエゴだけでは成立しない。“愛”と“共存”の中、練習を重ねていかなくてはならない。信頼を得ないと言う事を聞いてくれない。口先では動物を騙すことも出来ない。本当の意味で心を通わせる必要がある。この作品“シービスケット”も台詞が無いところが多々ある。きっと彼達の気持ちを体感出来るように作られているのであろう。挫折して再び立ち上がる勇気と熱い気持ちを与えてくれる作品です。


 ICEHOCKEY
■飛べないアヒル

監督:スティーブン・ヘレク
出演:エミリオ・エステヴェス、ジョス・アクランド、レーン・スミス他
1992年 アメリカ映画

“フェアプレイと仲間とトラウマ”
フェアで無いのだが勝つことが全てだった弁護士。幼少の頃のコーチが植えつけた思想が彼をそうさせていた。
スタープレイヤーで、アイスホッケーを愛していた少年から、アイスホッケーを奪ったもの。それは1つの敗北でプライドもホッケー自体も怖くさせるコーチの怒り。負けたことを1人の少年に押し付けたことだった。
本来は楽しさを教えるはずのコーチが、1つの才能を消し去ったのだ。
そんな弁護士がひょんなことから弱小アイスホッケーチームの監督をすることになる。最初はいやいややっていたが、勝つことが全てと思っていた彼は、アンフェアなことを子供達に押し付ける。
弱小チームの子供達にもプライドがあった。彼は子供達に教えられ、フェアと仲間を大切にする精神を思い出し、チームをまとめていく。
最近ゲームでスポーツを楽しんだと勘違いしている子供が多い。
ゲームでは技術がついても、本当の楽しさとか友情とか、フェアプレイの精神など生まれやしない。本当に体を動かし、スポーツを一生懸命やるから、身に付くものである。
そんな当たり前のことをこの作品を通して、思い出すことが出来た。
日本でも、同じアイスホッケーの映画で陣内孝則が作った“スマイル”という映画がある。アイスホッケーの子供チームの作品は、どうしてこのような気分になるのだろう。
きっと体当たりや格闘的な激しいプレイだからこそ、ルールを守ったり、味方を体を張って守らないと強いチームになれないから、本当の仲間である必要性があるのだろう。
協調性の無い子供はアイスホッケーチームに入れると、きっと変わるのではないかと思わされた。
“飛べないアヒル”作品の中で、子供達はしっかりと飛んでいる。
子供達の団結を見て、大人は子供達から学ぶことがたくさんあると再認識してほしい。


■ミラクル

監督:ギャヴィン・オコナー
出演:カート・ラッセル、パトリシア・クラークソン、ノア・エメリッヒ他
2004年 アメリカ映画

“政治とスポーツ”
オリンピックやワールドカップは“国対国”の対決だけあって、時々政治や外交を持ち込まれることがある。大会出場のボイコットをしたり、報道などでも時にそんな観点で語られることがある。
レイクプラシッド冬季オリンピックアイスホッケーチームを描いた作品“ミラクル”は、そんな“政治とスポーツ”を描いた作品である。
アイスホッケーソ連チームが15年も王座を守り、NHLのオールスターでさえ勝てなかった時代、1980年の冬季オリンピックで、“強いアメリカを取り戻す為”大学生中心の代表チームに優勝を目指すプロジェクトを発足させる。
オープニングは、強いアメリカのニュースから、ベトナム戦争や大統領の演説などで、不安を持ち始めたアメリカを見せていく。
ソ連のアフガン侵攻などもフューチャーし、練習風景と政治がカットバックされていく。
ソ連との練習試合も“ソ連アフガンから出よ”のようなプラカードが客席にいっぱい立っている。
“個々の能力よりチームプレイ”
ただ勝利に向かってハードなトレーニングをしている代表チームにとって、政治的扱いをされないように、監督やコーチは必死に選手をガードする。
代表選手は“国の代表”であり、国民の期待や夢のためにも戦うのは当然だと思うが“政治”や“他の利権”のために戦うものではない。
ただ試合中の姿や結果で、勇気や希望や自信を持ってもらえればありがたい話だが。
“スポーツの世界”は平和的にルールの中で戦うものである。
国の威信は背負わせても、政治まで背負わせてはいけないのである。
絶対不利と言われた準決勝、ソ連戦に勝利し、その後優勝したアイスホッケーアメリカ代表チームが、アメリカ国民に多くの希望を与えた。
それは、政治的なことでなく、彼ら自身のプレイだけで評価してもらいたい。


■スマイル 聖夜の奇跡

監督:陣内孝則
出演:森山未來、加藤ローサ、田中好子他
2007年 日本映画

“誰かの為に戦う子供達”
北海道の田舎町の小学校教師が、縁もゆかりも無かったアイスホッケーチームの監督になる。そのチームは1勝もしたことのない弱小チーム。
新任教師と弱小小学生アイスホッケーチームの物語を、俳優・陣内孝則が映画化した“スマイル 聖夜の奇跡”
タップダンサーを目指していた新任教師は、彼女との交際を認めてもらう為、彼女の父親に会う。その父は、スケートリンクの会長で、フィギュアスケーターやアイスホッケーの子供達を育てている。そのチームを勝たせたら、交際を認めるということで、チームの監督を引き受ける。
子供達も、母が家出した子、両親を事故で亡くし親戚に引き取られた子、名門チームで落ちこぼれて、それでもホッケーが好きでやめられず弱小チームに入ってきた子…と、それぞれである。
子供達の色々なスポーツの大会を見に行くと、親が子供のミスや負けを怒っている機会を見ることが多い。
この作品では、監督は子供達の特性を見つけ、それを生かしていくことでチームを強くしていく。
子供達も悩みを抱えているし、怒りが子供達の才能を潰してしまうことだってある。大人が子供を怒るシーンが無いからか、この作品は気持ち良く見ることが出来る。
それぞれの子供達が、自信を持って、モチベーションが上がっていく様子が手に取るように分かる。
さらに、チームとして、フィギュアスケートをしていた同じリンクの仲間であり、憧れの女の子が白血病で闘っている姿を、自分達の勝利で応援しようという気持ちがチームを1つにしていく。
「自分の為だけでなく、誰かの為に闘うお前らは強い」という監督の言葉は、チームの精神的な柱になった。
自分の子供のスポーツを見に行っている親は、一度この作品を見て、子供のスポーツと自分との関わり方を考えて欲しいものだ。


 ICESKATE
■アイス・プリンセス

監督:ティム・ファイウェル
出演:ミシェル・トラクテンバーグ、ジョーン・キューザック他
2005年 アメリカ映画

“親の夢、本人の夢”
物理好きの少女がフィギュアスケートに目覚め、夢を追いかけていく“アイス・プリンセス”
教師の母親を持つ女子高生が奨学金をもらい、ハーバード大学のテストとしてレポートをまとめようとしたテーマが、“フィギュアスケートの力学”
元々、家の裏の池に氷がはるとスケートを楽しんでいた女の子だった主人公は、“母親の夢”を“自分の夢”と錯覚していた。
幼なじみとしか会話が出来なかった子が、レポートを書くために通い始めたスケートリンクでスケートに取り組む同校の生徒達と出会う。
自分の理論をスケーター達に教えたことで、彼女達が成功し、友達になっていくことで、彼女はスケートの魅力にとりつかれていく。
ハーバードの面接の時、彼女は“物理”より“スケート”が好きだと気づき、夢に向かって走り始める。
スポーツの中には、お金や時間、時には周囲の協力無しにはトップを目指せないものもある。ウインドサーフィンの高校生プロの板庇雄馬君と話した時は、ギアももちろんお小遣いでは買えないし、ギアを運ぶのも車でないと無理なので、両親の協力を常に仰いでいる。自分のやりたいことも、高校生の頃だと一人で出来ないこともあるのだ。もちろんフィギュアスケートも、スケート靴、衣裳、リンク代など、お金もとてもかかってしまう。
親が子供に自分の夢を押し付けることも問題あると思うし、子供も自分の夢を親に伝え、納得させるくらいの熱意がなかったら、きっとトップに立つ力など持てないだろう。
大会などで親が子供を叱っている姿を時々見る。
「なんであそこで頑張れないんだ!!」
子供達は必死に戦っている。大会で気合を入れずに戦っている子供なんていない。こんな怒り方をしていると、好きなスポーツもいつか嫌いになってしまうだろう。
親の夢のため、子供は頑張っているのではない。子供の夢を親が共に頑張ってあげるべきだと僕は思う。


■俺たちフィギュアスケーター

監督:ウィル・スペック
出演:ウィル・フェレル、ジョン・ヘダー、ウィル・アーネット 他
2007年 アメリカ映画

“氷上のエンターテイメント”
フィギュアスケートはスポーツであり、ショーであり、日本でも男女共に人気のスポーツである。
そのフィギュアをもっと楽しみたいなら、“俺たちフィギュアスケーター”を見るとよいだろう。
ウィル・フェレル、ジョン・ヘダー扮するタイプの違うトップスケーター。その2人が世界大会で暴れ、“男子シングル”としてスケート界から永久追放される。
永久追放されて、やさぐれている2人。スケートでしか生きていけないことを痛感する2人は“男子シングル”でだめなら“ペア”で出場することをたくらむ。
元々、性格も違い、憎みあっていた2人が無理やりペアを組む。
2人で共に生活させられ、お互いのことを知り、共に1つの目標に向かって練習することで少しずつ理解をし合い、1つの作品を作るようになっていく。
浅田真央選手がよく“作品”という言葉を使うが、世界中の人誰もがわかるよう
音に合わせ、エンターテイメントとして芸術を作っている様子は“作品”という言葉以外では表現できないのであろう。
さらに、往年の名選手、スコット・ハミルトン、ブライアン・ボイタノ、ドロシー・ハミルトンなども本人役で出演。ナンシー・ケリガンやサーシャ・コーエンは、脱ぎたてパンツでうっとりするなど、アスリートがここまでやらされているのか?というシーンがある。これを見るだけでも一見の価値あり。
コメディという形でスポーツ映画を見ると、すごくそのスポーツに対して親近感がわき、身近になり、会場に足を運びたい気分になる。
日本でも、女子のやるシンクロを男の子達がやった“ウォーターボーイズ”などを見たことでシンクロを難しいものとして敬遠していた人も、気軽に見に行けるようになったはずだ。
この作品を見た後はきっとフィギュアスケートを身近に感じられるようになることだろう。


 KARATE
  ■ベスト・キッド2

監督:ジョン・G・アヴィルドセン
出演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、タムリン・トミタ他
1986年 アメリカ映画

“間違いだらけの日本”
前作のカラテ大会の終了後、ダニエルが賞賛の中、会場から出てくるところから始まる“ベスト・キッド2” この作品は前作とセットにして2作一気に見ると面白い。ダニエルの師であるミヤギの父が死にそうであるという手紙をもらい、ミヤギとダニエルはミヤギの故郷沖縄にやってくる。ここからがメチャクチャである。多分、アメリカのどこかの島にオープンセットが組まれ、日系のエキストラを使っていると思われるのだが、小さな子供の日本語までも外人風日本語。モンペ姿だし、縁側で靴を履いているし、カタカナはやたらとカメラとテレビ。しかも基地もあり、車が今の日本と同じ車線を走っているということは返還後の設定だと思われるが、ボロボロのアメ車だらけ。こんな日本は見たことが無い。そんなにメチャクチャな間違いだらけの日本を作っているのに、“空手”の精神的世界はきちっと伝えている。僕は、この文章でこの映画を否定しているのではない。それより、“スポーツが持つ精神”をこれほどまでにきちんと伝えようとしていることに驚いているのだ。スポーツは世界に広がっていく。例えば、柔道の教えが世界中に広がっているように…。冒頭でハエを箸でつかもうとするシーンがある。これは宮本武蔵が常に心を穏やかにし、“無の世界”を作った話であるが、日本人でも知らない人は多いはず。しかし、そんなエピソードを映画に取り入れていることを考えると、制作者達が“日本の武道”の精神を大切にしていることが見えてくる。間違いだらけの日本の中で、正しい“空手の精神”を伝えようとしているベスト・キッド2。僕達も日本の武道をもう一度見直すべきだ。


■ベスト・キッド


監督:ジョン・G・アヴィルドセン
出演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、エリザベス・シュー他
1984年 アメリカ映画

“トレーニングとは?”
アメリカの空手映画の決定版と言えば“ベスト・キッド”だろう。
田舎からロスに出てきた一人の少年が、不良と付き合っていて別れた女の子に恋をしたことで、その不良達に目を付けられてしまう。不良達は、空手をしていて、少年はやられてしまう。その時、彼を助けたのが、少年の住むアパートで修理工をしている沖縄生まれの日本人ミヤギだ。
この作品、とにかく日本のとらえ方が変だ。置物とか使っているものなど、ちょっとずつ違っていて面白い。
不良チームのリーダーと空手の試合をすることになり、ミヤギは少年に空手を教えるのだが、ボートの先端に立たせたり、拭き掃除をさせたり、変なことばかりやらせる。
それら全てがトレーニングなのだが、まるで亀田兄弟のトレーニングみたいだ。
ミヤギは少年に空手の道を教える。ただ争うことではなく、心を穏やかにすること、バランスや体を磨きあげることを教える。
完全な男だと思っていたミヤギが、酔っ払って、少年に、奥さんと、生まれなかった子供の悲しい過去を話す。日本人の一人の老人と、若者が本当に心を通わせ、師弟関係を作った瞬間だった。
トレーニングは体だけでなく、心を鍛えることも必要だし、コーチを信頼することが必要である。疑いの中では、成長しないのである。苦しさや悲しさを抱えた二人が、共に歩み、共に上達を目指すことが重要なのである。
ベスト・キッドは、アスリートとコーチの絆の大切さを教えてくれる。
ロッキーのように変なトレーニング法がいっぱい出てくる。
力を抜いて見ると、より楽しめる1本です。


 LACROSSE
  ■ドラッグストア・ガール

監督:本木克英
出演:田中麗奈、柄本明、三宅裕司他
2003年 日本映画

“THIS IS オヤジパワー”
薬学部の女子大生が、二股をかけられていたことを知り、逃げ出し、偶然たどり着いた町の大きなドラッグストアのバイトとなる。このドラッグストアの進出で困る薬屋やパン屋のオヤジ達が団結し、反抗しようとするが、女子大生の可愛さに負け、彼女のやっていたラクロスを自分達もやろうと決意し、チームを作り立ち上がる。こんな急展開のストーリーを描いた“ドラッグストア・ガール” 宮藤官九郎の脚本ということもあり、頑張っている姿が面白おかしく描かれている。ラクロスは女の子のスポーツと思っていた僕も、男子のラクロスの存在を初めてこの映画で知った。プロテクターにヘルメット、コンタクトもすごくあって激しいスポーツである。この作品で思うことは“オヤジパワー”の凄さである。オヤジがスポーツを再び始める時、動機はさまざまである。実際、いろいろなスポーツを始めているオヤジ達も“会社で若い子に年寄り的な目で見られているから”“健康の為”“若い頃、金が無くて出来なかったから”“インストラクターの若い女の子が可愛いから”などなど。しかし、実際やっている人達は本当に楽しそうで、何より元気である。スポーツを通じて新しいコミュニティを作り上げて、1つの目標に向かっている。スポーツをしている“オヤジパワー”。家でゴロゴロしているお父さん、この作品を見て、もう一度スポーツにトライしてみましょう!!


 MARINE
■がんばっていきまっしょい

監督:磯村一路
出演:田中麗奈、清水真実、葵若菜他
1998年 日本映画

“負ける事”
田中麗奈主演の高校生ボート部の奮闘を描いた作品“がんばっていきまっしょい” 四国の田舎の女子高生が瀬戸内で海の上をダイナミックに走るボートを見て女子ボート部を作ることを決意。部員が全然集まらなかったので友達を今年の新人戦までという期間限定で部員にしてスタートした。新人戦の結果は最下位。付き合いでボートをやっていた女の子達も最下位だったことが悔しくて、次の年も頑張ることを決め必死に練習を始める。“負ける事の悔しさ”この感情は真剣に取り組んだり、仲間と共に頑張るから生まれるものだと思う。きっとスクリーンの中の彼女達が真剣にボートと向かい合わなければ、新人戦が終わった時点で終了だったと思う。スポーツを始める時、誰もが真剣なわけではない。「たまたま友達がやっていたから」「少しは健康になりたいから」「女の子にモテそうだから」理由はいろいろ考えられるが、動機は大したことないことがほとんどである。しかし、少しでも上手になりたい、1勝だけでもしたい。この気持ちが生まれてくると、徐々にそのスポーツとの関わり方が変化してくるものだ。何か1つは若い頃に真剣に取り組んで欲しい。きっとそれは自分自身の大きな財産になると思うから…。そんな気持ちを思い返させてくれる作品です。


 MOTOR 
■ワイルド・スピード EURO MISSION

監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ドゥエイン・ジョンソン他
2013年 アメリカ映画

“仲間との絆”
ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカー演じるストリートレーサー達が繰り広げるカスタムカーアクションシリーズ。このシリーズはカスタムカーファン、ドラッグレースやD-1ファンにはおなじみだが、その作品にも共通しているのが、「仲間」を「家族」と呼び、家族を守る大切さ、「仲間との絆」を描いていることだ。この「EURO MISSION」はシリーズ6作目で、今までの作品を見ている人は冒頭から登場人物に感情移入しやすいと思われるが、単独で見ても十分楽しめる1本である。ロンドンをメインとしたカーアクションが中心だが、ストリート・レースも入っている。アメ車のドラッグレース好きには、ダッジのチャージャー、シボレー・カマロ、フォードのムスタングなどの走りがたまらないだろう。D-1好きの人には、日産GT-RフェアレディZ、スバルインプレッサ、三菱ランエボ、マツダRX-7 とドリフトカーのベース車が目白押しだ。もちろん欧州車のスーパーカーファンにも、フェラーリやランボルギーニ、ポルシェなど、とにかくカーマニアの心をくすぐる車がいっぱい登場する。カーショーやレースなどの会場に行くとファミリー的な付き合いをしている人がたくさんいる。この映画もそんなカーマニア達の絆とヒントにしているのではないか?と僕は思っている。同じ物を愛する者同志で仲間が生まれ、その仲間から「ファミリー」が生まれ、「ファミリー」だからこそ絆が生まれる。そんな絆を教えてくれる作品である。



■ワイルド・スピード MEGA MAX


監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ジョーダナ・ブリュースター他
2011年 アメリカ映画

“友情に生きる男達”
僕の好きなシリーズ作品の1つ「ワイルド・スピード」が完結してしまうとは少し悲しい感じもあるが、ラストにふさわしい本当に熱い作品でした。チューンナップカーが好きでアウトローな生き方の登場人物達。個性が強く、何もまとまらないような感じだが、いざ何かやる時は友情という絆で固く結ばれる。しかも、いつも笑いを絶やさず、人生を賭けている。この笑いを絶やさず人生を賭けるという事は、見ていて実に爽快である。人は何かをギリギリでやる時、必死な顔になってしまう。しかし、ジョークを言い合い、リラックスしている彼らはとても「クール」に見える。どんな時でも自分らしく、そして仲間を想うから出来るのだろう。やっている事は正しい事とは言い難いが、それでも応援したくなるのは、そんなにおいが映像を通して伝わってくるからだろう。車の描写については、もちろん言う事無しの作品。本当にやれるのではないか?と思わせるリアルを追求したカーチェイス(このカーチェイスは今までに無い発想だと思う)、車好きのスタッフだからこそ考え付いたド派手なカーチェイスだ。ブルースブラザースのカーチェイスと1、2を争うワクワク感とスピード感。カーチェイス好きなら、きっと納得の行く1本だろう。 


■グラン・プリ


監督:ジョン・フランケンハイマー
出演:ジェームズ・ガーナー、イヴ・モンタン、三船敏郎他
1966年 アメリカ映画

“F1という世界”
'60年代のF1の世界を描いた“グラン・プリ” モータースポーツ界の頂点としてレーサー、メーカー、それらを取り巻く人々をゆったりと時間をかけ映し出している。冒頭のモナコのレースシーンだけでも20分近くあり、分割映像やオンボードカメラ目線など、当時では画期的な手法で表現していて、今のF1TV中継のルーツ的な部分がたくさんあります。三船敏郎が架空の日本自動車メーカーの社長役で出演していて、海外での日本のメーカーの見られ方ってこんな感じなんだなぁと思ってしまいました。モーターレースの最高峰F1の迫力はもちろん、社交界や裏での競争の部分もしっかり描いています。レーサーの考え方、メーカーの考え方、チームの考え方…、いろいろな思いが入り混じり、事故や怪我と戦い、家族や妻そして愛人の助けを借りながら恐怖と向かい合ってレースに臨み、その中の一握りの人間だけが栄光をつかむことが出来る。特に印象に残ったのは、あるドライバーが「もう走りたくない」と自信を失った時、愛人が「皆あなたの車に夢を乗せて一緒に走った気分になるのよ。私もその1人よ。」と言ったシーン。多くの期待と注目、応援の力は決して失望させてはいけない。大きなものを背負って戦うトップアスリートの気持ちが伝わってくる作品です。


■タラデガ・ナイト オーバルの狼


監督:アダム・マッケイ
出演:ウィル・フェレル、サシャ・バロン・コーエン、ジョン・C・ライリー他
2006年 アメリカ映画

“アメリカンモータースポーツの裏側”
アメリカで人気のモータースポーツと言えば“NASCAR”と“ドラッグレース”。アメリカではF1よりも人気がある“NASCAR”。オーバルコースですべて見えてひたすら高速で走る感じがきっと好きなのだろう。ESPN、FOX、ABCと全米の各局がこぞって放送し、アメリカでは最も人気のあるモータースポーツである。そんなNASCARの世界を人気コメディ番組“サタデー・ナイト・ライブ”で有名なコメディアンウィル・フェレルが主演し、ドライバーも数多く出演、NASCAR全面協力のもと描いた作品がこの“タラデガ・ナイト オーバルの狼”である。エルビス・コステロやモス・デブなどのトップアーチストも出演していることでも、アメリカでの人気度が伺える。主演のウィル・フェレルは“俺たちダンクシューター”や“俺たちフィギュアスケーター”など、バカスポーツもので有名なコメディアン。とにかくアメリカ的コメディスポーツ映画とは“コレだ”的作品になっています。ウィル・フェレル演じるリッキーの頂点に行くまでの道程、事故を起こし人気が転落し、そして復活するというアメリカンモータースポーツにアメリカンドリームがあるということをバカバカしい中にもハートフルに描いている。アメリカ人はこのような作品を見て、モータースポーツに夢を感じるのでしょう。映画が“夢”や“希望”を持たせてくれるメディアの1つであることを確信させてくれる作品でした。“NASCAR”“アメリカンスポーツ”大好きな人達には是非見ていただきたい1本です。


■ドリフトヒーロー


監督:小美野昌史
出演:佐藤博樹、神坂美羽、高山猛久他
2010年 日本映画

“日本の現実”
僕の好きな若手俳優高山猛久が出演しているということで見た作品“ドリフトヒーロー” ストーリーとしては、高校生がドリフトに憧れ、免許を取り、すぐにドリフトにチャレンジして、峠でトップドライバーに迫るまでを描いた作品なのだが、この作品は、日本の若者の車離れをリアルに表現している。主人公の同級生は全く車に興味が無く、車を単なる移動手段としてしか考えていない。車を購入する気もないし、免許すら別に必要としていない。電車で十分という今の若者をいたるところに織り込んでいる。昔は高校在学中にも免許を取りに行く人も多かったし、安くてボロボロでもいいから車を買って改造する人も多かった。日本のモーターカルチャーはこの先どうなるのだろうか?サーキットやジムカーナ場、カーショーに行っても、20代30代は本当に少ない。モーターファンの高齢化は確実に始まっている。今、現状で若い人が出てきているモーターシーンと言えば、“痛車”ぐらいだろう。アクティブに行動する人間の必需品だった車。モータースポーツは1つの大人への階段だったはずなのに、今は完全に終わっている。モータースポーツの若者離れの現実を突きつけた“ドリフトヒーロー”。この作品を見て、少しでも車に興味を持つ若者が増えることを望みます。


■トリプルX


監督:ロブ・コーエン
出演:ヴィン・ディーサル、サミュエル・L・ジャクソン他
2002年 アメリカ映画

“X系のエンターテイメント指針”
僕はこの作品を見た時、ものすごい衝撃を受けた。フリースタイルモトクロス、スノーボード、スケートボード、スノーモービル、モータースポーツ的要素がこれほどまでにストーリーと絡み合って中心になっている映画を見たことが無かったからだ。この作品をきっかけに海外のエクストリームがストーリーに入ってくる映画を探してみるようになったのだ。もちろんサーフムービーとかモータースポーツ的映画は好きで見ていたが、ここまでエクストリームスポーツを最大限に引き出している作品は無かった。今回もどのジャンルで紹介していいか分からなかったが、モトクロスのシーンが印象的なので、とりあえずモーターのジャンルにした。これは全てのエクストリームスポーツの面白さを表現し、可能性を提示してくれた指針的な作品である。僕も映画を創る人間として、日本の“トリプルX”を作りたいとずっと思っている。エクストリームスポーツは単なる競技スポーツではなく、エンターテイメントとして、言葉を使わず迫力や面白さを表現出来るものである。その可能性を打ち出してくれた作品である。かつてエンドレスサマーを見た時のようなインパクト。きっと“スポーツ”が持つ表現の幅を広げてくれたからであろう。過去の作品でスポーツの動きを映画のスタントとして取り入れたものは数多くあるが、この作品はそのスポーツのカルチャーや背景までしっかり打ち出している。本当にエクストリームスポーツの面白さを知っている人間が生み出した映画ということがすぐに伝わってくる。X系スポーツのエンターテイメントの指針を打ち出した“トリプルX”一度は見ておくべき作品です。


■スピード・レーサー


監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演:エミール・ハーシュ、クリスティナ・リッチ他
2008年 アメリカ映画

“親子鷹”
ある世代を超えると懐かしいアニメ“マッハGO!GO!GO!” そのアニメの実写化リメイク版がこの“スピード・レーサー”である。モータースポーツの興味を持つきっかけになった作品が“マッハGO!GO!GO!”という人も、今の40代には多いと思われるが、今の子供達にこの“スピード・レーサー”が同じ効果を与えてくれると大変うれしいものである。個人で経営しているカービルダーの父を持つ幸せな家庭。長男はレーサーになり、父の車に乗り、成功を収める。しかし、大手車メーカーの引き抜きに最終的には従い、家を出て行く。そしてレース中、事故で命を落とす。そんな兄の姿を見て育った次男は、父の車にこだわりレースに出たことで、大手メーカーや有名チームに潰されそうになる。しかし、仲間や家族の絆で、苦しみながらもレースに出て、本当のレースとチームの絆を守り抜くという分かりやすい話なのだが、この作品を通して一貫して流れているのが“家族愛”である。子供は父の姿を見て憧れを持ち、人生を知り、自分もその道に進むものである。日本では会社勤めの人が多く、働く父親の姿を見せる機会が少ない。子供は父の仕事への憧れを持つチャンスがなかなか無い。真剣な父の姿を見せることで、“親子鷹”は生まれるのである。ただ子供がやっていることを怒ったりするのでなく、やっている姿を見せることこそ、次につながるのではないか?家族の絆を深めたい家庭で、親子一緒に見て欲しい1本である。


■キャノンボール2


監督:ハル・ニーダム
出演:バート・レイノルズ、ジェッキー・チェン、ディーン・マーチン 他
1983年 アメリカ映画

“車好きなら一度やってみたい事”
“キャノンボール”で公道レースというものを初めて知った人は当時多かったと思う。僕もその1人である。楽しくてバカバカしくて痛快で自由で… とにかく“キャノンボール”の世界はスーパーカー世代の子供達の憧れだった。待ちに待った“キャノンボール2”は、前作で負けたアラブの王子がレースを主催し、キャノンボーラー達が集まるところから始まる。今改めて見ると、ガリ板刷りみたいなチラシで世界中からドライバーが集まってくるとか、ランボルギーニカウンタックに白の塗料を塗って走り、水で落とすと真っ赤に戻るとか、おかしいところがいっぱいあるが、子供の頃は違和感さえ感じていなかった。ロス-ニューヨーク間を交通規制無視、誰が最速かを競うレースである。あるチームは警官に扮したり、軍の上役に扮したり、あの手この手で切り抜けようとする感じも痛快である。ジャッキー・チェンやサミー・デイビス Jr.、シャーリー・マクレーンの若い頃が見られるのも面白い。ジャッキー・チェン参加の映画らしく、エンドロールにNG集が入っている。車好きの仲間が集まり、車の番組の話になると、“キャノンボールやりたいな”という話になる。もちろん無理なのだが(以前、某有名プロデューサーが特番として制作し、その後誰もやっていない)車好きの心の中に生き続ける映画“キャノンボール”は永遠の娯楽車映画の定番としてずっと残っていくことであろう。

 

■ワイルド・レーサー

監督:ミヒャエル・ケウシュ
出演:ルーク・J・ウィルキンス、ニルス・ブルーノ・シュミット 他
2004年 ドイツ映画

“ドイツ式公道レース”
アウトバーンの国、欧州車の中心であるドイツの公道レースムービー。日本は峠を攻めるドリフトが公道レースの中心だが、ドイツはアウトバーンのスピードの世界。アメリカ式“ワイルド・スピード”は市街戦ドラッグ的短距離戦だが、ドイツの公道レースはアウトバーンの長距離戦。ドイツ映画だけあって欧州車が数多く出ている。6気筒のポルシェ911カレラ4S、V8のフェラーリ360モデナ、V12のディアブロ、V8DOHCターボのマセラッティ3200GT、BMW E46など、こんなに高級車、スーパーカーが出てくる公道ものは少ない。アメ車ファンにもムスタングマッハ1やダッジバイパーGTS、クライスラールバロンなど、スポーツカーと呼ばれるアメ車がやたらと出てくる。高級スーパーカー好きにはたまらない作品である。サーキットの狼で育ったスーパーカー世代の車好きが実写の世界で車の走りを見たかったという人ならお涙ものの1本でしょう。本編中、やたらと走りのシーンが多く、メーターまわり、シフトワーク、ハンドルさばきとドライビングテクニックがたっぷり。車の撮影のお手本的撮り方をしている。アメリカの生活に密着した車文化と違って、遠乗りするヨーロッパ独特の車文化から発生したことを感じさせる映画です。


■ワイルド・スピードMAX FAST&FURIOUS

監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・
ブリュースター他
2009年10月9日〜公開

“タイヤのにおいや煙も目に染みる車好きなら誰もが五感で味わえる一本”
“ワイルド・スピード”シリーズは僕も好きなカーシリーズなのだが、ドリフト寄りとかストリート寄りとか、片寄りすぎて自分の車の好みに合わないと、少し苦手な人もいたかもしれない。しかし、今回は、ドリフトカーやマッスルカーはもちろん、SUVのカスタムカーや、ブリブリのローライダーなど、カスタムカー&チューンナップカー好きの全てを満たしてくれるカーラインナップ。スクリーンで見られるカスタムカーショーのような仕上がりになっている。
しかも1作目のヴィン・ディーゼル扮するドミニクと、ポール・ウォーカー扮するブライアンのコンビが復活。3作目のTOKYO DRIFTの最後に少し出ていたけど、この回を見ると納得。
個人的には、1作目2作目をこの作品を見る前にDVDで見て、この作品を見た後に3作目を見ることをおすすめする。
カスタムの面白さ、ドライビングのリアリティ、公道レースのドキドキ感、車を魅せる喜びなど、車好きの全てが詰まったこの作品。車好きなら必ず見るべし!!
ストレートな友情と愛情表現もスピード感あふれていて、ストーリーも突っ走っていて、すごく時間が早く感じ楽しめる一本である。


■DUST TO GLORY(ダスト・トゥ・グローリー)

監督:デイナ・ブラウン
出演:マイク“マウス”マッコイ、ジミー・バッサー、ロビー・ゴードン、ジョニー・
キャンベル、ライアン・アルシエロ他
2005年 アメリカ映画

“砂のチューブの中で”
“DUST TO GLORY”は、あのサーフィン映画“エンドレス・サマー”や“栄光のライダー”を監督したブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンが撮った作品である。
デイナ自身も前作“ステップ・イントゥ・リキッド”でサーフィン映画を撮り、まさに、親子でサーフ・モーターのシーンのバイブル的映画を作っている。
以前来日していたデイナ・ブラウンと会見したことがある。DUST TO GLORYパーティ以来、2度目であった。
サンダンスの映画祭で“ステップ・イントゥ・リキッド”を観たライダー“マウス・マッコイ”が声をかけ、デイナをバハ500を見せに連れて行ったそうだ。バハ1000とは、メキシコの西側にある砂漠だらけのバハ・カリフォルニア半島の1000マイル、つまり1600kmを不眠不休で車やバギー、オートバイで走り抜ける世界で最も過酷と言われるダートレースだ。
数年前、グアムに、Smokin'Wheelsという3時間耐久のダートレースを見に行った。優勝は、おなじみのリック・ジョンソンだった。砂を煙の様に巻き上げ走る。徐々に砂が作り出す波が大きくなっていく。グアムではそのくらいだったが、DUST TO GLORYの世界、バハ1000では、ハワイの波くらい、大きなチューブのように見えていた。サーファーがチューブから出てくるように、カラフルだが汚れまくった車体がチューブの中から顔を出していく。
トップサーファー達に感じるドキドキ感が襲ってくる。カメラ50台と4台のヘリは、そんなレースを追い続けた。
この作品が描き出すパワーとスピードは、このレースに関わるすべてのドライバー、メカニッククルー、大会関係者の情熱を浮かび出させていく。チームメイトとの友情、死人が出ても止まらないレース、親子で参加し、レースの中で感じる親子愛。いくつものドラマがすごいスピードで駆け抜けていく。
特に注目すべき点は、フォーカスワークとカメラの距離感である。2人もしくはクルーといる時、人物の関係性を奥の人物から手前の人物にフォーカスを送っているカットが多々ある。2人の人間関係を表情中心に見せている。
カメラの距離感としては、すごく近いところでピットクルーを見せ、自分もクルーの一員的目線で見せたかと思うと、レースの状況は空撮などの遠い距離から客観的に見せている。このカメラワークの感覚で、よりドラマティックにドライバー達を表現しているのではないだろうか?
普段の日本のスポーツ中継は、事実を抑えているだけのカメラワークだが、DUST TO GLORYは、ドラマチックに、このレースを撮っていく。このカメラワークこそが、単なるレース中継でなく映画作品として感情移入させるように出来ている所以なのではないだろうか?
品川で会ったデイナは、奥さんと共にすごく良い笑顔で出迎えてくれた。スポーツの中にドラマを見つけていく男は、いつも温かい。


■SUPER CROSS(スーパークロス)

監督:スティーブ・ボーヤム
出演:スティーブ・ハウィー、マイク・ボーゲル、タイラー・エバンス、ジェイムズ・
スチュワート、リッキー・カーマイケル、チャド・リード、リック・ジョンソン他
2005年 アメリカ映画

“オイルの匂いと砂煙と”
オフロードバイクが、スタジアムに作られたダートコースの中で、セクションを超えトリックしていく“SUPER CROSS”
BMXのダートと比べても、高さも距離も格段に違うし、以前日本で“SUPER CROSS”が開催された時も、度肝を抜かされた。
ワンメイクのイベントは日本でも多々開催されている。例えば、お台場で開催されている“Multi Plex”は毎年恒例のものとなっている。
この映画“SUPER CROSS”の魅力は、監督のスティーブ・ボーヤムがエクストリームを愛している人であることだ。
LAでサーフィン、スキー、モトクロスなどライダーとしても活躍し、スタントマンとしても数々の作品に参加している。2001年には「モトクロスにかける夢」を監督し、エクストリーム大好きっぷりを匂わせている。
ライディング、特にスタイル的なことはそのジャンルを知らないと魅せることができないと思うが、この監督はライディングなどもきちっとフォローしているのでMotoXの魅力がしっかり伝わってくる。
さらに、本物の有名ライダーが多数出場していること。チャド・リード、ジェームス・スチュワート、タイラー・エバンスと、今世界のトップライダーからリック・ジョンソンなど往年のレジェンドライダーまで、スターライダーが出まくっている。
ストーリーとしては、兄弟の愛が役者によってきっちり演じられているのでMotoXファンじゃなくても楽しめる。
この作品は、誰もがモトクロスの魅力を感じることができる作りになっている。
では、モトクロスの魅力って何だろう?まずは、巨大なセクションだろう。スケートボードやBMXのストリートセクションの何倍の大きさもあるジャンプ台。
セクションに入っていくスピード、そして高さ。近くにいると、完全に見上げないとエアが見れないほど、すごい高さで飛んでいき、上空でトリックを決められるとアドレナリンが爆発していく。
そしてオイルの匂いと砂煙が五感全てを刺激してくれる。250ccバイクが繰り出す無限のパワーをこの映画を通して感じて欲しい。

 

■世界最速のインディアン

監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ダイアン・ラッド、ポール・ロドリゲス 他
2005年 アメリカ映画

“カスタムの最終型”
2006年12月からMTV JAPANで“JAP STATE”という車とバイクのカスタム番組を制作した。6話完結で7台の車やバイクをカスタムした。その最終回でアメ車界で有名なフォトグラファーが「やればやるほど難しくて楽しい。死ぬまでやりたい。」と、カスタムへの情熱を語っていた。
まさにその最終型ともいえる人物こそ、“世界最速のインディアン”の主人公バート・マンローであろう。
1899年ニュージーランド生まれで1901年に創業したオートバイメーカー“インディアン”をカスタムし尽くし、ユタ州ボンヌビルのソルトフラッツで世界最速を目指すという実話を映画化した作品である。
バート・マンローを「羊たちの沈黙」で博士を演じていたアンソニー・ホプキンスが演じている。
カスタムにはまる人間は究極を追い求める。夢といえば美しく聞こえるが、ただ好きなだけなのであろう。
年老いても好きなことだけをやり続ける男。子供の頃のような瞳でバイクと対峙し続ける。僕にとっては理想の姿である。
怖いイメージしかなかったアンソニー・ホプキンスが、今回は夢を追う優しく純粋な男という意外性。
そして途中からそんなことすら忘れさせてしまうナチュラルな表情。「ニューシネマパラダイス」のおじいさんを思い出させてくれるようなやすらかな表情、温かさに包みながらも信念を貫く強い意志。
モータースポーツやカスタムって本当に単純なことなのかもしれない。
人より速く走りたい、自分だけの1台を作りたい。そんな単純なことだからずっと愛することができるのかもしれない。
きっとバート・マンローはバイクをカスタムしながら、自分自身の心をもより強固なものカスタムし、誰にもハンドルを曲げられない、真っ直ぐに走れる心とバイクを作っていたのであろう。
モータースポーツのスピリッツと人生の価値を教えてくれる実話を元にした作品。カスタム最終型まで行った男だから伝えられる真実の物語である。


■栄光のライダー (ON ANY SUNDAY)

監督:ブルース・ブラウン
出演もしくは声の出演:スティーブ・マックィーン、マート・ロウウィル、マルコム・
スミス他
1971年 アメリカ映画

“DUST TO GLORYのルーツはここに在った”
“joe kid pn a STING-RAY”というBMX映画を見た時、BMXの伝説のライダー達が、BMXを始めたきっかけは“栄光のライダー”を見たからだと言っていたので、レンタルして見ることにした。
監督はブルース・ブラウン。エクストリーム好き、サーフィン好きなら誰もが知っている“エンドレス・サマー”の監督であり、“STEP INTO LIQUID”や“DUST TO GLORY”の監督ディナ・ブラウンの父である。
オープニングバックで子供達が初期のBMXに乗っている。これが彼らの言っていたシーンなんだ。
今から思うと、普通のシーンだが、1970年代初頭には衝撃的であったのだろう。何と言ったって、BMXの存在がほとんど知られていない頃だったから。
さて作品のほうはと言うと、とにかく70年代初頭のバイクレースの全てのカテゴリーを一気に見れる作品。その一言に尽きる。
ダートレース、モトクロスレース、ロードレースだけでなく、山昇りレースやスノーレースまで、ありとあらゆるバイクレースを見ることができる。
ただレースを紹介しているのではなく、スタート時にライダー達の顔をクローズアップにしたり、その人の生活を見せたりすることで、親近感を味あわせてくれる。
以前、彼の息子ディナ・ブラウンと会った時、ちょうどダートレースの“DUST TO GLORY”が日本公開直前だった。その時、彼は“人が面白いから撮り続けているんだ”と言った。すごく印象的な言葉だった。
ただトリックをおしゃれに見せるスポーツビデオはそこら中にあるが、この親子の考え方は、僕的にすごく痛感するところがある。彼らの作品が、ただのスポーツビデオの枠にとらわれない理由はここに在る。
70年代初頭のバイクレースを語りたいなら、是非見るべき1本である。


■ワイルド・スピード

監督:ロブ・コーエン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・
ブリュースター他
2001年 アメリカ映画

“ゼロヨンとチューニングカー”
今や人気シリーズとなった“ワイルド・スピード”シリーズの1作目であるこの作品。まるでOptionビデオ。チューニングファンには満足できる作りになっている。トラックを襲うのにチューンナップしたCivic。タイヤやTOYO TIRE。BLITZがチューンナップをしており、バイナリでカラーリングもグラフィックもばっちりの車が走っている。少し笑えるのは車を襲う時、オークリーのゴーグルをしていること。確かにバイクや車の世界でオークリーのゴーグルはメジャーだが、なんで?しかし、散弾銃でも割れないオークリーだからなぁ…。
ワイルド・スピード1作目はゼロヨン。しかも、ストリートゼロヨン。本当にOptionの企画みたいだ。まず、ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルのドライブテクニックがリアルであること。監督のロブ・コーエンの演出も面白い。CGでエンジンの中まで表現していてNOSの伝わり方も分かりやすい。HKS USAがバックアップしているらしく、店内にはやたらとHKSの商品がディスプレイされている。富士山のふもとのあの会社がハリウッド作品の中心に映っていると思うと、何だか不思議に感じる。Civic、スープラ、RX8などの日本車はもちろん、シボレー、ムスタングなどアメ車好きにも楽しめる。ドラッグ仕様の車とドラテクが楽しめるシーンは、すごくたくさんある。特にトリプルXでエクストリーム好きの人にもおなじみのヴィン・ディーゼルの演技はリアリティ十分。
ストーリーは、友情の大切さを教えてくれる。ハンドルを握る者同志さからわかること。しかもストリートを生き抜く友達。カスタム、チューニング、ストリート好きなら誰もが楽しめる作品。特に“ワイルド・スピード2”を見るなら、その前に見ておくと楽しさも倍増するはずだ。 


■ワイルド・スピード×2

監督:ジョン・シングルトン
出演:ポール・ウォーカー、リュダクリス、タイリース・ギブソン、エヴァ・メンデス、
デヴォン青木他
2003年 アメリカ映画

“ストリートチューニングカーの世界”
1作目のゼロヨンの次は公道ストリートレース。もちろんゼロヨンも公道レースだが、直線一発でなく街を使ったチューニングカーのストリートバトル。まさにこれもOptionの企画そのもの。出てくる車もHONDA S2000、三菱ランエボZ、エクリプス・スパイダー、SUBARU WRX… とにかくまさにOptionの世界。
前作と大きく変わったのは監督がジョン・シングルトンになり、並走カットがやたらと多くなったこと。並走で撮るということは、役者自身がカーアクションをこなさなくてはいけないということ。なんとデヴォン青木は免許も持っていなければ車を運転したことももちろん無く、ドライビングリハーサルに入ったそうだ。三菱のドライビングチームがレッスンをつけ、撮影前にはドリフトもこなせるようになったらしい。
アメリカでは日本のチューニングカーがブームである。D1もラスベガスなどで展開するようになったし、HKS USAなどの商品も売れているらしい。キャノンボールなどが好きなアメリカ人にとってストリートチューニングカーの世界は嫌いなはずがない。
内容的には、昔の友人とタッグを組んで潜入捜査をするというストーリーだが、ストレートでわかりやすい。ドライビングシーンもとにかく多くて、チューニング好きにはたまらない1本である。


■ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT

監督:ジャスティン・リン
出演:ルーカス・ブラック、ナタリー・ケリー、BOW WOW、北川景子他
2006年 アメリカ映画

“日本発ハリウッド逆輸入型レッドゾーンムービー”
最近また再加熱しつつあるドリフト&チューンナップシーン。2007年の東京オートサロンはなんと3日で24万人も集めた。D-1も世界進出を着実に始めている。そして忘れてならないのが、この文化が日本発のモータースポーツであるということだ。F-1もル・マンもバハもパリダカも、いろいろなモータースポーツはアメリカとヨーロッパの手によって作られた。
このドリフトというか、公道ものの根底は、HKSやBLITZなどのパーツメーカーやEVO、シルビア、RXなど国産車メーカー、Optionなどの雑誌がずっと支え続けた文化だ。ドリフトキング通称ドリキンの名を持つ土屋圭一などのドライバーや、ノブ谷口、ORIDO学などの現役ドライバー、さらにD-1のノムケンやシャークなどのレーサーが育ててきた。
以前、カスタムカー番組内でEVO[をカスタムしたのだが、マシンの性能を上げていくのも楽しいし、作ってしまえばスピードを求め走らせたくなってしまう。スピードへの興味は誰の本能の中にもある1つの要素なのではないだろうか?
“ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT”のみどころは、普段僕たちが見慣れている街中が舞台であるということ。
渋谷のスクランブル交差点、明治通り、首都高、道玄坂、新宿の大ガード。いつも見慣れた風景をチューンナップカーが走り抜けていく。実はハリウッドに再現されたセットが大部分らしいが、それを聞くと、ハリウッド映画のスケールをリアルに感じてしまう。
しかも、カーアクションはドリキン土屋氏がアドバイザーをやっているだけあってスリリングでエキサイティング。
こういう時、作りものの絶対ありえない事が(ex ジェット噴射で飛ぶとか)が起こると冷めてしまうが、モーターファンががっかりすることのない作りになっている。
でも少しがっかりなのは、まだ日本の文化ってアメリカに伝わっていないのか…と思うところ(主人公の学校での教師役柴田理恵とのやりとりなど)
でもストーリーは直球で、誰もが楽しめ、モーターファンなら納得のカーアクションは保障できる1本。
日本発のモーターカルチャーは見ておくべきであろう。


■DAYS OF THUNDER

監督:トニー・スコット
出演:トム・クルーズ、ロバート・デュバル、ランディ・クエイド、ニコール・キッドマン他  1990年 アメリカ映画

“アメリカのレーススピリッツを堪能”
オープニングからノースカロライナのデイトナ500のレース会場。フラッグ、コース、ピット…レースの匂いがそのまま伝わってくる感じがする。主役コールを演じているのは若き頃のトム・クルーズ。コールがレースに入ってくるきっかけが、ESPNのテレビで見たレースという台詞があるが、やはりESPNはアメリカのスポーツではメジャーな放送局なんだと改めて思い知らされた。余談だが、アメフト映画の「エージェント」これもまたトム・クルーズ主演だが、この作品ではESPNの社内までが映画の舞台になっている。
アメリカのレースらしく、オーバルコースのぶつかり合いのある迫力あるシーンもたっぷりだし、車を作っているビルダーのシーンもあるので、車ファンも十分楽しめる作りになっている。どのスポーツでもそうであろうが、“恐怖”という壁が自分の実力を縮ませることがある。リーフに突っ込んだサーファーがビックウェーブに乗るのを恐れたり、ダイビングキャッチで腕を折った野手が球を追いかけられなくなったり… この作品の中でもクラッシュを抜ける時に事故ったコールが、同じような場面でアクセルを踏めない様子を描いている。“恐怖”という壁は全てのアスリートにとって、とてつもなく大きくのしかかってくるものなのだ。その壁を乗り越えるには、選手自身の勇気、同じスポーツをしている仲間、チームメイトや友人、恋人の力などいろいろなものが必要だとこの作品は教えてくれる。
レーススピリッツ、それはスピードに対する欲求と勇気。だからこそ、僕達はモータースポーツに恋してしまうのである。車はただの機械ではない。なぜならドライバーやチームのスピリッツがそこにこめられているから。アメリカのレーススピリッツを堪能したいなら、“DAYS OF THUNDER”を見るべきである。


■60セカンズ

監督:ドミニク・セナ
出演:ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビージ 他
2000年 アメリカ映画

“車オタク必見のオタクムービー”
モータースポーツというジャンルで扱って良いか悪いか分からないが、車好きならきっと楽しめる作品であろう。
ニコラス・ケイジ主演、車泥棒のストーリー“60セカンズ” オープニングから子供達のダートカートのシーンで始まる。ニコラス・ケイジ扮するメンフィスのモータースポーツや車に対する愛情を感じさせられる。このメンフィス、大の車好きであり、車オタクである。車種などに詳しいだけでなく、メカニックも完璧。その究極の形が車泥棒だというわけである。マフラーの音を聞いて車種を当てるのはもちろん、日頃の仲間とのトークも“超人ハルクに出てくる車はフォードだ”とか、「刑事コロンボ」に登場する車についてなど、車オタクらしいトークを展開していく。車好きならだれもがしているトークで共感が持てることだろう。
車もとにかくあらゆる名車がスクリーンを走り抜ける。アメ車、ヨーロッパ車、何でもあり。
’67ムスタングGT500、’83キャデラックのエルドラード、’39のフォード、フェラーリやメルセデス、ともかく50台の車を盗むというストーリーだけあって50台の名車が出てくる。しかも、しっかり走っているシーンが見られるのも素晴らしい。笑えるのは、車を使ったエロトークの見本もばっちりあるところ。“なめらかにギアを入れて”とか“俺の股間の4気筒”とか、車好きが使えるトークネタまである。
新車好き、カスタムカー好き、そしてニトロを積んだドラッグカーみたいなレース好き、全ての車好きが楽しめる作品である。車を愛する人の作品である。モータースポーツのスピリットとは少し違うが、ぜひ車好きには見て頂きたい1本である。


 PERFORMANCE
■YAMAKASI ヤマカシ

監督:アリエル・ゼイトゥン
出演:チョウ・ベル・ディン、ウイリアムス・ベル、マリク・ディウフ他
2001年 フランス映画

“フリーランニングを世界に知らせた作品”
走る、跳ぶ、登るなど体1つでランニングをパフォーマンスにする“フリーランニング”発祥の地フランスでは“パルクール”と呼んでいるらしいが、その存在を世界中に伝えた作品がこの“YAMAKASI”である。B-BOYの存在を“フラッシュダンス”や“WILD STYLE”が世界中に知らしめたように、新しいスポーツが1本の映画で世界中に広まることがある。元々、アフリカの大地で行われていたものを、フランスの体育教授がトレーニング法として確立した。今では“Art of Motion”など世界中で大会も開催されている。YAMAKASIは本当に存在しているグループで“Taxi2”などにも出演し、そのパフォーマンス性も買われて作品となった。作品の内容としては、体の弱い1人の少年が“YAMAKASI”ごっこで木から落ち、心臓移植をしなくてはいけないことから始まる。その少年を救う為に移植を決める談合の世界の医者達から金を奪い助けるというストレートなストーリーなのだが、彼らのパフォーマンスだけであっという間にエンドロールになってしまう。フリーランニングの魅力を最大限に引き出している映画だと思う。さらに、権力に立ち向かい弱者を救うという世界中の誰もがすぐに分かるストーリーも良かったのだろう。1本の映画を通してニュースポーツが世界に伝わるのは本当に素晴らしいことだと思う。エンターテイメントアスリートの方法論の1つである。ただのライディングビデオでは巻き込めないパワーがここに在る。魅せたいアスリート達は、この作品を見てスポーツ映画が持つパワーを感じてほしい。


■STEALING BESS


監督:ルーク・クレスウェル、スティーブ・マクニコラス
出演:キップ・パルデュー、ローズ・マクゴワン、リー・エヴァンス 他
2002年 アメリカ映画

“This is Performance!!”
STOMPの制作者が、STOMPのメンバーを使ってストーリーの中でパフォーマンスを見せていく実験的作品である“STEALING BESS”日本語タイトルは“STOMPの愛しの掃除機”
FUNS FUNS WORLDのパフォーマンスが目指しているところは、まさに“STOMP”の世界観である。アスリートとしての肉体から作り出す極限の技+エンターテイメント。特に言葉を使わず、日常にあるものを使ってリズムやステージを作っていく彼らは世界中どこでも楽しんでもらえるパフォーマンスだ。しかもそれぞれがエクストリームマーシャルアーツ的動きやフリーランニング的要素もトップアスリートランクで、エンターテイメントと完全に融合している。こんなパフォーマーを日本で創りたいと思う。日本でもアイデアの部分はWAHAHA本舗の“3GAGA HEADS”がこの発想に近いオリジナリティあふれるものをやっていて、09年の世界3大コメディフェスティバルの1つ“fringe”でオリジナリティを競う賞にノミネートされた。彼らのパフォーマンスにXsportsのライダーをMIXしたらきっと日本流の“STOMP”が創れるはずなのに…。この作品のストーリーは、はっきり言ってすごいストレートで分かりやすいつくり。きっとパフォーマンスを見せたいがためにストーリーを作ったんだと思うのですが、1つ1つシーンの中で細かくパフォーマンスをしているのでじっくり見ることをオススメします。“This is Performance”と呼んでもいいくらい、これぞ、パフォーマンスの面白さという部分が、随所に散りばめられた作品です。


■MAN ON WIRE

監督:ジェームズ・マーシュ
出演:フィリップ・プティ、ジャン・ルイ・ブロンデュー、アニー・アリックス他
2008年 イギリス映画

“犯罪?芸術?エクストリームに挑戦する人達に問いかける問題作”
Red Bullアスリートに高層ビルや橋などから飛び降りるアスリートがいる。
今回の作品の主演、フィリップ・プティは綱渡り師である。許可無しでパリのノートルダム大聖堂やオーストラリアのハーバー・ブリッジなどにロープを張って渡り、パフォーマンスをしていた。
この作品は1974年8月7日にニューヨークのワールド・トレード・センター、ツインタワーの間にロープを張り、渡ってしまった時のことを追ったもの。年老いたフィリップや当時の仲間達が思い出を語り、当時のフィルムと再現で、計画から、ビルに忍び込み成功するまでをドキュメンタリーとして表現した作品である。
彼の思い入れや夢、情熱、恋人や友人の協力、仲間の裏切り…ストーリーとしては実にワクワクするものであった。“DOG TOWN&G BOYZ”でも高級な家のプールに忍び込み、水を抜いてスケートボードをするシーンがあったが、あれを見た時の感情と同じものが襲ってきた。ある人から見れば、凄い究極のパフォーマンスであり、夢を与え、不可能を可能にし、想像力や冒険心をかきたてられること。
しかし違った見方をすれば、住居不法侵入であり、命綱もつけていないので仲間達は自殺の共犯者であり、もし落ちたら自分が死ぬだけでなく、他人を巻き込んでしまうことにもなる。これは究極の二択なのかもしれない。
音楽、映像、ストーリーの素晴らしさの中に、エクストリームスポーツをしている人なら一度は悩まなくてはならない問題が隠されているので、新しいことを始めようと思っている人は、一度この作品を見て、自分のやっていることを、立ち止まり考えてみてほしい。どちらの考え方も正しいと思う。でも信念をもって貫いて欲しい。そんな力をこの作品は与えてくれるはずだ。


 ROLLERSKATE
■ローラーガールズ・ダイアリー

監督・製作・出演:ドリュー・バリモア
出演:エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、クリスティーン・ウィグ、
ジュリエット・ルイス 他
2009年 アメリカ映画

“様々な愛情に包まれたローラーガール”
“ローラーゲーム”
この言葉の響きは僕達の世代にとって、なんだか懐かしい香りのする言葉だ。
子供の頃に見たアメリカンなスポーツで、パワーとスピード、ファッションは憧れの的で、誰もが親にローラースケートをねだり、“東京ボンバーズ”ごっこをしたものである。
僕の友人に元ボンバーズの選手がいて、日本でも“ローラーゲーム”の復活に向けて動いている話やアメリカの女子リーグの話を耳にしていた。この作品は、そんなアメリカ女子リーグのLAのチーム“ロサンゼルス・ダービー・ドールズ”のマギー・メイヘムことショウナ・クロスが自身の経験をベースに原作を書き、“チャーリーズ・エンジェル”で有名なドリュー・バリモアが監督したローラーゲームの映画である。女優達がトレーニングをし、一切吹替え無しでやっているリアリティや、劇中のコーチの説明の中で“ゲーム”や“ルール”を何気なく理解させていく作りはスポーツムービーとして立派だと思った。
家族、友人、チームなど色々な愛情が全編を包みつつ、ローラーゲームのスピード感、激しさ、ファッション性、音楽が刺さってくる作品だ。
若いアスリート達は自分の目標に没頭して、周りの友人や家族やチームや仲間の気持ちを忘れがちになる。
この作品は、そんな“ピュア”な気持ちを思い出させてくれつつ、ローラーゲームの面白さをたっぷり詰め込んだ、青春アクションスポーツムービーである。


■ロール・バウンス

監督:マルコム・D・リー
出演:バウ・ワウ、ニック・キャノン、シャイ・マクブライド 他
2005年 アメリカ映画

“ローラーダンスはスポーツとダンスの融合”
ローラースケートでダンスを踊るというと、“光GENJI”を思い出す人が多いのではないだろうか?本当はすごくアグレッシブで昔のソウルステップなども取り入れた格好良いものなんだけどな…。映像が無いから伝えられないな…と思っていたところ、発見しちゃいました。それがこの作品“ロール・バウンス”。
あの4ウィールのローラースケートでトリックやステップを活かし、DJのサウンドで巧みに踊るのである。まさにアメリカンなカルチャーである。少し古い感じもあるけど、ソウル、R&B、ディスコ好きにはたまらないカルチャーである。マービンゲイ、ビージーズなどのサウンドも楽しませてくれる。
貧乏な地区の友人達が組んだチームが、金持ちの地域のローラーリンクに乗り込むのだが、バカにされてしまい、自分達の誇りのために練習を重ね、挑んでいくという単純な明快なストーリー。主人公は、母を失い父親と妹の3人暮らし。父は家事を手伝ってほしいので彼に門限などを与えるが、コンテストの前、息子が頑張る姿を見て良き協力者となっていく。
70年代後半のアメリカのカルチャーがダイレクトに伝わってくる映画である。“ローラーゲーム”と“ローラーダンス”という2つのローラースケートカルチャーは、70年代後半の頃、僕にとってはまさにアメリカンカルチャーの代名詞だった。子供達誰もが親にローラースケートをねだっていたあの時代。古き良きアメリカを感じるにはまさにぴったりの1本。さらに、ブレイクダンス的動きもあって、ルーツを見るにはもってこいの作品である。


 RUGBY
■インビクタス/負けざる者たち

監督:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン他
2009年 アメリカ映画

“1つの国、1つのチーム”
1995年ラグビーワールドカップ南アフリカチームと人種解放、そして大統領となったネルソン・マンデラ氏の2つの目線で描いた“インビクタス/負けざる者たち”
当時、人種差別の国として世界に注目されていた国を、ラグビーのワールドカップを開催することで黒人と白人の壁を取り壊そうとしたマンデラ氏。
白人選手達に、黒人の貧しい土地を訪れ、交流させたり、大統領自身も交流を持つことによって、黒人と白人が一体化する“シンボル”として、ラグビーが平和的な道具として使われた。
“何か南アフリカが世界に自慢できるものを!”
選手達の背中に大きなプレッシャーが襲って来たに違いない。紳士であり、戦士であるラガーマンだからこそ、この重荷に耐え、優勝につながったのだろう。
この作品は、2010年、南アフリカで開催されたサッカーワールドカップの日本チームの状況と、僕の中では、リンクしてしまった。
政治や経済不安の日本で、彼らがベスト16に行ったことは、多くの日本国民に勇気や希望を与え、国民を1つにした。
残念なことに、政治的向上は、すぐに見られなかったが…。
スポーツは、国や民族を1つにする力を持っている。
マンデラ氏が訴えた“1つの国、1つのチーム”
ラガーマン達がプレイする姿で、人種を超え、国民すべてが喜び、1つになれた。
警察や軍が押さえ込んだり、武器を持って平和を目指しても、このような結果にはならなかっただろう。
スポーツは平和的に国を1つにする力を持っている。
アスリート達の仕事とは、すごく重要な仕事だと思う。夢や希望を与える使命を持たされているのだから。


■スクール・ウォーズ/HERO

監督:関本郁夫
出演:照英、和久井映見、内田朝陽他
2004年 日本映画

“One For All, All For One”
かつてTVドラマで人気だった“スクール・ウォーズ”が映画化され甦った。
ストーリーは30代以上の人なら知っている人も多いと思われるが、荒廃した学校に新任教師としてやって来た、元日本代表のラガーマンが、不良の生徒達をラグビーで更生させていく話。
112対0で負けたチームが、自分達の悔しさをラグビーにぶつけ、京都代表として花園に行き、全国制覇するのだが、その軌跡を描いている。
部員が白血病になったり、暴力事件に巻き込まれたり、様々な困難に立ち向かいながら、“One For All, All For One”のラグビー精神を養い、チームとしてまとまっていく様子が手に取るようにわかる。
オープニングは、ニュージーランド“オールブラックス”の試合前に行なう気合入れから始まる。
不良達が集まるラグビー部に、体当たりしていく先生。負け試合で、自分達の弱さに気づいた生徒達。きっと点の負けより、心や、今までの不良生活でラグビーと真剣に向かい合っていなかった弱さに気づかされたことが悔しかったのだろう。
先生の「元日本代表という目で彼らを見下していたのかもしれない。同じ目線に立つことが大切なんだ」という言葉は、僕の心にすごく響いた。
若い人達と何かをする時、つい経験に頼り、押し付けてしまっていることもあるが、それでは本当にチームとして一体化出来ない。僕自身も反省しなくてはいけないと思った。
“一人は皆のために、チームは一人のために”
穴があったらフォローし、1つのボールを守るため、皆でスクラムを押しゴールを目指す。
“ルールのある喧嘩”みたいな時間も、ノーサイドの笛が鳴れば、お互いの健闘をたたえる。
“男の精神”“ラグビー魂”を通して、自分は必要とされていることを知った彼らは、今も立派に人生を送っている。
ストーリーを知らない若者に、一度は見ておいてもらいたい作品である。


 SNOW
■国家代表!?

監督:キム・ヨンファ
出演:ハ・ジョンウ、ソン・ドンイル、キム・ドンウク他
2009年 韓国映画

“韓国とスポーツ”
実在する韓国代表スキージャンプのチームをデフォルメして映画化した“国家代表!?” 韓国は日本よりオリンピックなどトップスポーツにかける予算が数倍あり、トップアスリート達は国家の為に世界で戦う国の名誉と象徴とされている。兵役の免除やマンションなどをオリンピックや世界的なスポーツの大会の優秀者に与えられる。スポーツに自信のある若者は、ナショナルチームに入り結果を残すということに対しての意識はすごく高いのである。この作品に登場する人物達は実在するのだが、おばあさんの世話をする為に兵役を逃れたい者や、アメリカに養子として行った子供が大人になり帰化してまで母を探す者など、ただスポーツに勝ちたいと言うより、人生を賭けてスポーツをしている若者達である。日本のアスリート達にハングリー精神が少なくなってきていると語る大人達はたくさんいる。もちろん彼達なりに頑張っていると思うが、人生を賭けてまでやっている人は少ないのかもしれない。戦後“強い日本”をアピールする1つの例としてスポーツが見られていた頃と違って、個々のメンタルが弱くなったかもしれないけれど、エンターテイメント的要素など、新たなモチベーションが若者の中に生まれてきていることもまた事実である。国の代表になるということは何か?僕も日本代表や日本代表を目指すアスリートと数多く接しているが、韓国などに比べて、国を背負う意識は低いかもしれない。トップアスリート達に、特にマイナースポーツのトップアスリートに一度見て欲しい作品である。

 

■銀色のシーズン


監督:羽住英一郎
出演:瑛太、田中麗奈、玉山鉄二 他
2007年 日本映画

“栄光と挫折と復活”
10代でモーグルの日本代表になった若者が、ケガとリハビリで3年かかり、治っても大会に出ずに遊んでいたのだが、友情や町の人達の思い、そして愛の力でもう一度大会に復活する姿を描いた“銀色のシーズン”。瑛太演じる主人公“銀”はスキー場しか無い町にとっては期待の星だった。ケガをしてからは皆腫れ物を触るみたいに銀と付き合う。その中で、何でも話せる仲間が、モーグルチームについていけずフリースキーに転向した北海道の男と、遊びの中からフリースキーを楽しむ関西人。スタイルだけを楽しみ“フリースキー”をしている3人の生き方は、先が見えていなかった。逃げてばかりの人生ではだめだと再び大会の世界に戻っていくのだが、復活はデビューより大変だと思う。怖さも越え、一度味わった頂点を忘れ逆戻りして一からやる精神的苦痛、周囲の変な期待…。ただがむしゃらにやっていた頃と違って、メンタルな部分での苦労は多いに違いない。その苦痛を乗り越える力とは何だろうか?その答えを、この作品は教えてくれる。壁は誰にでもあるのだろうが、それを越えない限り、次のステップには踏み出せない。一歩前に進む力は、必要になる時が必ず来る。その時、力をもらう為にも、友達や応援してくれる人は必要である。大きな期待はプレッシャーにも自分の力にもなる。どのように“他人の目”をコントロールできるかが、ポイントなのだろう。ファンや応援者の少ない人間は世界のトップにずっと定着していない。世界のトップを走り続ける人は、多くの希望や期待を背負っている。だからトップアスリートに賞賛が与えられるのかもしれない。モーグルという競技、フリースキーの魅力など、スキーの楽しさがたっぷり詰まった作品である。白馬を中心に撮影した作品なのだが、多くのモーグルスキーヤーやフリースキーヤーも参加した作品だと、撮影助手をやっていた吉田さんも言っていた。リアルなスキーの魅力と、前に進む勇気を与えてくれる1本である。

 

■スノーボーダー


監督:オリアス・バルコ
出演:ニコラ・デュヴォシェル、グレゴワール・コラン、ジュリエット・グドー 他
2003年 フランス映画

“コンペティターの光と影”
スノーボードコンペティターとして頂点に君臨してきた男と、その男に憧れていた青年、2人が恋する1人の少女、そしてこの2人の男を育ててきたスキー・スノーボードショップの店長が繰り広げる“愛と青春と犯罪”の物語である。
オープニングから空撮、並走、そしてライディングをしっかり見せる定点のフォローカメラ、さらにはステディカムを使って、きれいな雪山と気持ちの良いフリーライディングが描かれている。
フリーライディングと大会、カルチャーとコンペティション。どちらにも魅力はあるが青年は“勝つためだけのスノーボード”に魅せられてしまう。“大事なのはトロフィーじゃない”“競技より山が好きだ”というスノーボード本来の楽しみを伝え人格を作ってほしい店長と、孤独の中、ただ戦うことでスノーボードと共に生きるカリスマライダー。しかし、コンペティターはいつか衰えていく。替え玉として青年を出し、その間ビックゲームの売り上げを盗もうとするスピーディーな展開は、ストーリーの面白さを感じさせる。
実際ヨーロッパ最大級のスノーボードイベント“NOKIA AIR&STYLE”の会場で、2003年当時のトップライダーを使って撮影しているので、パークライドもフリーライディングも本物を楽しめる。
フランス映画的独特な間と静けさで“静”と“動”が入れ替わっていき、ライディングにも恋の行方にも犯罪ものとしての展開にもドキドキしながら見ることができる。枕の綿から雪に変わったりと、シーンのつなぎがビジュアル的で気持ちよい。
スポーツの王者になると、孤独とおごりと不安がうずまくことも多いのであろうが、そんな心理描写が伝わってくる。特に大会で頂点を目指したい人に一度見てもらいたい作品である。

 

■エバー・フリーダム〜白銀の絆〜(Stolen Good)

監督:ラス・ジェイカス/ナターシャ・サリス
出演:ジェイソン・ウォーダル、ラス・ジェイカス、カーク・ワーナー 他
2002年 アメリカドラマ

“ラス・ジェイカスの想いとスノーボードライフ”
“エバー・フリーダム”は3人の若者スノーボーダーの話である。
監督・製作・脚本・撮影・出演をラス・ジェイカスという1人の人間がやっている。
ストーリーはいたってシンプル。3人の幼馴染がいて、1人はスポンサーもついたプロスノーボーダー。1人は大学に通っているが、ボードはプロ級で学校を休みビデオを作ろうとする。もう1人もボードは上手いが、自由にやりたいと車泥棒で生活をしている。そんな3人が恋に落ちたり、友情を確かめたりする青春ストーリーである。まず、監督でもあり出演もしているラス・ジェイカスが本当にスノーボードが好きで、映画そのもののライフスタイルの人なんだろうなぁと作品を見て感じられる。ライディングシーンはすごく多い。フリーライディング、ハーフパイプ、パークライディング…とフィルムで美しく撮られたライディングが数多く見られる。さらに、生活のシーンはサーフィンやスケートボード、そして車のカスタムとX系好きな人の生活そのものが描かれている。ただ、ストーリーは直接的過ぎて、これならドキュメンタリーで撮っても良かったのでは?と思うが、メンバーの1人が死んだり、その父の会話などはやはりストーリーものではないと撮れないし、これがあることによって一般の人が見やすい作品になったのかもしれない。日本でもドラマとかでこんな作品があったら、スノーボードは広まるかもしれない…と思わされる1本です。


■Solitary Island


出演:中井孝治、國母和宏、鈴木翔太、原田将臣 他
制作:Seven Samurai Entertainment

“侍たちの真の姿を見よ”
トリノのオリンピック選手である中井孝治、國母和宏がハーフパイプでなく、
地元北海道の山を中心にフリーライドしている映像や、彼らの仲間である
“真七人侍”を撮影した“Solitary Island”
オリンピック選手や仲間達の“生”の表情が見られる1本である。
クルーとして動いている彼らは、仲間であり、ライバルであり、アツイライディングを
決め合い、盛り上がっていく。
この作品は、映像も良いが、音楽が特に気持ち良い。最近はHIPHOPだけとか
ロックだけとか、ジャンルやアーチストコラボに偏って、ライディングとミスマッチな
ものが多いが、この作品では、ライダーのキャラクターと音楽がマッチしている。
映画的選曲で、ライディングだけでなく表情や人間にも目がいくように、音楽が
導いてくれる。
札幌在住の仲間達で真のボードジャンキー達“侍”が作り出したジャパンライダー
だけのDVD作品。
日本人ライダーのスタイリッシュなライディングが納められた気持ちの良いDVDで
ある。


■Reflections


出演:楠泰輔、川口徹、遠藤淳平、浦田義哉、太野垣達也 他
Champion Visions/Mighty Jamming Production

“HOTで止まらないフリースキーDVD”
この作品を見た瞬間、何だかわからない不思議な気持ちにさせられた。
それがなぜか、答えは自分の中ですぐにわかった。ノンストップでレゲエMIXの音楽に雪上のカットが続いているからだ。レゲエ=夏とかサーフィンというイメージを植えつけられている僕にとって、この感覚は今まで味わったことの無いものだった。5分もすると慣れてきて、10分もするとすっかりはまってしまった。フリーライディングなんだから表現もフリーだし、ライディングがHOTに見えるし、パウダーが海的なゆったりさを感じ、暖かい室内でのんびりと楽しく見ることができている自分に気づいてしまった。
パウダー、ジブ、エアー、街中…と様々な場所での、それぞれのスタイルでのライディングシーンはオリジナリティも高く、とても楽しめる。
2009年カナダモントリオールで行われたフリースキーの映像コンテスト“IF3”で、ファイナルトップ7に選ばれた映像だけあって、映像そのものも実にスタイリッシュな作品である。ただのDVDとは違う“作品”である。YouTubeなどで手軽に見られる映像と違い、この作品は大きなモニターで見たい1本である。出来ればスクリーンで皆で見たら、気持ちもあがるのではないだろうか?


■bd SNOWBOARD RULERZ


監督:小林充明 スノーボード撮影:澁谷祐仁、MAYUMI
出演:中井孝治、國母和宏、村上大輔、村上史行、JT、笠原啓二郎、吉野満彦、安藤輝彦、ライオ田原 他
配給:ポニーキャニオン 2006年9月30日〜渋谷アミューズCQNにてレイトロードショー

“日本の今のスノーボードシーンを知りたい人に”
日本でもついにスノーボードのドキュメンタリー映画が作られた。出演者は今元気のいいライダー達、中井孝治、國母和宏というトリノオリンピックやワールドカップなどコンペティションで世界と戦うライダー、ライオ田原などX-Trailなどのショースタイルのコンテストで世界と争う男達。
今の日本のトップクラスの大会での真剣勝負や友情をうまく切り取っている。
僕も若い頃、よく雪山でフィルミングをした。戸田友康とグランドトリックツアー、山崎勇亀とワンメイクスポット、マサ竹内などのSNOW BEATというプロジェクトもやったし、マイケル・チャックや金田由貴子とかと山篭りとか、Salomonのコマーシャルをやったりとか…。
スノーボードのフィルミングやサーフ、もちろんBMXなどもそうだが、ライダーとの距離感が非常に重要である。
山の天気は変わりやすいし、その雪山の状態はその一瞬しかないのだから。
もちろん撮影しながらライダーのテンションを上げていく時もあるし、最後の1本と言って撮っていてもどちらかが納得しなければ数十本その後撮る事もある。
大会などはヘッドホンを耳にさされたりするので、仲良くなって信頼がなければ真の姿など見せてくれない。
この作品はライダーとフィルマーの距離が非常に近い。友達であり、撮影対象であるライダーとカメラの距離の近さはスクリーンを通しても伝わってくる。
だからこそ、いろいろな表情が見える。TOYOTA CUPやX-Trail Jamなど時々テレビでスノーボードを扱っているが、その時の表情とは違う。
無邪気で、真剣で、不安で… でもライディングによって自分を表現するライダーの真の姿を映し出している。
今、旬な日本のスノーボーダーの素を見たいなら、是非見るべきであろう。
bdはきっと彼らの通過点に過ぎないのではないか?そしてまた新しい日本のスノーボードシーンを作ってくれるに違いない。


■ファースト・ディセント

監督:ケンプ・カーリー、ケヴィン・ハリソン 撮影:スコット・ダンカン
出演:ショーン・ホワイト、ハンナ・テーター、テリエ・ハーコンセン、ショーン・ファーマー、ニック・ペラタ、トラビス・ライス
配給:東北新社 2006年12月23日〜渋谷シネ・アミューズにてロードショー

“トップライダー達の真実のライディング”
どの世界にもクラッシックスと後に呼ばれる名作がある。例えばサーフィンなら“エンドレス・サマー”、スケートボードなら“ドッグタウン&Gボーイズ”、そしてこの“ファースト・ディセント”はいつの日かスノーボード界のクラッシックスとなる作品に違いない。
トリノオリンピックの男女金メダルコンビである“ショーン・ホワイト”と“ハンナ・テーター”。そして、キング・オブ・スノーボーダー“テリエ・ハーコンセン”。
ウェットスーツにスノーサーフィンの先駆者達の映像も見ることができる。今思うと少々笑ってしまう、ウェットスーツでゲレンデの映像。僕も何度か雑誌に載っていたその写真と分かりにくい映像の記事を読んで、かつてウェットでゲレンデに行った。当時はスキーヤー達がやけにカラフルな蛍光色のピタピタのスキーウェアだった時代で、もちろんスノーボードなど無く、ゲレンデのレストランで変な目で見られたことを覚えている。
もちろんオールドスクールな映像も見ものなのだが、アラスカでのフリーライドがこのストーリーというか、ドキュメントの中心である。上記にも書いたショーン、ハンナ、テリエと、ショーン・ファーマー、そしてアラスカのニック・ペラタの5人が前人未踏の斜面にトライしていく様子だ。
新旧3世代の伝説のライダー達、しかもショーンやハンナはハーフパイプやワンメイク、パークなどの作られたコースでのライディングしかほとんど見たことがなかったので、案の定転んでいるカットが初めは続いていた。
トリノのチャンピオンも自分のフィールドの外ではメタメタにやられている。でも何度も立ち上がり、またドロップインしていく。スピード・スリル、そして、誰もやったことのないこと“究極”まさにエクストリームだ。
初滑走、ファースト・ディセントで彼らが残した足跡は、ただライディングしたというだけでなく、エクストリーム、そしてスノーボードの大きな道である。
スノーボードのクラッシックスになる、この“ファースト・ディセント”を見ないと、今後のスノーボードを語ることができないと言っても過言ではない。


■エックス(EX)

監督:クリスチャン・デュゲイ
出演:デヴォン・サワ、ブリジット・ウィルソン、ルーファス・シーウェル、ヘイノ・ファーチ、ルパート・グレイブス 他
配給:日本ヘラルド映画 2002年 アメリカ映画

“エリートとストリート”
この作品“エックス”をSNOWのカテゴリーのしてみたが、それ以外にも、このタイトルの通り、色々なエクストリームスポーツが登場する。オープニングは、いきなりMTBから始まり、スケートボード、フリースタイルスキー、カヌー、スノーボードなど様々なカテゴリーが入っている。しかも、ライダーのビデオ的な扱いでなく、しっかりストーリーに活かされているところが良い。
ストーリーは、オリンピックの金メダリストのスキーヤーとパンクバンドやスケートをしているストリートにどっぷりつかったスノーボーダーがCM撮影ということで、一緒にオーストラリアの山に入るところから始まる。ストリートの2人が屋根の上からドロップインしたり、電車にひもをつなぎウエイクボードのようにスノーボードで遊んでいる姿を、エリートスキーヤーはさげすんで見ている。しかし、実際に山に入ってみると、その2人のほうがはるかに自分よりうまいことを思い知らされる。トレーニングと大会しか知らない彼女と、自然の中で究極(エクストリーム)を楽しみながら滑る人間の差が描かれている。
もともと、ストリートや自然の中で楽しむということと、体育会的発想でやらされていることには差がある。タイムを競うのと、自分のスタイルを求めることでは、同じことをやっても大きな差が出てくる。やはり、エクストリームは楽しみながら自分を表現するものだと再認識させられる映画である。
さらに、国際的犯罪者をたまたまビデオで撮ってしまったことで、究極具合は加速する。雪崩の中でのライディング、そしてクリフでのラン。ストーリーの中で展開していくので、より楽しむことができる。
ドキュメントも面白いが、エンターテイメントの中でエクストリームが生きているこの作品は、エクストリームの未来を感じさせてくれる。そして、スタイルを追求するこのスポーツが、正しいことなのだという確信も与えてもらえる。より多くの人に、エクストリームの面白さを伝える最大の表現方法がぎっしり詰まっている。
僕が映画を撮る上で本当に参考になる作品です。是非、ライダーの人達にこの作品を見てもらって、自分達のやっていることに自信を持ってもらいたい。エリートより、ストリートが正しいと伝えてくれるこの“エックス”は、エクストリーマー達に勇気を与えてくれる作品である。


■クールボーダー(OUT COLD)

監督:ブレンダン・マロイ、エメット・マロイ
出演:ジェイソン・ロンドン、リー・メジャース、A・J・クック、ライオ田原 他
アメリカ映画

“誰でも楽しめるスノーボードエンターテイメント”
この作品“クールボーダー”はスノーボードを知らなくても楽しめるし、知っているなら有名ボーダーも多数参加しているので更に楽しめる。一言で言うと、下ネタたっぷりのスノーボードコメディである。白熊にフェラチオされたり、ジェットバスの吸入口に大切なところを入れて抜けなくなったり、雪山のゴンドラになぜか水着ダンサーがいて脱いでしまったり…。ともかくエロ笑いたっぷりである。
ストーリーは、自分達のゲレンデがリゾート王に買われそうになりながらも守っていこうとする中で繰り広げられる友情とラブストーリーである。
見どころは、まずカットラインと画が美しいということ。監督はマロイ兄弟。“ブリンク18”や“Foo Fighters”のPVで有名なディレクター。マロイ兄弟はスノーボードはもちろん、スケートボードやサーフィンもよく撮っている監督。まさに僕が好きなタイプの監督。
2つ目は、トップライダーがいっぱい出ていること。主役リックの吹き替えライダーとしてジェイソン・ロンドン。メインのルークの吹き替えにカナダの大スター、スケーター兼ボーダーのロブ“スラゴー”ボイス。その他にもジェイソン・ボーズ、ダラダ・キダスなどが参加している。しかも、吹き替えでなく役として2人の有名ボーダーが参加している。ヒロインの婚約者として、X-GAMESのハーフパイプやスーパーパイプの優勝でも有名なスピンマスター“トッド・リチャーズ”。そしてメインメンバーの友人役である日本一有名なスノーボーダー“ライオ田原”が出演している。ライオは、ベンチで繰り広げられるスノーボード誕生ウソトークや、キングオブマウンテンを決めるシークレットセクションのおいしいところで出てくる。“bd”でも役をやっていたが、こちらの方が数倍しっかりしている。
そして最も楽しめるのは、いろいろな面白いライディングシーンが入っていること。例えば、ジョッキにビールを入れこぼさないようにライディングしていくシーン。このシーンの中では、パウダー、レインボー、エアーなどもガンガンやっているし、グラブも決めてスタイリッシュだ。もちろん、パウダー、屋根からのエアー、ツリーラン、何でもあり。ライオの片足ビンディングを外し、ワンフットでエアーしてくるところなども面白いぞ。とにかく誰もが楽しめる、まさにエンターテイメントだ!


 SOCCER
  ■陽だまりのイレブン

監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
出演:ジーコ、フェリッペ・バヘット・アダオン、ジョースナ・ブロシ他
1998年 ブラジル映画

“スーパースターであること”
日本にも馴染みの深い偉大なるサッカープレイヤー“ジーコ”は子供達をブラジル中からピックアップし、自分のサッカー場で指導する話だが、コピーを作る大企業がジーコのコピーを作ってしまうことで物語は急展開する。陽気で楽しいジーコと真面目で理論派というジーコのもともと持っている性格が分かれてコピーされてしまうのである。この後はドタバタ喜劇的展開なのだが、ブラジル人が制作したものらしく細かい事は何も気にしていない。突っ込みたくなる部分は多々あるのだが、ここでは何も言わないこととしよう。まず、この映画が作られた背景を考えると、ジーコ、そしてブラジルのサッカー選手は国民に愛され、スーパースターであるということ。スポーツというものをここまで国全体で応援し注目しているということが凄いことだと思う。W杯やオリンピックなどの開催に向け、今(2014年)ブラジルは国を挙げて盛り上がっているらしい。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本人は挙国一致で盛り上げることが出来るのだろうか?そんなブラジル人にとってのスポーツに対する価値観やスーパースターアスリートに対する意識を考えさせられる作品であった。内容は、特に何も深く考えず楽しんで下さい。 


■ジェラルド・バトラーin THE GAME OF LIVES


監督:デヴィッド・アンスポー
出演:ジェラルド・バトラー、ウェス・ベントリー他
2004年 アメリカ映画

“W杯アメリカの奇跡”
サッカーで昔のことを描いた映画はヨーロッパの作品が多い。当たり前だがヨーロッパのサッカーは古くからの歴史があり、文化の1つとなっている。野球やアメフトなどアメリカにはアメリカのスポーツがある。古きアメリカのサッカーを描こうとすると、屈辱的歴史を描かなくてはならない。そんなアメリカサッカーの軌跡の第一歩となるアメリカ1950年ワールドカップの奇跡を描いた“THE GAME OF LIVES”アメリカは色々な移民が多い国だったので、イタリア系、ドイツ系などヨーロッパの血をひくものも多かった。セントルイスのイタリア系の若者達にとっては“野球”より“サッカー”が街が注目するスポーツであった。そんな彼達を中心に集められたW杯アメリカ代表チーム。遊びに来ていたイングランドのプロクラブチームにボロ負けするなど、チームとしては寄せ集めの集団に過ぎなかった。アメリカのサッカーなど誰も注目していなく、出場することに意味があるとだけ思われていた。しかしアメリカのサッカーの歴史を創ろうとベストを尽くす事にしたメンバー達。僕が特に注目したのはリオの軍の基地で軍の高官から大統領のメッセージと高官からのユニフォームの授与式のシーンから顔つきが変わる選手達の行動だ。アメリカにとって国の名誉というものの重要性を表現している1シーンなのだが、日本人にとってこんなことってあるのだろうか?“愛国心”というものを根底に生きているアメリカの“スポーツの強さ”を感じさせられた。国の代表としての名誉、この名誉を傷つけない為に頑張る闘争心。W杯でのアメリカの奇跡はそんな気持ちが生み出した勝利なのでしょう。


■勝利への脱出


監督:ジョン・ヒューストン
出演:シルヴェスター・スタローン、マイケル・ケイン他
1980年 アメリカ映画

“スポーツエンターテイメントの真髄”
第2次世界大戦中、ナチスドイツ軍と捕虜の連合軍チームがサッカーの試合を行う。ナチス側は連合軍を倒すことで国力を世界に知らしめることを目的としていたが、連合軍はこの試合で、捕虜になった往年の元サッカー選手を救い出すことにあった。お互いの思惑はありつつも、いざグランドに立つとプレイヤー達は必死に良いプレイをするだけだった。試合直前にスタジアムからの逃亡計画が持ち出される。シルヴェスター・スタローン演じるアメリカ兵のゴールキーパーは収容所から一度脱走し、試合が行われるパリの同志に協力を求めに行く。いよいよキックオフ。結果はここには書けないが、試合はとにかく面白い。何と言ってもスタローンはロッキーの後で捕虜に見えないということで体重を落とし、プロサッカー選手と共にキーパーの練習を積んだ。さらには往年のプレイヤー達が台詞もあって出演している。サッカーの神様“ペレ”はメインのキャストとしてしっかり芝居をしている。オーバーヘッドキック(当時はバイシクルシュートと呼んでいた)も華麗に決めている。その他にはイギリスの名プレイヤー“ボビー・ムーア”やペレの同僚、アメリカのニューヨークコスモスでプレイしていた“ウェルナー・ロス”、アルゼンチンの“オズバルド”、ベルギーの“ボール・バン・アルディレス”、挙げるときりがないがポーランド、ノルウェー、デンマークの代表選手も出演。まさにワールドオールスターが出演。ストーリーも楽しく、サッカーも世界レベル。スポーツエンターテイメントの真髄がこの作品に在る。


■ザ・カップ 夢のアンテナ


監督:ケンツェ・ノルブ
出演:ジャムヤン・ロドゥ、ネテン・チョックリン他
1999年 ブータン/オーストラリア映画

“サッカーは地球人のスポーツ”
僕は人生の中で初めて“ブータン”という国が製作した映画を観た。ブータンの少年僧と愛するサッカーをテレビで見たいという日常を描いた“ザ・カップ夢のアンテナ”という作品です。出演している人達も実際の少年僧達で、ビーチサンダルや裸足でジュースの缶をボールにしてサッカーを楽しんでいる。貧しい国でもあり、戦闘もある国で、僧になり勉強をすることが子供達にとって未来を作る為の道である。大好きなワールドカップを見たい為、皆でお金を出しあってテレビとアンテナを借りてくる。初めてサッカーをテレビで見ている時の子供達のキラキラした目。これこそリアルな表情である。ボールを使ったサッカーシーンはこのTVの中のシーンしか出てこない。ジダンなどのフランスチームとブラジルチーム、ワールドカップの決勝。子供達が自分達で集めて全てのお金を出し、見たいものがコレだ。サッカーというスポーツが世界中に愛されていることが伝わってきた。“サッカーは地球人のスポーツ”そんな言葉がリアルに感じられる映画です。スポーツが世界と地域をつなげることが出来る重要な要因となれることを思い知らされました。スポーツを題材にしたこの映画は、きっと世界中の人が見ても理解出来るでしょうし、“ブータン”という国を伝えることも出来るでしょう。僕もこの作品を観るまではブータンという国を知らなかったのだから…。


■ミーン・マシーン


監督:バリー・スコルニック
出演:ヴィニー・ジョーンズ、ジェイソン・ステイサム他
2001年 アメリカ/イギリス映画

“ヨーロッパとアメリカ”
元イングランド代表のサッカー選手が暴れて刑務所に入り、看守達のチームと囚人チームが戦う姿を描いた作品“ミーン・マシーン” この展開はまさに“ロンゲスト・ヤード”アメリカンフットボールの名作でリメイクまでされている作品である。そのストーリーそのままにイギリスでサッカーに置き換えたものがこの“ミーン・マシーン”である。日本で制作した“Shall we dance?”をアメリカでリチャード・ギアがリメイクするなど、このようなことは時々あるものだが、スポーツのジャンルを替えてリメイクなんて僕は初めて観た。やはりイギリスではアメリカンフットボールでなくサッカーでないと主役がスターに見えず囚人達がうらやむ存在になれなかったということであろう。国によって人気のスポーツはかなり違う。日本でマイナーなスポーツも海外の国ですごくメジャーなものも多々ある。スポーツにおける国民性という部分だけで考えると、アメリカはアメフトや野球、バスケットのように短い区切りで1つ1つの勝負結果がすぐ出るものが好きだと思われる。ドラッグレースのような4、5秒で決まるものなど、すごく盛り上がる。一方ヨーロッパはサッカーなど長い時間が続き、その得点までの過程を楽しんでいるように思える。これだけスポーツに対する見方が違うのにスポーツスターがどん底に落ちて、自分達が人間としてのプライドを持つため、全力で立ち向かうというテーマはまったく一緒である。つまり、スポーツの中に見える精神は世界共通ということを教えてもらった。“ミーン・マシーン”は“ロンゲスト・ヤード”と共に見ると楽しさが何倍にもなります。


■ペナルティ・パパ


監督:ジェシー・ディラン
出演:ウィル・フェレル、ロバート・デュヴァル、ケイト・ウォルシュ他
2005年 アメリカ映画

“教え育てること”
地元サッカーリーグのトップチームの監督を父に持ち、そのチームに所属していた我が子がトレードされ弱小チームに行かされた時、そのチームの監督にされ、同じリーグで自分の父のチームと対戦する日までの、監督と子供達の奮闘ぶりをコメディタッチで描いたサッカー映画“ペナルティ・パパ” 一言で言うと、サッカー版“がんばれ!ベアーズ”のような作品である。ベアーズとの大きな違いは、監督になる父がサッカーも運動も苦手で、スポーツショップをやっていて、勝ちにこだわるスポーツの得意な父への憧れと反抗がパワーになっていることである。一回も勝ったことのないチームが、初めて勝利した時の子供達の笑顔が忘れられず、優勝できるチームにしてあげたいと思った彼は、父と反対に持っていたスポーツを楽しむというポリシーを捨て、父と同じように勝つために手段を選ばなくなっていく。我が子もチームの子供達も少しずつ彼と距離を置くようになっていく。子供達は反乱を起こし、本当に大切なことは何かを伝えようとするというストーリーなのだが、子供達のスポーツチームに教えるということは非常に難しいことである。チャレンジする気持ち、勝利を目指すこと、チームワーク、仲間を大切にすること、ルールを守ること、応援してくれる人達に感謝すること…同時にいろいろなことを教えなくてはいけない。バランスも大事である。勝利の喜び、敗戦から立ち上がる力も持たせなくてはいけない。子供達にスポーツを教えることは、教え育てること、まさに“教育”なのである。そして子供達に教育していると、教えている方も育てられるのである。スポーツと教育の関係を考えさせてくれる1本である。


■GOAL!3 STEP 3 ワールドカップの友情


監督:アンドリュー・モラハン
出演:クノ・ベッカー、レオ・グレゴリー、ニック・モラン他
2009年 ドイツ映画

“アスリートである前に1人の人間であること”
メキシコからアメリカに逃亡し、夢だったプロサッカー選手になるため、ヨーロッパに単身で挑戦するクノ・ベッカー扮するムネスを描いた作品“GOAL!”シリーズの最終作であろう作品“GOAL!3 STEP 3 ワールドカップの友情” “GOAL!”“GOAL!2”までは逆境と苦悩の中の挑戦を見せていたが、“GOAL!3”ははっきり言って前作とはテーマも違うし、つながりが無くても見られる作品である。前作の続きとして見たいという人は少しがっかりしてしまうかもしれない。今作はトップになったサッカー選手がそれより大事なものに気付くというテーマ。ベッカムやルーニーを始め、トップのサッカー選手達がやたらと出てくるので、“ひょっとしたら現実?”と思わされてしまうくらい入り込めるし、ワールドカップが舞台になっているので、世界中のトッププレイヤーのプレイを見ることが出来る。もちろんサッカーのプレイも大事だが、“家族”や“恋人”を捨てるべきではないということをこの作品では教えてくれる。夢に向かって挑戦している人達は、変に熱くなって“家族”“恋人”など本当の応援者を捨ててしまう時がある。その時はそれで良いと思っていても時間が経つとすごく後悔したりするものである。自分の大切な者を守ること、そして共に生きていき、喜びや苦しみを共有し、共に成長すること。トップアスリートも1人の人間である。そんな当たり前のことを教えてくれる作品です。 


■ベルンの奇蹟


監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
出演:ルーイ・クラムロート、ペーター・ローマイヤー他
2003年 ドイツ映画

“国を1つにする力”
1954年、スイスワールドカップを優勝した西ドイツチームと、ドイツの1つの家族を描いた作品“ドイツの奇蹟” 第二次世界大戦で敗戦したドイツ。多くの家族は父を亡くしたり、捕虜となり母と子供達で復興を願い必死に生きていた。そんな時、ソ連から解放された父が戻ってくる。昔のドイツ人らしく厳格な父。自由と未来の為に生きていた子供達。一番下の子は、地元のスター選手でありワールドカップドイツ代表の“ヘルムート・ラーン”と友達で、父のように慕っていた。しかし、父は捕虜や戦争を引きずって生き、厳格に育てようと子供達を叱り、家族は少しずつ崩壊していく。戦後10年も経っていないドイツで、多くの家庭がこんな未来が見えず悩みを多く抱える生活を送っていた。そんな西ドイツに力を与えたのは、ワールドカップで戦う選手達の姿だった。この大会で西ドイツは優勝する。崩壊しかけた家族も、苦しい中戦うサッカーチームのように少しずつコンビネーションが出来、絆を深め、幸せという勝利に向かっていく。サッカーの西ドイツの優勝するまでの軌跡という事実に、ドイツの当時の家族のあり方を上手くシンクロさせて作った本当に優れた作品だと思う。日本も終戦後、オリンピックの選手達の活躍やスポーツでどれだけ勇気付けられたかが、高齢の方と話しているとよく話題になる。サッカーのワールドカップの時、“日本人”が団結し、街の至るところで応援している。スポーツで国を背負い戦う姿は、国民に勇気を与え、国を1つにする力を持つ。このパワーこそ、スポーツの持つミラクルなパワーだ。全ての日本を代表するアスリート達よ!! 君達の頑張りは皆に勇気を与え、団結する力を創ることが出来るのだ!! 頑張れ日本!!


■スコットランド・カップの奇跡


監督:マイケル・コレント
出演:ロバート・デュヴァル、マイケル・キートン他
2000年 アメリカ映画

“スコットランドにおけるサッカー生活”
中村俊介選手が在籍していたことで、日本でもなじみのあるスコットランドリーグ。グリーンと白の横縞の“セルティック”と、“レンジャース”の2チームの激しいトップ争いは、日本人でも知っている人はいるはずです。この作品“スコットランド・カップの奇跡(原題:A SHOT AT GLORY)”は、1部リーグだけでなく、スコットランドの全てのチームが参加するスコットランドカップに参加した2部のチームのことを描いている。監督の娘の夫“ジャッキー”は、セルティックやプレミアリーグで活躍していた名プレイヤー。しかし監督は、娘夫婦の存在を認めず、自分の道を曲げずに生きていた。チームのオーナーは、チーム力を上げつつ、話題性を求め、ジャッキーをトレードで獲得。仲の悪い親子関係だったので、監督はジャッキーを試合に出さないことも多々あった。ファンの人達はジャッキーの得点に期待していたのでブーイングの嵐。同じチームにいることから、2人の問題は街全体の問題になっていく。しかし、スコットランドカップに優勝しないとアイルランドにホームを移転する話が持ち上がり、しぶしぶジャッキーを起用するようになる。プレイの中で、家族の絆も出来ていき、決勝戦へと駒を進める。この結果は作品を見てもらえば分かるのだが、この作品を見て思ったことは、スコットランドなどのイギリスの国々は、サッカーは単なるスポーツでなく、生活そのものであるということ。葬式を地元のサッカー場で行ったり、街を歩いていても選手達に声をかけ、自分達の街の名士として扱っている。日本のサッカーもフランチャイズ化されているが、生活の一部として根付いていない。本当の地元に密着したクラブチームが日本にも誕生したら、もっとスポーツが盛り上がるだろうと思わされた1本でした。


■オフサイド・ガールズ

監督:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ他
2006年 イラン映画

“男と女とサッカーと”
イランのワールドカップ予選を会場で見たい女の子達。しかしイランでは、男性の試合は男性のみ、女性の試合は女性のみしか会場観戦することが出来ない。そんな会場になんとかもぐりこんだのだが、捕まってしまった6人の女の子達。会場すぐ横に拘留されるのだが、会場の歓声はリアルに聞こえてきて余計我慢出来なくなっていく。サッカーが好きで、自国を応援したいのに応援出来ない不満。日本人の女の人達などは観戦しているのに、自分達は出来ない矛盾。家族以外の男女が一緒の場にいることを極端に嫌うイランの風習。まるで幕末の会津藩の武士達と同じようで、“時代遅れ”としか思えないのは、日本という国で生まれ、生活しているからだろうか?それぞれの国に独自の宗教や風習、文化があって、独自の習慣があるのだが、スポーツなどは、国際ルールやそのスポーツの世界的協会があって世界統一のルールでやっているのだから、誰もが見られるようにしないと国際試合というものが成立しないと僕は思う。サッカー映画なのに、ボールを蹴るシーンがまったく無い、面白いアプローチの“サッカー映画”でした。


■ペレを買った男

監督:ポール・クラウダー
2006年 アメリカ=イギリス映画

“アメリカスポーツの真相”
2010年のサッカーワールドカップでも活躍し、MLSというプロリーグもあり、サッカーはアメリカに定着してきている。しかし、今のプロリーグの前に、全米で盛り上がり、そして消滅したリーグがあった。1968年に誕生した“NASL”このリーグのチームの1つ“ニューヨークコスモス”の関係者と当時の映像で綴った作品“ペレを買った男”この男とは、ワーナーグループの社長“スティーブ・ロス”映画・レコード・テレビ局・家庭用TVゲームの会社を経営するロスには、メジャースポーツのチームオーナーになる夢があった。1966年のサッカーワールドカップを見て、“世界で最も有名なスポーツ”サッカーに興味を持ち始めた。チームもリーグもメジャーにするために、ペレやベッケンバウワー、キナーリャなど、当時のスーパースターを買い、アメリカでサッカーをメジャーにした。しかし、経営陣や首脳陣の揉め事で、ニューヨークコスモスは弱くなり、チームはリーグから離脱。人気チームが無くなったことで、リーグも消滅するのである。アメリカのスポーツは、野球やアメフトなど一瞬の注目が繰り返されるスポーツが人気であった。45分間止まることなく、演劇を見るように常に見続け、休憩を挟み、また45分見るなんて、習慣がなかった。メジャーな野球より高い金で入団する選手を見てやろうというミーハーな目線からアメリカのサッカーは始まった。アメリカのスポーツは、金やプロモーション力によって、人気を作り、アメリカ人が好むようルールや見せ方も作ってしまう。アメリカスポーツの真相も見えてくるドキュメンタリー作品である。


■レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏

監督:イヴ・イノン、エリック・カルド、デルフィーヌ・ルエリシー
出演:ハワード・ウェブ、ロベルト・ロセッティ、ミシェル・プラティニ他
2009年 ベルギー映画

“視点が変わると違った試合が見えてくる”
ユーロ2008で笛を吹いた審判達のドキュメンタリー映画“レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏”まず見始めてすぐ違和感を覚えた。サッカーの試合のシーンで音声が審判のインカムの声と、そこからうっすらと聞こえる会場の音。試合を見ていて一度も体験したことのないこの状況。しかも、審判達が試合中に文句を言ったり、悩んだり、答えを求めたり…いろいろな会話が展開されている。“審判は神ではない。人間なんだ”と痛感した。2010年のワールドカップでも審判の誤審はいろいろなメディアで話題になった。誤審でなくても、きわどいジャッジにはクレームが来る。この作品の中でも、非難されたジャッジには、サポーターのインターネットでの批判映像が流出したり、政治家、さらには首相までもが批判してくる。家族や自分の命すらもかけてジャッジしている審判達。試合をテレビで見たり、スタンドで見ていると、いつも毅然としているように見える彼らも勇気を持って、仲間達と共にゲームを裁いていることを知ると、さらにサッカーが面白くなった。“尊敬されることが大事”これがレフェリーの基本だそうだ。人が人を90分裁き続けることの大変さを知ってしまった。スポーツに関わる人達は、選手だけではない。監督、コーチ、トレーナー、協会の人、スタッフ… そしてレフェリー。それぞれが本気で戦っている。この作品は、選手達だけでなく、試合に関わるすべての人達が真剣に戦っているから興奮できるゲームが創れること、そして、目線を変えると、こんなにゲームの見え方が変わることを教えてくれる1本です。


■GOAL!2

監督:ジャウム・コレット=セラ
出演:クノ・ベッカー、スティーブン・ディレイン他
2007年 イギリス=スペイン=ドイツ合作映画

“夢をつかみかけた時”
メキシコからアメリカに不法入国したクノ・ベッカー演じるムネスが、プロサッカー選手になって夢を叶えていくGOAL!シリーズの第2弾“GOAL!2”前作“GOAL!”では、プレミアリーグの名門チーム“ニューカッスル・ユナイテッド”のメンバーになり、GOALするところで終わったのだが、この物語は、そこから始まる。スーパースター軍団である“レアルマドリッド”に移籍するムネス。ジダン、ベッカムらと共にプレイをして、大金や家、車などを手に入れる。しかし、自分を支えてきた彼女をそっちのけにし、スターとして、遊びまくっていた。そんな時、幼き頃、家を出て行った母、そして国外逃亡した後、生まれた弟の存在…そんな自分の変化にムネスは対応出来ず、自分の夢をつかませてくれたエージェントまで解雇してしまう。自分の急激な変化に気づいた時、多くのものを失ったことに気づく。一人だけで戦っている気分になったムネスは、自分がスター気取りで変わったことに気づく。また、サッカーと夢の為に立ち上がったのだ。レアルはアーセナルとチャンピオンリーグ決勝戦に臨むことになる。アンリなどのスター軍団。頂上決勝が始まる。夢をつかみかける時、人はまるで自分一人でやったかのような気分になる時がある。苦しい時の人の助けは、ありがたいと思うが、上手く行っている時はついつい錯覚し、今まで協力してくれた人のことを忘れてしまうことがある。しかし、そんなことでは取り返しのつかないことになってしまうことがある。本来のアスリートの能力すら減少させ、自分のまわりに何も無くなってしまった時に気づいても後の祭りになってしまう。GOAL!2は、夢を手助けしてくれる人達の大切さを教えてくれる。エンドロールに“HIMSELF”という文字がいっぱい出てくる。本物のスタープレイヤーがたくさん出てきて、映画ならではの特別のアングルで見られるのでサッカーファンは必見だ!!


■GOAL!

監督:ダニー・キャノン
出演:クノ・ベッカー、スティーヴン・ディレイン他
2005年 アメリカ=イギリス合作映画

“夢は必要か?不必要か?”
メキシコから不法入国し、ロスで清掃やバイトで生活している若者が、サッカーのプロ選手を夢見て成長していく姿を描いた“GOAL!”GOAL!シリーズの1作目は、クノ・ベッカー演じるムネスが不法入国し10年経ったところから始まる。ロスのクラブチームで試合をしていると、たまたま元イングランドの有名選手に声をかけられる。不法入国者である彼の父は、トラックを買って清掃業で独立することが夢であった。「プロサッカー選手という大きな夢より現実を見よ」という主義で、チャンスをつぶそうとする。ムネスの祖母は私財を売り、イングランドに行くチケットを買ってあげる。夢を追う気持ちを応援してくれたのだ。GOAL!公開の頃、クノ・ベッカーと監督ダニー・キャノンが来日した時、話を聞く機会があった。プレミアリーグのコーチ達にサッカーの基本を学び、撮影に入ったそうだ。監督も大のサッカー好きで、プロデューサー陣もサッカーと深く関わっているそうだ。ジダンやベッカムがちょこっと出演したり、ボールタッチやプレイ1つ1つを丁寧に扱っているし、引きのカットも上手く使って戦術も見ることが出来る、サッカーファンにはたまらない作りになっている。この作品のテーマは、夢は必要か?不必要か?というところにフォーカスを当てているが、その中で重要視されていることは、“自分自身の強さ”という点である。チャンスは与えられても、ちょっとした挫折や言い訳で逃げるようでは夢は叶えられない。そんな人には、夢は不必要である。自分自身に強い気持ちが持てる人のみ、夢が必要なのである。変に夢を語って、多くの協力者を得ても、逃げ出してしまうような人間なら、協力者達が迷惑である。絶対に叶えるんだという信念を持ち努力が出来ないと、夢を持つ資格は無いのである。GOAL!は夢に向かう若者の大切なハートを教えてくれる映画である。


■ホームレス・ワールドカップ

監督:スーザン・コッホ、ジェフ・ウェルナー
ナビゲーター:コリン・ファレル
2008年 アメリカ映画

“伝えることの大切さ”
僕はこの映画を公開するという話を聞いて初めて“ホームレスワールドカップ”の存在を知った。2001年に発案され、2003年に初めて開催された。3年後の2006年には、世界中で2万人以上のホームレスがストリートサッカーチームに所属し、48カ国500人もの選手が出場した。世界中には色々な情況でホームレスになる人達がいる。戦場となったアフガニスタンは、家を焼かれた人が突然ホームレスになったり、ケニアのスラム街で生まれながらのホームレスの人もいる。薬物依存症でホームレスになった人、ソ連が崩壊してロシアになり、都市部で無い人々は職を失い、都市にやってきても住民になれずホームレスになった人。父親の暴力で家を逃げ出し、ホームレスになった人。日本も他人事では済まされない状況である。(日本も2004年から参加している)社会から捨てられたと思っている彼らに必要なことはいろいろある。“自分も人間として必要とされていること”“生きていくことの誇り”“人生を切り開いていく力”サッカーを通し、ワールドカップという国の代表として戦うことで、その力を手に入れていく様子が、このドキュメンタリーから伝わってくる。ドラマではなく、ドキュメンタリーという事実だからこそ、強く訴えかけてくるものがあるのだろう。7人のホームレスを追っているのだが、国も、ホームレスになったきっかけも違う。様々な社会問題も身近に感じさせられた。サッカーという1つのスポーツが、世界の問題を浮き彫りにして、解決している。スポーツというもの、サッカーというものの限りない力や可能性を感じる。2010年、ブラジルのリオで開催されるこの大会に、日本はNPO法人ビックイシューや企業・市民のサポートで、代表チーム“野武士ジャパン”を送り込むそうだ。“1つのスポーツが人生を変える”という姿をまざまざと見せ付けられた。このような力を持つスポーツ映画が、この地球には必要である。すべての人に見てもらいたい作品である。


■天国へのシュート

監督:ヨラム・ルーセン
出演:ヤニック・ファン・デ・フェルデ、トーマス・アクダ、ウェンディ・ヴァン・ディーク 他
2004年 オランダ映画

“親子の“ゴースト”的感動ストーリー”
“熱狂的なサッカーファン”“オレンジ軍団”として世界中に知れ渡っているサッカーオランダ代表チーム。サッカーが好きで、オランダ代表を目指す少年、サッカー好きで少年のコーチ的存在の父、歌が大好きで優しい母、そして妹。オランダではごく普通の家族だった。スカウトが見に来る試合、少年は自分のため、父のため、頑張ったが、父は熱狂するあまり、心臓発作で倒れてしまう。少年は責任を感じる。父はそのままあの世に行ってしまうのだ。父の店は経営がうまく行っていなかったので、税理士が入ってきて母に近づいていく。少年は足に怪我をして、サッカーをするなと言われてしまう。全てを失っていく気がする少年。そんな時、父の亡霊が彼の前に現れる。父はサッカーをコーチし、悩みを聞いてくれる。マンチェスターユナイテッドの飛行機事件で亡くなったメンバーや、かつての死んだ大物サッカー選手と練習したりと、古くからのサッカー好きな人達にはたまらないストーリーになっている。ヨーロッパやアフリカにとって“サッカー”は単なるスポーツではなく、文化として、家庭、学校、生活に根付いていると感じさせられる1本です。“ゴースト”的な展開で、すごくファンタジックなストーリーが進んでいきつつ、子供のスポーツにちょっと熱の入った親には、自分の立ち位置を考えるのに良い作品です。


 SURF
■ブルークラッシュ2

監督:マイク・エリオット
出演:サーシャ・ジャクソン、シャーニ・ヴィンソン他
2011年 アメリカ映画

“現代版 ガールズ・エンドレスサマー”
前作“ブルークラッシュ”ではハワイのローカルガールズサーファーライフを描いていたが、今作の舞台はアフリカ。亡くなった母の日記と写真を元に、母親を知る為にアフリカに渡った1人のサーフガール。そこで多くの友人と出会い、“家族”とは何かを見つけ始める。母親探しの旅は自分探しの旅となっていく。サーフィンを通して出会った仲間や体験は、「自分にとって本当に大切なもの」を気づかせてくれる旅となった。ガールズサーファーの世界的ブランド“ROXY”が全面タイアップしていることもあってサーフギアが可愛い。ツイギーやタジバロー、アンディアイアンなど世界クラスの現役男サーファーやROXYライダー、ローラエネバーなど女子の大物サーファーも出演。吹替えは教えてしまうと、イメージしてしまう人がいると思うのでここでは明記しないが、この2人も大物サーファー。こんなサーファー達が3ヶ月も作品に協力したということだから、サーフ業界の熱の入れ方も分かる。1ヶ月近くサーフィンやスイムなどの練習をして作品に入っていった2人の主人公の女優。テイクオフとか寄りのカットを本人がやっているだけあって、日本のサーフ映画みたいにチープになっていない。(真木蔵人などが出演しているいくつかのサーフ映画は別だが…)リアリティがあるからサーフライフを描いていても嘘は無いし、彼女達の“旅”「オデッセー」がストレートに伝わってくる。この作品はサーフィンをやった事が無い人にも是非見てもらいたい1本です。


■Soul Surfer


監督:ショーン・マクナマラ
出演:アンナソフィア・ロブ、デニス・クエイド、ヘレン・ハント他
2011年 アメリカ映画

“夢を止めない方法”
片腕の人気女性プロサーファー“ベサニー・ハミルトン”の実話を元に制作された“Soul Surfer” 彼女のドキュメンタリーというか、サーフドキュメントを何度も見たことがある。独特なライディングと、満面の笑顔。サメに片腕を食いちぎられ、その後、大会に勝ち、プロサーファーになったことは以前から知っていた。きっと大変だったんだろうなぁ…とは思っていたが、この作品で当時の彼女や家族、仲間の気持ちを知ることが出来て、よりベサニーのことが好きになった。子供の頃から優秀なサーファーで“リップカール”との契約が決まる。この契約は、サッカーで“adidas”や“Nike”との契約するくらい凄いことである。サーフィンでは“リップカール”“Red Bull”“OAKLEY”などのメーカーと契約することは、世界につながる第1歩なのだ。そんな“夢”が少し見え、練習している時、サメに片腕を奪われる。サーフィンはバランススポーツ。片方の腕が無いとバランスは崩すし、両腕でパドル出来ないし、波をくぐって沖に出るのも、ボードを両手でしっかり持てないので困難である。片腕を失ってサーフィンを続ける彼女に興味本位で集まってくるマスコミ。今まで簡単だったことも出来なくなってしまい、不安も大きくなる。なぜ自分だけ、こんなに苦しまなくてはいけないんだろう?少女の不安は最高峰に…。友達、家族そして経験の中で彼女は心がどんどん強くなり、“サーフィンを楽しむ”ことを体で感じていく。この作品を見て、彼女のドキュメンタリー作品やサーフクリップを見ると“あの笑顔”の価値がより大きくなっていくだろう。夢を止めることは簡単だが、人生は止められない。人生を進める為には夢を持たなくてはならない。今壁にぶつかっている人は、この作品から勇気をもらって下さい。


■あの夏、いちばん静かな海。


監督:北野武
出演:真木蔵人、大島弘子、河原さぶ他
1991年 日本映画

“波の音は聞こえなくても…”
北野武監督、真木蔵人主演のサーフィン映画“あの夏、いちばん静かな海。”1991年、湘南でごみ収集で働く1人の耳の聞こえない青年。仕事中に見つけた捨てられていた1本の折れたサーフボードとの出会いが彼の人生を変える。自分で板を直し、海に出る。サーフィンという自分の楽しみや目標が生まれたことで、色々な人と出会い、生活が広がっていく。彼女も耳が聞こえない障害を持っているカップル。いつも2人だけだった空間が、地元のサーファーなどと一緒にいる時間が増えていく。2人の目線(聴線?)で描かれている時は、周りの自然音が無く、久石譲の音楽だけが聞こえてくる。台詞も少ないので、画面をしっかり見ていないとストーリーが分からなくなる。主人公の2人が台詞1つ無いので、表情を見ていないと気持ちも伝わってこない。僕的には、説明台詞と派手なCGで見せられるものよりも、はるかに映画的だと思う。90年代前半のサーフシーンが思い返せるのも楽しい。あの頃の大会の様子や派手なウエット、当時のプロサーファーもいっぱい出てくるので、ある世代から上は懐かしさも加えられて楽しめる作品です。さらに、真木蔵人が今やサーファーとしても有名になっているように、吹替えも無いので、リアルに感じ、違和感なく見ることが出来ます。僕も障害者がスポーツ教室に参加してきた時、少しとまどったことがあります。しかし、一緒にやっていると、言葉が少なくても“1つのスポーツ”が共通点となり、楽しく時間が過ごせることを知りました。もちろん、教えること1つとっても大変なこともありますが、それを超えた時の楽しさは何倍にもなります。“障害者とスポーツ”そんな課題を考える為にも見て欲しい作品です。


■バッシュメント


監督:布川敏和
出演:土屋アンナ、要潤、中山エミリ他
2005年 日本映画

“すれ違いと兄妹の絆”
あのシブがき隊のフッ君こと布川敏和がメガホンをとり、横浜を舞台にサーファーの土屋アンナが演じる妹と要潤演じる兄の悲しい過去をひきづる2人の青春グラフィティ“バッシュメント” 2人をつないでいるのは血と幼い頃サーフィンでドロップした妹を助けに行った兄の姿。子供のくせに兄は、サーフィンは自分に勝ち、勇気を持ってBIG WAVEにトライすることを教えていた。妹は人生をサーフィンと同じよう、いつか来るBIG WAVEの為、強く生きている。設定や考え方としてサーフィンは使われているが、全体としてはギャングアクション映画である。僕はストーリーの中にX系スポーツが道具のように使われることが好きである。サーフィン映画といってライディングだけを見せるのではなく、作り物かもしれないがライフスタイルを提案していることは素晴らしいと思う。特にX系スポーツは大会だけでなくライフスタイルやカルチャーを見せるスポーツでもある。ワクワク感やドキドキ感を与えたり、カルチャーとして格好よいものでなくては、ここまで広がらなかったと思う。ライディングはその人の性格や生き様を映す鏡である。だからこそ自分の生き方に誇りを持ち、信念のあるライダーが強いのである。この作品は、すれ違いがあり、引き離された兄妹のサーファーを描いている。家族がいなくてもサーフィン仲間と共に強く楽しく生きようという妹の姿が、彼女のライディングそのものなのだ。残念なのはそのライディングスタイルが表現できてなかったことなのだが…面白くあっという間に見られる作品でした。

 

■ONE CALIFORNIA DAY


監督:マーク・ジェレミアス、ジェイソン・バッファ
出演:ジョエル・チューダー、クリス・マロイ、アレックス・ノスト、ジョー・カレン、タイラー・ウォレン 他
2007年 アメリカ映画

“サーフィンの伝統と未来”
数人のカリフォルニアのサーファーやシェイパー達の生活とサーフィンへの考え方をショートフィルムにし、それをまとめた作品“ONE CALIFORNIA DAY”
コンペティションのサーフスターでなく、生活の中にサーフィンを取り入れている伝説のサーファー達を取り上げているところが、他のサーフムービーと大きく違うところだ。サーフィンの“魂”を伝えようとしているところなど、現代の“エンドレスサマー”だ。波を分かち合う精神や先人達のサーフの考え方など、サーフィンの魂を記録しているドキュメンタリーである。様々なカリフォルニアの朝を早回ししているシーンから作品はスタートする。プロだけが道でなく、精神をサーフィンに求めるサンディエゴのジョエル・チューダー。ロング、ショートだけでなくスタンダップパドルまでこなし、波との一体化を求めている。ホットロッドとサーフィンを愛するサウスベイのタイラーは、サーフの歴史を常に尊重している。シークレットスポットやサーフトリップで自分達の聖地を追い求めるカウボーイのクリス・マロイ。オレンジカウンティで独自のスタイルを追求するアレックス・ノストやタイラー・ウォレン。それぞれサーフィンとの関わり方は違うが、生活の一部として取り入れている。サーフィンは生き方であり、人生を学ぶ場所なのだ。特に面白かったのは、サーフィンの大会王者トム・カレンの弟“ジョー・カレン”をフューチャーしていること。普通ならトム・カレンをフューチャーするのだろうが、その近くでサーフィンを愛し、生きている男を取り上げることは、サーフィンを勝負の場では無いとする制作者側の強い意志が伺える。波と一体化する楽しさや気持ち良さは多くの偉大な先輩達に支えられている。その大切さを思い出すきっかけを作ってくれる心に響くサーフムービーである。 

 

■Life 天国で君に逢えたら


監督:新城毅彦
出演:大沢たかお、伊東美咲、真矢みき 他
2007年 日本映画

“ウインドサーファーの生き様”
病気で短命だったが、ウインドサーファーなら誰もが知っている飯島夏樹の人生を描いた“Life 天国で君に逢えたら”。世界のすべてのプロスポーツ選手で最も多くのワールドタイトルを持っているのは、ビヨン・ダンカーベックというウインドサーファーである。ビヨンが来日した時、インタビューも含め、色々と話す機会があった。ビヨンはとにかくすごい筋肉でパーフェクトボディを持つ40歳だった。風・波・自分の肉体と、様々な力でスピードやトリックを競うスポーツなので、心技体、すべてが必要である。彼にチャンピオンの条件を聞いたところ、“ウインドサーフィンを楽しみ、大会を好きになり、家族を愛すること。このバランスを常に保つこと”と言っていた。この作品“Life 天国で君に逢えたら”は、ビヨンが言っていたチャンピオンの条件をすべて持っている。世界中の海を周り、ウインドサーフィンを愛し、大会のため練習を続け、妻と4人の子供を大切にし、人生をまっとうした。ガンを宣告された時、すべてを嫌い、バランスも崩れたが、自分の人生を綴ることで、再び“最期の人生”を楽しんで生きることが出来た。この生き方はウインドサーファーだけでなく、多くの人に生きる勇気を与えた。“スポーツ人は常に尊敬されたり、人に勇気や夢を与える人であってほしい”これは僕が本当のトップ選手に常に望んでいることである。もちろん、スランプもあるし、病気やけが、引退などもあるだろうと思うが、極限を求め挑戦し続ける姿を見せる職業のさだめだと思う。この作品は冒頭のシーンやサーフシーンが本当にリアルで、しかもこのアングルで見られるなんて…というカットがたくさんある。飯島選手のストーリーを映画化するということで、ウインドサーフィン界全体がこの作品を支えている。岩崎真を始め脇元、釜口などのウインドサーファー、海外ライダーも多数出演。マニューバラインを始めメーカーも協力。亡くなった後、こんな形で、また、ウインドサーフィンの頂点に立った飯島選手。多くの人に愛され、多くの風や波と一体化し、多くのタイトルを掴んだ男。ウインドサーファーという生き方を教えてくれる1本です。


■イン・ゴッズ・ハンズ


監督:ザルマン・キング
出演:マット・ジョージ、シェーン・ドリアン、マシュー・スティーヴン・リュー 他
1997年 アメリカ映画

“サーフトリップの真髄”
コンペティターという大会で名を挙げる人と、自分のスタイルを追求しライディングするサーフトリップを主としている人達。サーフィンのトップの世界は大きく分けるとこの2つに分けられるが、この作品“イン・ゴッズ・ハンズ”はサーフトリップする男達をストーリー化し、創り上げられた作品である。「波はどこからやってくるのか?」「完璧な波はいつどこに来るのか?」サーフトリップの真髄とも言えるテーマの中、世界中を巡る世代の違う3人のサーファー達。ジェットスキーでビックウェイブに乗ることは“リアル”か“リアルでない”かなど“波とサーフ”という考え方、スタイルの問題提起や、サーフトリップしている人達も練習をし、その頂点として自分のスタイルを打ち出すライディングを目指している様子などを描いている。大会に出ている人がアスリート、サーフトリップの人はカルチャーと分けがちであるが、両者共に、両方を持っていることを描いた“サーフマインド”が伝わってくる。恋があったり、大きな美しい波のライディング、船の上に作ったランプでのスケートシーン、トラブルに巻き込まれてのアクション…と色々なストーリーが次から次へと押し寄せてくるスピード感あふれる作品である。サーフトリップしている人は“自分自身”との戦いをしている感じが手に取るように分かる1本。サーフトリップに興味がある人には是非見てもらいたい作品です。

 

■エンドレス・サマー


監督:ブルース・ブラウン
出演:マイク・ハンソン、ロバート・オーガスト
1964年 アメリカ映画

“僕の今を作ってくれた映画”
僕が初めて見たエクストリームムービーが“エンドレス・サマー”だった。オレンジ色がスクリーンいっぱいに広がり、サーフィンというものを初めて見た。2人の若者が“終わらない夏”を求め、南半球をサーフトリップするというものだった。それまで映画はストーリーものしか見たことが無かった僕にとって、この筋書きの無いストーリーは新鮮だった。しかも、音楽と1人のナレーションで全編進んでいく。ナレーターはこの作品の監督“ブルース・ブラウン”。カメラ・ナレーション・監督を1人でやっていることにも驚いた。僕がスポーツを撮るスタイルは、この“ファーストインパクト”から始まったと言っても過言では無い。ブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンも映画監督で、“STEP INTO LIQUID”などのサーフ映画や“Dust To Groly”というダートレースの映画を撮っている。以前デイナに会った時、“映画だけでなくシーンを作る人”というイメージを受けた。僕の人生に大きな影響を与えたことは間違いない。
ブルースのウィットに富んだ少し“小バカ”にしたナレーションは楽しくサーフカルチャーの魅力を僕に与えてくれた。そして今、僕はサーフィンやエクストリームスポーツを撮り続けている。映画という形にすることで、世界中の多くの人に魅力やカルチャーを与えることが出来る。そう言い切れるのは、この映画“エンドレス・サマー”で僕の人生が変わったから。断言しても良いだろう。
“Xtreme Movie”は言葉が通じなくても、カルチャーが発信できることなのである。久しぶりに“エンドレス・サマー”を見て、初心に戻れたような気がした。

 

■ローカルボーイズ


監督:ロン・モラー
出演:エリック・クリスチャン・オルセン、マーク・ハーモン 他
2002年 アメリカ映画

“ニューシネマパラダイスのようなサーフムービー”
幼い弟とその兄。兄の3人の友人。カリフォルニアのサーフシーンから始まり、美しいサーフカットの後は別のローカルの連中が出てきてサーフボードを盗み、女の子が登場。ひょっとしてお約束のサーフ青春ものか?と、ちょっと興味が無くなりかけた時、おじいさんの伝説のサーファーが登場。父を事件で亡くして以来、幼い弟は何か追い詰められるとパニックになる病気を抱えてしまう。兄は父の代わりになろうと弟を怒り、母を守るために必死だ。伝説の初老サーファーに憧れた弟は、彼に本当のサーフィンを学び、友達になっていく。サーフボードをもらい、毎日彼のもとに通い、本当のサーフィンにはまっていく感じは“ニューシネマパラダイス”の映写室を思い起こさせる。おじいさんは普段車の修理屋をやっているのだが、少年はそこに通いつめ、修理を手伝ったり、サーフィンのことを教えてもらう。一生友達だと約束したのに、おじいさんは海にも顔を出さなくなった。少年は嫌われてしまったのでは…とまたパニックになる。勇気をふりしぼりガレージに顔を出す。おじいさんは妻と娘を交通事故で亡くした話を少年にする。
少年とおじいさんがサーフィンを通じて仲良くなっていくこの姿は“スポーツ”“サーフィン”の魅力の1つであろう。同じものを愛する者同士だから、世代を超えた友情が生まれ、先人に対して尊敬の念を抱く。僕も世代の離れたライダー達と一緒に撮影をしていると、こんな気分になれる時が時々ある。ニューシネマパラダイスのような温かい気持ちにさせてくれるサーフムービーです。

 

■ブルークラッシュ


監督:ジョン・ストックウェル
出演:ケイト・ボスワース、ミシェル・ロドリゲス、サノー・レイク 他
2002年 アメリカ映画

“家族・友情をつなぐパイプライン”
女子の1人の天才サーファーをベースにハワイのサーフシーンを取り上げたガールズサーフ映画である。若い頃、パイプに飲まれリーフで大怪我をしてパイプに対する恐怖心を持ってしまった天才女子サーファー。母親が家を出て行ってしまい、ホテルのスタッフとなり、妹を1人で育てている。そんな彼女をサーファー友達が支えている。ビックゲームでプロになり、賞金を稼ぐことを考えているが、恐怖心に打ち勝たないと勝つことができない。NFLの1人の男と出会い、恐怖に打ち勝つ心を与えてくれる。
この映画はサーフカルチャーをしっかり表現している。ローカルの気持ち、スケーター的ナイトライフ、サーファーマインドなどをきっちり描いている。バッファロースタイルという楽しくタンデムで乗るスタイルから、大会のコンペティションサーフシーンまで、サーフィンの全てをシーンに散りばめている。さらに“リアル”に見えるのは女子のトップライダーがスタントサーフィンをしていたり、出演していることだ。サーフスタントとしては、2000年のワールドチャンピオンシップ3位の“ロシェール・バラード”、2シーズンワールドタイトルで優勝の“メーガン・アブボ”、ASPのトップサーファー“ケイト・スカラット”、2002年のビラボンプロで優勝した“ケアラ・ケネリー”。トップサーファーがリアルを作り出している。
サーフィンの素晴らしさは、すごい技や勇気のあるトライをすると、誰もが応援し、誰もが賞賛することだ。同じことをやっている人間に対してのリスペクトは他のスポーツに比べて大きい。家族・友情がその強さを作り、賞賛を受けることが出来る。“ブルークラッシュ”はそんなサーフィンの魅力を、美しい映像と共にリアルに伝えるサーフムービーである。


■BIG WEDNESDAY


監督:ジョン・ミリアス
出演:ジャン・マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビジー 他
1978年 アメリカ映画

“サーフムービー 色あせない名作”
僕は10代の終わりにこの映画に衝撃を受けた。サーフィンをやっている先輩がいつも“エンドレス・サマー”と“ビッグ・ウェンズデー”という映画のタイトルを口にしていた。見ないと話についていけないと思ってこの2本を見た。久々に“ビッグ・ウェンズデー”をDVDで借りてきて見た。リマスターしてあって映像がきれいだったせいかもしれないが、すごく鮮やかにあの頃に自分がトリップしているのが分かった。カリフォルニアの海が美しく撮られ、ロングに乗って板の上でステップするあのスタイル、角ばった“BIG WEDNESDAY”のあの文字。“ジェリー・ロペス”のライディング映像を見たのも、このBIG WEDNESDAYだった。ジェリー・ロペスだけでなくピーター・ハピルトン、ジャッキーなどその当時のライディングも楽しめる。チューブの中のカメラ、空撮のライディングショット。僕がサーフィンの大会の映像を撮りに行く時、潜在意識の中でついついイメージしているものが、この作品の映像だ。この映画を見て、サーファーははじけて楽しいものだと思わされた。イケイケ乗りでビートルのオープンに板を突っ込んで、女の子と騒いで、バカやりまくって、喧嘩して、でも友情は絶対的に大切な若者の楽しくて格好良い遊びのスタイルが、そこにはあった。軍隊に入って友達を死で失うこと。大人になって離れ離れになること。でも海を愛する友達だからこそ、また、大きな波があれば戻ってくること。ただサーフィンが面白いだけのスポーツでなく、ライフスタイルに対する憧れを持たせてくれたのがこの作品だ。いつかこんな作品を撮りたいと思い、XSportsにとりつかれていった。僕にとってはXtreme Movieの原点的作品である。久々に見て、色あせない名作だと思った。この作品に出会えて僕は良かったと思っている。


■ブルー・ブルー・ブルー


監督:ダン・キャッスル
出演:ラクラン・ブキャナン、ハビエル・サミュエル、レシャード・ストリック 他
2008年 オーストラリア映画

“サーフィンがつむぐ兄弟愛、家族愛”
オーストラリアはサーフィンが文化であると感じさせる1本であった。サーフィンの大会で優勝し兄を超え町を出たいと思っている17歳の若者と、友人、兄弟そして家族の物語が、青い空と海の美しい映像と共に描かれている作品“ブルー・ブルー・ブルー”
サーフライドの映像の美しさだけでなく、表情やパドリングの時の様子までが丁寧に美しくフィルミングされているので、よりストーリーと神秘的な感情まで伝えてくれる。
甘酸っぱい青春ストーリーと兄弟・家族愛を描いているが、サーフィンがしっかりと生活の中に入っている。サーフスタントは“Parth Standlick”“Marc Adam”“Mitch Resevsky”“Jesse Adam” 海の怖さ、夜の海と光、映像美だけでなく心の動きがアップとルーズカットと水中(映像)で上手く表現されている。
特にこの映画は兄や姉の影響でサーフィンやスケートなどを始めた弟達に見てほしい。弟は兄の姿を見て、そのスポーツに憧れたり、興味を持ちやがて夢を抱くようになる。弟が上手くなっていくと兄はやがてアドバイザーになったり、注意をするようになる。それは邪魔しているわけではなく、弟を大切に思っているからだ。いつも一緒にいると兄弟や家族の愛情が見えなくなる時がある。この作品は、そんな人達に、語らない愛情の強さを再確認させてくれる。兄弟で同じスポーツをしている人達に是非見てもらいたいサーフムービーである。



■AIR&STYLE


出演:ケリー・スレーター、タジ・バロウ、ミック・ファニング 他
発売・販売:マリン企画

“世界の注目サーファーが一気に見られる入門篇”
2008-2009年のWCTサーファー達のフリーサーフが納められた1本。
ケリー・スレーターは自らシェイプしたミニボードでライディングしていたり、ミック・ファニングはバレル、リップ、エアーと色々なスタイルのライディング、ボビー・マルティネスは1本波のロングライド、タジ・バロウは切れのいいサーフが入っている。
10人以上のトップ海外サーファー達のライディングを、特典映像ではミラーバージョンと呼ばれる鏡に映した逆向き映像で見ることも出来る。チェックしたいライディングのスタンスが逆な時、このモードで見れば自分のスタンスに合わせてイメージトレーニングが出来るというニクイ演出をしてくれているのである。サーフィンを始めたばかりの人には特におすすめの1本!!しかも70分入って、Quicksilverのオリジナルステッカーがついて980円。これってお得じゃない?


■cross over2


出演:ミッチー・アブシャー、CJネルソン、アレックス・ノスト 他
発売・販売:マリン企画

“カリフォルニアの今を感じるサーフDVD”
ロングボードサーフカルチャーの発信源と言えば、“ハワイ”か“カリフォルニア”であろう。もちろん、オーストラリアやインドネシアなど、世界の様々な場所からニュームーブメントを発信はしているが、大きな主流としていつの時代も発信し続けているのは、やはりこの2箇所である。
ハワイがのんびりとしたローカルのりで1つの方向性に向いていくとしたならば、カリフォルニアは自由にアグレッシブに色々な方向に向いて、後に1つにまとまっていく傾向にあると、僕は思っている。
カリフォルニアスタイルは、実に、色々なスタイルがあって、常にチェックをしておかないと時代が見えてこない。
この“cross over2”は、ニューロングボードスタイルから、クラシックスタイルなのにまた注目を浴び始めたものまで、様々なスタイルを見ることができる。
大きい波だけでなく、ジャパニーズサイズの波でもスタイルを出している彼らのライディングはイメージトレーニングとしても良いと思う。
ロング、フィッシュ、クワッド、ハル、トラディショナル、スラスターなど、波に合わせて自由に楽しむカリフォルニアの今をこの1本で感じて欲しい。


■STEP INTO LIQUID

監督:デイナ・ブラウン 
出演:レイアード・ハミルトン、ケリー・スレーター、ピーター・メル、ロシェル・バラード、レイン・ビーチリー、
ジェリー・ロペス 他   2003年 アメリカ映画

“何故、サーフィンは愛されるのか?”
多くのサーファーに愛されているサーフィンのクラッシックスと呼ばれる映画“エンドレス・サマー”の名匠ブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンのサーフ映画が“STEP INTO LIQUID”
トップサーファーから始めたばかりのちびっこサーファーまでアマ・プロ問わず、デイナは追いかけ、サーフィンの魅力を伝えてくれる。タジ、ケリー・スレーター、ジェリー・ロペスなどトップライダーのライディングも見れるし、何と66フィートもの波にも乗っている。160キロの沖合いで見たことも無いような波に乗っているのだ。
宗教の違う子供達にサーフィンをさせ、仲良くさせたり、トウインというジェットスキーで引くスタイルやフォイルボードというエアチェアの変形など、色々なサーフスタイルを見せてくれる。
場所も世界中で撮影。カリフォルニア、ハワイ、アイルランド、タヒチ、ベトナム、コスタリカ、ウィスコンシン州のミシガン湖、イースター島など、本当に世界のあらゆる所で撮影。
ここで印象的なのは、サーファー達が皆笑顔であること。心のまま自由に生きるサーフ精神。皆が自然と一体になる喜びを表現している。そして、製作側の愛情も伝わってくる。サーファーとぎりぎりのところでの水中撮影、白波に巻き込まれるかと思わせるような至近距離での空撮、フィルムの焼き付き部分まで使っている編集。出演者、製作者共にサーフィンを愛していることが手に取るように分かる作品である。
では、何故、サーフィンは愛されるのか?
それは、毎日違う顔をした波に乗るからであろう。まったく同じ波はありえない。だからこそ、最高の波を求め、常に新鮮な気持ちで向かい合えるのであろう。そして、愛する者同士、気持ちを分かり合えるから。
いろいろなサーフィンに対する愛情がたっぷり詰まったこの作品で、サーフィンの魅力を感じて欲しい。


 SK8
■ロード88 出会い路、四国へ

監督:中村幻児
出演:村川絵梨、小倉久寛、須藤理彩他
2004年 日本映画

“出会いと別れ”
白血病の女の子がスケートボードで四国88ヶ所のお遍路の旅をしている様子を描いた“ロード88 出会い路、四国へ” その旅の中で少女が出会った人は、昔売れていたコメディアン、会社が苦しくて犯罪に手を貸してしまった社長、そして子供の頃いなくなってしまった母。88ヶ所巡りを歩くかわりにスケートボードでしているだけなので、特別派手なトリックなどは無く、プッシュとスケーティングだけなのに、何故かスケートのシーンが頭から離れない。きっと心理描写の中に上手く溶け込んでいるので、より心に残るのであろう。このアプローチは僕にとってとても新鮮だった。ストーリーで気になったのは、“出会い”と“別れ”を上手に描いていること。誰一人として完璧な人間などいない。だからこそ、いろいろな人と出会い、影響を受けたり、成長出来るのである。そして別れは、忘れない為の儀式なのかもしれない。ずっと一緒にいると当たり前になってしまい、大切さに気付かないこともある。でもずっと一緒にいる人のことこそ、当たり前にしてしまってはいけないのである。最近同じ人数人としか会っていない人は、もっと人と出会いましょう。せっかく一度きりの人生なのだから。出会いと別れの大切さを教えてくれるこの作品。ずっと家にこもっている人や、誰とも会わない日々を送っている人に見て欲しい作品です。

 

■DOG TOWN&Z-BOYS


監督:ステイシー・ペラルタ
出演:セファー・スケートボード・チーム
2001年 アメリカ映画

“LAサーフスケートの全て”
トニー・アルバ、J・アダムス達のゼファーチーム“Z-BOYS”と言えば、スケーターやサーファーなら皆知っていることだろう。彼らがサーフスケートを作り出し、近代スケートボードを創り出した男達なのだから…。そんなZ-BOYSのドキュメンタリーフィルムがこの“DOG TOWN&Z-BOYS”だ。まず、よく写真やフィルムが残っていたものだと感心する。60年代、サーファー達の間で流行したスケートボードは65年頃下火になった。カリフォルニアルート66号の終点、北は金持ちのサンタモニカ、南はゴーストタウンのベニスビーチ。67年に遊園地は閉鎖され、桟橋でローカルサーファー達がしのぎをけずっていた。その頃シェイパーのジェフ・ホウやスキップ、イングロム等が作ったサーフショップが“ゼファー”だ。そこの革新的なボードを求め集まってきたスタイルを持つ若者達でチームを結成した。その中に現アルバスケート元世界チャンピオンのスケーター“トニー・アルバ”や伝説のスケーター“ジェイ・アダムス”“ステイシー・ペラルタ”などがいた。ステイシーはチームを持っていて、トニー・ホークやトミー・ゲレロを発掘したり、クレッグ・ステシックとビデオを作り始めたり、この作品の監督も務めている。日本の伝説スケーター“ショウゴ・クボ”もゼファーのメンバーだった。Z-BOYSの伝説は色々聞いてきた。特にハリウッドの屋敷のプールの水を抜いて、こっそり入って、スケートをして、エア技が世界で最初に誕生したとか、全米の大会にいきなり出場して勝ちまくったとか、古いスケート雑誌で見たことはあった。しかし、今回フィルムで事実を見せ付けられると、本当に衝撃的である。“あの時代に、あのトリックを!!”という衝撃より、“こんな風にして新しい時代が生まれるんだ!!”という感動の方が大きかった。大人になって当時を振り返る彼らの言葉は全てが力強く、“スタイル”にこだわり、仲間という絆で結ばれていたムーブメントを作り出した男達に、変な迷いは無かったのだろう。“サーフィンのようにスケートボードをしたい”“スタイルを追求したい”ただそれだけのためにスケートを楽しみ、今のスケートの原型を創り出した。スターライダーになってチームがばらばらになってからは、クスリに手を出した人、金を求めスケートが楽しめなくなった人、失踪した人など人生様々だが、この映画を通して何かが誕生する時の瞬間を見ることができたような気がして、なんだか興奮してしまった。スケートボード、サーフスケートの歴史を見て、カルチャーの本流を多くのスケーター達に知ってもらい、もっと楽しいスケートライフを送ってほしいものである。

 

■ワサップ!


監督:ラリー・クラーク
出演:ジョナサン・ベラスケス、フランシスコ・ペドラサ 他
2005年 アメリカ映画

“貧富の差とスケートボード”
サウスセントラルというゲットーに住んでいるスケートボード好きの若者が高級住宅街のビバリーヒルズにスケートを楽しみに行って巻き込まれる事件から、自分達を考えていく様子を描いた作品。
「キッズ」「ケンパーク」「ブリー」など若者のストリートライフを撮り続ける監督ラリー・クラークらしく、ストリートをリアルに描いている。ストリートで集まって、階段越えやスケーターズロックを大音量で使うなど、スケーター達には“リアル”なテイストで入っていきやすい作品であろう。サウスセントラルは黒人とHIPHOPと銃の街。そんな中、若者達はスケートを愛し、パンクやロックを好み、ラテン系の自分達のアイデンティティを探しつつ笑いながら生きている。銃を持たず、無邪気に笑って生きていこうとする彼らに、何故か悲しみを感じてしまった。仲間が殺されても、祈り、笑うしかない。復讐をすると、銃で撃たれ、新たな悲劇が生まれることを知っているからだ。たまたま遊んでいたら警察に捕まり、女の子と知り合って家に行くと乱闘になり逃げていると住人に銃で撃たれる。仲間を失うと逆上して復讐に行く作品は多くあるが、自分達の中で悩み、どうしようも無いからと悲しみ、ただ逃げていく。白人でも黒人でもない彼らの悲しい宿命がじわじわと伝わってくる作品である。楽しくスケートで遊んでいる時と街の中を逃げるためスケートに乗っている無表情な時の彼らの顔が脳裏に焼きついている。世界中のすべてのスケーターが笑って楽しめるような世界になってほしい。日本に住んでいるから、貧富の差や人種問題をあまり感じないが、この作品はじわりじわりとその現実を突きつけてくる1本である。

 

■スケート・オア・ダイ


監督:ミゲル・クルトワ
出演:ミッキー・マウ、イドリス・ディオブ、エルサ・パタキ 他
発売:アスミック  2008年 フランス映画

“フランスのリアルストリートがわかるエンターテイメントSK8ムービー”
EXやトリプルX以来のスピード感あふれる本格的エクストリームムービーを見つけてしまった。それがこの“スケート・オア・ダイ”
パリのリアルストリートをうまくストーリー化し、スケートボードを使ったエンターテイメントムービーだ。パリのインラインスケートシーンであるフライデーランや、ストリートバスケのシーン、クローズのクラブイベント(これは少しデフォルメしすぎているが、ストーリーの中で見るとまったく気にならない)、スケーター達。どれもリアルに表現出来ている。ファッションもチープでなく、VANSやNIKEもスケートデッキのシューズをきちっと履いているし(スタイリストがわかっていないとスケートボードのシーンなのにテニスシューズとか履かせたりして無理があったりする)、フランスのストリートとスケートファッションもうまく融合されている。
さらに、ヨーロッパのエンターテイメントスケーター達が吹き替えや出演しているので、トリックも最高。VANSのオーストリアムービースタースケーター“Chris PFANNER”、フランスのEmericaのライダー“Maxime GENIN”など、コンテスト系でなく、ビジュアルで世界に発信するライダー達が出演している。彼らはいかにSK8を格好よく見せるかを常に考え、世界に発信しているだけあって、見せ方が上手い。Alexis LAMENDINやAnthony ROUSSE、Jullen MEROORなどヨーロッパの新旧ライダー達のライディングにも注目!!役者の2人のプッシュにもリアリティがある。元々やっていたか、相当練習をさせたと思われる。立ち姿やプッシュやドロップという何気ない様子に嘘があると、一気にリアルさに欠ける。(日本のスポーツドラマに多いが…)
魅せるスポーツであるSK8をストーリーに上手く使い、表現し、映画としての面白さ、カルチャーとしての発信、若いX系の人達の共感、色々な要素が詰まった1本である。これこそリアルストリートのエンターテイメントX系ムービーだ!!


■ロード・オブ・ドッグタウン


監督:キャサリン・ハードウィック
出演:ジョン・ロビンソン、エミール・ハッシュ、ヴィクター・ラサック 他
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2005年 アメリカ/ドイツ映画

“スケートクラッシックスがよみがえる”
“DOGTOWN&Z-BOYZ”はトニー・アルバ、ジェイ・アダムス、ステイシー・ベラルタなどのスケートボード創世記のLAのレジェンドスケーター達のドキュメンタリーである。ベニス近辺のサーファーであり、サーフショップ“ゼファー”にたむろしていた悪ガキというか不良グループの若者達が世界のスケートシーンをひっぱっていく、あの伝説の頃をフィルミングしたものである。数年前、トニー・アルバが来日した。“DOGTOWN&Z-BOYZ”の印象とは多少違うものの、やんちゃぶりは健在だったので少し安心した。その一方、子供達には気軽にサインするし、スケートに対しては熱く語るし、スケートに対する強い愛情を感じた。だからこそ、今でもトニー・アルバは色あせない。ステイシー・ベラルタは、現在世界で最も有名なスケーター、トニー・ホークを育てた男でもある。シーンに今でも影響を与え続けている。ジェイ・アダムスは今でもスケートを続けているそうだが、相変わらず暴れまくっているらしい。
そんな彼らを役者を使って再現した映画が、“ロード・オブ・ドッグタウン”だ。
ストーリーは“DOGTOWN&Z-BOYZ”をかなり忠実に再現している。びっくりするのは、役者達がしっかりスケートに乗れていることだ。オーリーはもちろん、フリップもきちっと決めるし、ボールライディングもしっかりしている。さらに表情や心情がドキュメンタリーよりしっかり表現されているため、気持ちが入りやすい。ドキュメンタリー的リアリティではないが、心情がはっきり分かる部分で、よりリアリティを感じてしまった。
スケートを通して、若者達の心の葛藤が見えてくる。最近のスケーターの中には、ビジネスを先行で考えている人もいる。そんな人に、この作品を見て感じてもらいたい。スケートボードはカルチャーであり、仲間をつなぐツールであり、自分のスタイルを求める自己成長のものであるということを…。
ロード・オブ・ドッグタウンを見ると、スケートボードの全てが見える。


■クール・ボーダーズ(GRiND)

監督:ケイシー・ラ・スカラ
出演:マイク・ヴォーゲル、ヴィンス・ヴィーラフ、アダム・ブロディ 他
2003年 アメリカ映画

“SK8 is FUN”
“クールボーダー”というスノーボードの作品があったが、この“クール・ボーダーズ”はスケートボードの青春コメディ映画。高校の終わりにプロを目指しチームを組んだ変わり者の4人が、バンの上にジャンプランプを積んでスケートのツアーに参加し、アピール。スポンサーをつける為にあの手この手でアプローチするというストーリー。
女好き、バカ、ダメな奴、熱い奴の4人が、まったく通用しそうにない手口を使ってみたりしながら旅をしていく。エッチなところもあり、“jackass”+“グローインアップ”みたいな作品と言うと、バカにする人もいるかもしれないが、スケーター達にとってはお宝物の作品。X GamesのチャンピオンVANSのバッキー・ラセックやボブ・バーン・クイスト、ピエール・リュック・ガニオンなどのトップスケーター達が大会やパークのシーンでガンガン技を決めている。スケーターでjackassにも出ているバム・マージェラやエレン・マクギーニもトリックを見せている。特にバムは演技のシーンもたっぷり。さらに、オールドスクール派には魅力の、あのマーク・ヴァレリーも出ている。スケートのトリックビデオとして見るだけでも価値がある。とにかく、パークも凄いし、ファッションもVANS、ZOO YORK、etnies、ボルコム、elements、emericaなど、スケーターアイテムを着こなしているので、スケーターファッションをキメたい人も参考になる1本である。「だったら、スケートビデオでいいじゃないか?」という人もいるだろうが、ストーリーがとにかく陽気で楽しいので、友達と笑いながら見ると数倍楽しめるだろう。さらに、“自分に素直に生きろ”というテーマが全体に流れているので、スケーター達の核心にも繋がっていると思う。この作品を通して、ますますスケートボードって楽しいものなんだと思わされることだろう。
こんな映画が作れるのも、アメリカのスケートシーンがメジャーであるからこそ。
スケートボードをやっていて難しいことを考えている人、スケーター達を見て、ちょっと恐い人達と思っている人、この作品を見て考えを改めて欲しい。“SK8 is FUN”


 SWIM
■君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

監督:クリスティナ・ゴダ
出演:イヴァーン・フェニェー、カタ・ドボー他
2006年 ハンガリー映画

“自由と愛とスポーツと”
1956年、ハンガリーはソ連の侵略を受け、首都ブダペストは炎に包まれた。自由を望む民衆の中で立ち上がった1人の女子大生と、オリンピックに向け注目されている1人の水球選手。自由に向け武器を持ち戦う女性と、国の名誉の為プールの中で金メダルを狙い戦う男性。2人は結ばれ、ソ連も撤退し、自由と真実の愛を得た気がした。オリンピックに向かう男と送り出す女。しかし、オリンピック開催中、またもソ連がハンガリーを侵略する。水球を捨て、愛する女性の為に帰国も考えたが、「ハンガリー国民に名誉や勇気を与える為にもオリンピックで戦うのだ」という監督の言葉で奮起し、試合に出場する。しかしその時、彼女は秘密警察に捕らえられてしまう。この後、2人の運命は…というストーリー。ソ連がブダペストを戦車で攻めているシーンと、水球でソ連がハンガリーをフファウルで殴ったり、沈めているシーンの対比がよりストーリーに引き込んでくれた。スポーツが国の名誉や勇気を与えることというのは大いにあると思う。そんなイメージをはっきり形にしているこの作品は、トップアスリート達に見てもらい、自分が代表選手やトップアスリートとして発信できる可能性を考えてもらいたい。単なる1人の人間であり、民衆の中の1人なのかもしれないが、試合や大会を通して発信できるメッセージは絶大なものである。時代、国、仲間、民衆、いろいろなものを背負った中で発信する力があるアスリートが真のトップアスリートなのだ。“自由と愛とスポーツと”そんな当たり前のものに慣れすぎているから感じていないが、実はとても大切であることに気付いて欲しい。 


■ダイブ!!


監督:熊澤尚人
出演:林遣都、池松壮亮、溝端淳平他
2008年 日本映画

“2世3世の苦しみ”
父がトップの飛込選手だった若者、祖父が伝説の選手だった孫、そしてただ飛込に憧れて始めた普通の若者という3人のトップ飛込選手とコーチの関係を通してオリンピックを目指す過程を描いた作品“ダイブ!!” 日本水泳連盟などがストーリー上に現れ、水連の仕事もしている僕にとってはとても身近に感じられる作品でした。競泳やシンクロは日本人にとって身近ですが、飛込、水球、オープンウォーターなどは知らない人も多いでしょう。でも生で見ると迫力や演技など迫ってくるものがあるので、一度見てみてはいかがでしょうか?本題に戻ると、元有名選手を父に持つ息子の葛藤、他界している伝説の祖父を越えたいと思っている若者の苦悩、そしてサラブレッドに混じって練習をしている普通の家庭に生まれた飛込を単純に好きになってしまった青年というタイプの違う3人がお互いを刺激しあって成長していく様がこの作品では描かれています。自分の父親をコーチとしてしか見れない息子は、だんだん父が大きな壁になっていく。勝ち方を知っているコーチである父は、息子に失敗させたくないあまり、冒険して苦手な技をやらせるようなことをしない。息子はやがて自分の人生を支配されているように感じるようになる。それでも直接言ってもらっている姿をうらやましいと思う伝説の飛込選手の孫。見えない存在を追いかけるつらさ。そんな2人と共に自由に練習する若者。父や祖父と同じ道を歩むことはスポーツに限ったことではない。家業を継いだり、店を継いだりと父や祖父と同じ仕事に就く人達は世の中にたくさんいる。そんな中で“父と師匠”のバランスが子供に大きな影響を与えると思います。自分のやっていることを子供にやらせたい親は、一度この作品を親子で見て、話をしてみると良いのではないでしょうか?


 TABLETENNIS
■燃えよ!ピンポン

監督:ロバート・ベン・ガラント
出演:ダン・フォグラー、クリストファー・ウォーケン他
2007年 アメリカ映画

“過去の自分を越える為に”
ソウルオリンピックに期待の中、出場したのだが、メダルを獲れず落ちぶれた1人の卓球選手。田舎のバーで卓球ショーを見せ生活をしていた彼が、再び裏社会の卓球の世界にプレイヤーとして戻ってくる。シリアスな表現をするとこんな感じだが、この“燃えよ!ピンポン”は完全なコメディ卓球ムービーです。アメリカのコメディショー的な作りで展開が早くて飽きさせない。そんな笑いの中にも“過去の栄光と挫折”を越える為、徐々に闘志を取り戻していく1人の男を描いている。きっと誰もが自分にとって栄光の時期があると思う。「あの頃の自分は輝いていた」とか「高校の頃は良かったなぁ」なんて昔にひたって立ち止まっている人も結構たくさんいると思う。人は立ち止まっていても何も始まらない。自分を前に向かせる為の何かを見つけ、一歩でも未来に向けて進んでいくことで、また輝ける自分になれるものである。そんな力のあるテーマを笑いに包んで伝えるこの作品は、いかにもアメリカっぽい作りにしているのに、“卓球”を取り上げているので、さらに笑える。しかし何故アメリカ人は日本というと相撲取りにしてしまったり、変なイメージを持っているのだろうか?国際的な国だと思うが、日本の文化ってアメリカ人には理解してもらえていないんだな…とまた思い知らされてしまった。


■ピンポン


監督:曽利文彦
出演:窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童他
2002年 日本映画

“頂点だけが感じる幸せな時間”
コミックでも注目され、窪塚洋介君が主役を演じ話題になった卓球映画“ピンポン”。神奈川の卓球部と町の卓球場を舞台にした青春映画である。幼い頃いじめられっこだった“スマイル”を守り、友達のいない彼に卓球を教えてあげ、友情を育てていった“ペコ”。同じ卓球場で、卓球だけに非常に熱を上げ有名校に入った“アクマ”。アクマの学校には絶対的存在の“ドラゴン”がいて、誰もが彼には頭が上がらなかった。そんな中、ペコはアクマに負け、アクマはスマイルに負ける。ペコは卓球を辞めようとする。センスもあり、卓球を楽しんでいるペコは、自分達の希望だった。ペコはもう一度自分を鍛え、アクマとの勝負に挑むことにする。
1つのスポーツで頂点を目指し、同じレベルの戦いをする者同士だけが味わうことの出来る“幸せな時間”があるという。プレイとプレイをぶつけ合うだけで、何も語らなくてもお互いが会話している感覚になるのだそうだ。トップのテニスプレイヤーや、サッカーの1対1や、マラソンでトップを並走している時に感じる人達がいるらしい。僕はそんな感覚を味わったことが無いが、スポーツを撮影している時、対象者の性格が、何も語ってくれなくても見えたような気がしたり、何か会話をしているような気がする時がごくまれにある。そんな不思議な感覚を再び体感できるような気持ちにさせてくれる作品が、この“ピンポン”であった。不思議な気持ち良さを与えてくれる1本です。


 TENNIS
■ウィンブルドン

監督:リチャード・ロンクレイン
出演:キルステン・ダンスト、ポール・ベタニー他
2004年 アメリカ映画

“自分との戦い”
30歳を過ぎた元有名プレイヤーと、最高潮で旬な女子テニスプレイヤーがウィンブルドンの大会期間中に恋に落ち、その気持ちと大会に向けての集中力が入り混じりながら展開していくラブストーリー“ウィンブルドン” 30歳の元プレイヤーは年齢、体力などに限界を感じ始め、このウィンブルドンで引退を考えていた。そんな時、スターテニスプレイヤーと出会い、恋に落ちる。男はその恋をパワーに変え、勝利をつかみ決勝へと進む。女は恋のことを考え、集中力を切らし、負けてしまう。しかし、恋の力は絶大である。その後、2人の恋は?そして男の結果は?ラブストーリー好きの人ならとても楽しく見られる作品である。僕的には、心理をうまく表現していることに感心した。コートの中は自分と敵だけである。1球ごとに変わっていく心の変化を、モノローグを使い、うまく魅せてくれる。強気になったり、弱気になったり、一刻一刻変わっていく自分の気持ち。でも、前に向かう気持ちが失われた時、試合は事実上終わる。ボールボーイ、審判、観客と本人のカットバックが、試合は単なるゲームでなく、自分との戦いであると教えてくれる。何気ない音や観客の声まで選手の心理に影響している。そんな部分を非常に丁寧に描いている作品である。試合という一瞬にスポーツは人生を映し出すことができる。そんなことをはっきりと確認させてもらえる作品です。メンタルが弱いと感じているアスリートに見てもらいたい1本です。


 TRACK&FIELD
■人生はマラソンだ!

監督:ディーデリック・コーパル
出演:ステファン・デ・ワレ、マルティン・バン・ワールデンベルグ他
2012年 オランダ映画

“シニアの楽しい生き方を教えてくれる”
オランダの街の小さな車修理工場で働く4人のオジさんと1人の若者。借金だらけの工場を救う方法として、金持ちの中古車ディーラーに「マラソンで完走したら工場の借金を肩代わりしてもらう」約束をとりつける。日頃から酒とタバコと不摂生な生活。メタボになり、家では奥さんの尻にひかれたり、浮気をされやりとダメなオジさんに成り下がっている。借金まみれの社長は、子どもが不良になり、自分も癌に侵され、工場と家族を守る為に「マラソン完走」という最後の賭けに出る。人生の終わりに向かっていくオジさん達が1つの事に向かって徐々に真剣になっていく姿は、シニアが楽しく生きるヒントを教えてくれているようだ。年を取るにつれ、仕事だけで、家族や友達を顧みなくなっていく人が多い。そして退職して生きがいを失う男性も多々いる。そんな中、この4人、そしてサポートする1人の若者は何て楽しく生きているのだろうと羨ましく感じる。しかし、この4人は決して特別な人達ではない。誰もが歩みだせる「シニアの生き方」を教えてくれる作品です。 


 

■傷だらけのランナー


監督:サンディ・タン
出演:ブラッド・ピット、リッキー・シュローダー他
1990年 アメリカ映画

“兄弟で同じスポーツをすること”
若き日のブラッド・ピットが主演で出ている陸上映画“傷だらけのランナー” 働き者の母と、いつも酔っ払っていて子供達に暴力を振るう父の間に生まれた兄ジョーと弟ビリー。父は勉強も運動も出来るジョーが勝った時だけジョーを自慢し優しかった。兄ジョーは父に優しくされたい為、勝ちにこだわるランナーになり、郡でもトップのランナーになっていた。弟ビリーはそんな姿を見てレースが嫌いになり部活もせず遊び歩くようになっていく。そんな時、父が酔っ払い、車で事故を起こし亡くなってしまう。弟ビリーは不良と付き合うようになり、車泥棒で少年院に1年入れられてしまう。少年院から出た後、兄ジョーは弟ビリーにランナーとして陸上部に入るよう勧める。しかし、レース嫌いなビリーはこばみ続ける。個人的に兄の練習に付き合っていると、徐々に走ることの面白さに魅せられ、陸上部に入部。違う学校だった2人は対決することになる。そして兄の奨学金のかかった大会で2人の対決はどうなるのか?という、兄弟で同じスポーツをする2人のランナーを描いているのだが、このようなシチュエーションの兄弟や姉妹は多くいると思う。兄や姉のやっているスポーツを見て弟や妹が始めるという機会は多々あるし、兄や姉よりも才能がある時もあるだろう。勝敗にこだわり過ぎたり、結果重視にすると家庭に新たないざこざを作ってしまうことになりかねない。スポーツで心身の育成をしたいのに、逆に絆を壊す可能性を作ってしまう。この作品は、1つのスポーツを通して本当に大切なことを教える必要があると教えてくれる作品である。


■マラソン


監督:チョン・ユンチョル
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン他
2005年 韓国映画

“自閉症と家族”
自閉症の1人の青年と家族、そして夢を失った元マラソンの韓国代表ランナーを中心に描いている作品“マラソン” シマウマとジャージャー麺とチョコパイが好きで、興味の無い事は一切気にしない青年。走ることも大好きで10kmロードの市民大会で3位になったことが家族にとっても自慢だった。あきらめない人間にするため、そして普通の人と同じだと思いたいがため、彼をマラソンに挑戦させることにした母親。その時、2人の前に現れた人物は韓国の元有名マラソンランナーだった。彼は今落ちぶれた生活をしていて、今回も問題を起こし、2000時間の社会奉仕で償いをするため、養護学校に来ていたのだ。そんなランナーにコーチを頼むことになる。最初はしぶしぶやっていたのだが、青年のあきらめない心、純粋な気持ちを少しずつ感じ、本気で教え始める。家族の絆も壊れかけた頃、マラソン大会に青年は出場する。自閉症の人達との距離感は少し難しい気がしていた。施設の人に“スポーツの大会を見に行きませんか?”と誘ったことがあったのだが、「興奮する可能性があるのですみません」と言われたことがある。中途半端な善意は困らせることがあるのだと反省した。それ以来時々施設を訪ね、交流することがある。普通に挨拶し、話していると、徐々に心を開いてくれる。ちょっと間違って覚えている人もいる。水球選手を連れて行って、彼をバレーボールの選手と覚えてしまった彼女は、彼が来ると必ずアタックの真似で歓迎してくれる。でも、本当に笑顔で、忘れないで、いつも応援してくれる。僕達はもっとそばで共に暮らす空間を作ることが必要だと思う。


■風が強く吹いている


監督:大森寿美男
出演:小出恵介、林遣都、中村優一他
2009年 日本映画

“たすきの重さ”
弱小陸上部の箱根駅伝挑戦を描いた駅伝ムービー“風が強く吹いている”
毎年正月の2、3日に、ついつい見てしまう箱根駅伝。中継所で倒れこむランナー、あやまり泣きじゃくるランナー、ゴール前で大声を出す部員達…
新年早々、言ってしまえば暑苦しい映像なのだが、何故だか見てしまっている。
その魅力って何だろうか?
そんな答えがこの作品の中に隠されていた気がする。
ついつい自分の出身校の順位を気にしてしまうが、やはり気になるのはシード校に入れる10位の争いとか、繰上げスタートである。
たすきをつなげられなかった時の、ランナーの顔はそれまでの練習やチームの“想いの重さ”を思い知らされる。
ただ、トラックで走るのでなく、“山上り”や“花の2区”など、タイプの異なる様々なコースを選手達10名、それぞれに割り当てられ、それぞれが自分の全てを出し切り、たすきをつないでいく。
今回の弱小陸上部には、父をコーチにもち、足を壊してもトップランナーでいようとした男などエース級は2人しかいない。しかし、それぞれの性格や特色を活かし、箱根駅伝に挑んでいく。
その中で、友情や生き方や目標を、それぞれが見つけていく。1人だと辞めてしまうことも、駅伝だから続けられる。喜びも悔しさもうれしさも、1本のたすきがつないでいく。
“たすきの重さ”という言葉が、よく実況に出てくるが、毎回すべてのチームがそれぞれの“たすき”の意味を作り、それが“重さ”になっていくことに気づかされた。
駅伝というスポーツが好きになってしまう作品です。


■奈緒子

監督:古厩智之
出演:上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶他
2008年 日本映画

“駅伝が持つ意味”
子供の頃、自分を助ける為に海に飛び込み溺れてしまった船長の息子雄介と、高校の時偶然再会してしまった“奈緒子”
奈緒子は自分のせいで雄介の父を殺してしまったと、後ろめたい気持ちで雄介と接していた。
雄介は奈緒子に対し、父を奪った人として仲良くするなんて出来なかった。
小学生の頃の2人のトラウマは、2人の成長や時間を止めていた。
そんなとき、雄介の父親の友人でもあり、陸上部のコーチが、奈緒子を雄介の駅伝の合宿に、マネージャーとしての協力を求めてきた。
今まで個人競技として陸上をやっていた雄介が、チームとして走る。
彼のずば抜けた能力や、マスコミのあおりで、チームから浮いてしまう雄介。奈緒子は何とかしたいのだが、表現することすら出来ない。しかし、2人の気持ちのわだかまりは、少しずつ解けていく。
駅伝のたすきは、単なるバトンではない。大げさに言うと、“心のバトン”なのかもしれない。しかも走っているメンバーだけでなく、コーチ、マネージャーなど、関わっている人すべての心のバトンが、たすきという形でつながっていく。
駅伝というスポーツは、独特なスポーツである。すごく苦しい思いをして、心のバトンをつないでいくスポーツだ。
だからこそ、心の距離を縮め、チームとして団結できるのであろう。


■炎のランナー

監督:ヒュー・ハドソン
出演:ベン・クロス、イアン・チャールソン 他
1981年 イギリス映画

“何の為に走るのか?”
1924年パリオリンピックのイギリス陸上競技チームを描いた“炎のランナー”
ケンブリッジ大学に入ったユダヤ人のハロルド。ユダヤ人ということにコンプレックスを持ち、走り、そして勝つことで自分のプライドを守っていた。
彼のライバルでもあり、後にチームメイトになるスコットランドの宣教師でもあるエリック。
イギリスという国は複雑で、今でもサッカーやラグビーは、イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズの4国に分かれ、オリンピックの時はこの4国がまとまって“イギリス”という1つの国になりチームを組む。
イングランド、スコットランドと分かれて、ハロルドとエリックは戦い、ハロルドが敗れる。
大学生のハロルドは、プロのコーチ、サム・マサビーニを雇い、トレーニングを始める。イタリア系アラブ人のコーチのサムを、大学側は良い目で見ない。第一次世界大戦の時の同盟国、敵国という考え方が強い時だったからだ。
ハロルドはテクニックを磨き、個人の栄光だけを求めていた。勝利の為に手段を選ばず、国のことなども考えていなかった。
しかし、パリオリンピックの合宿で、少しずつ考え方も変わっていく。仲間達の優しさにも触れていく。
一方エリックは、宣教師であるにも関わらず、走ることに惹かれていく。走っている時、神に触れられる自分に酔っていた時さえあった。しかし、オリンピックの予選が、日曜日という安息日に当たってしまう。国は出場しろという。しかし神への忠誠心を守り、レースに欠場。友人が自分の代わりに違う競技に出て、安息日ではないレースにチャンスを与える。
ハロルド、エリック共にオリンピックで優勝した。
コーチがハロルドに言った言葉が印象的だった。
「君は何に勝ったか分かるか?君自身と私に勝ったんだ」
陸上を通し、コンプレックスに打ち勝ち、友情を知り、強さに変えた男達の実話である。テクニックばかり磨き、個人的栄光だけを考えている人に見てほしい1本である。


 VOLLEYBALL
■おっぱいバレー

監督:羽住英一郎
出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル他
2008年 日本映画

“青春の新スタンダード”
はっきり言ってこのタイトルを見た時、ただのコメディだと思っていた。
中学生の部活は、元々小学校の頃から好きなスポーツが無い人にとって、入部の動機はいくつかしか無いものである。
仲の良い友達が入部した部か、もてそうな部に入るものである。
バンドにしろ、スポーツにしろ、もてたいという動機は、中学生にとって大きい。
やる気を失い、先輩にびくついていた中学生のバレー部員。といっても、先輩のいじめで、バレーボールにろくに触らない。昔の不良の溜まり場になっていた部には、よくあった話だ。
そんな彼達が、赴任してきた綾瀬はるか演じるきれいな国語の先生のおっぱいを賭け、一勝を目指す。
しかも運悪く、相手は地区No.1の強豪校。
動機はそんなことだったが、いつの間にかチームの仲間達と結束し、バレーボールに真剣に向かっていく姿は、笑いの中にも、若かりし頃、頑張っていた自分達を誰もが思い出すことだろう。
最近の部活を見ていると、義務としてやっていたり、仲間との一体感を感じていない中高生が多いように思える。
中途半端にやっていても、思い出にも残らないし、本当の友にもなれない。1つのことに向かって、皆で苦労したことは、心も体も成長させてくれる。
部活の意義をも伝えてくれる青春ものの新スタンダード“おっぱいバレー”
薄っぺらい友達しかいない子供達に見てもらいたい1本である。


 WRESTLING  
■Win Win

監督:トーマス・マッカーシー
出演:ポール・ジアマッティ、アレックス・シェイファー他
2011年 アメリカ映画

“Win Winの関係”
お人好しで儲かっていない街の弁護士はストレスを抱え仕事を探しながらもギリギリの生活を送っている。彼が唯一燃えているモノ、それは自分がコーチしている高校のレスリング部だった。お金に困っている弁護士は、資産家で知覚障害のある老人の後見人となり、楽をしたいので施設に入れる。生活は少し安定したが、家族に隠して弁護士的にも裁判所を騙している行為は余計に心苦しく、ストレスをさらに溜めるだけだった。そんな時、老人の孫が家出をして老人の元にやってくる。母親に見捨てられ、母の新しい恋人にいじめられ、不良になった高校生。しかし、彼はレスリングの才能があり、弁護士は“コーチとしての魂”に火をつけられ、少年を引き取り、愛情をかけ育て始める。そんな弁護士と少年の関係を描いた作品がこの“Win Win”である。ビジネス用語として、“Win Win”という言葉をよく使う。両者共に得をする構造のことを言うが、この作品の2人の関係もそうかもしれない。“愛情”を持って育てられなかった少年は“教育”を得て、冴えない弁護士も“夢”をもらえた。この後ストーリーは二転三転していくのだが、1対1でぶつかり合うスポーツである“レスリング”と人生でぶつかり合う2人の様子が、非常に象徴的に伝わってきた。“表現は下手でもぶつかってくる若者”の存在がとても新鮮に感じた。最近の若い人達には、すぐに嫌なことから逃げてしまう人が多いが、ぶつかっても対話したり、言い合うことで、答えは導かれていくものである。逃げると何一つ答えは生まれない。“Win Winの関係”を作るには、逃げ出してはいけない。そんなことを教えてくれる作品です。


■レスラー


監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド他
2008年 アメリカ映画

“最期までつらぬくこと”
ミッキー・ローク主演の孤独な老いたプロレスラーの生き様を描いた作品“レスラー” 昔の栄光の姿を追いかけすぎて家庭を顧みず、娘をおいて興行の旅にでる主人公。トレーニングやランニングなど体を鍛えることと、派手な世界ばかりに目を向け、夢だけを追いかけたアスリートの結末の姿を見せている。「夢を追う」この言葉はすごく美しく聞こえるが、自分の体や仕事としての現実、家族や社会のことを見失っていると、ふと後ろを振り返った時、何も残っていない自分に気付くのである。“夢と現実”このバランスの難しさを見事に描いた作品である。僕も様々なアスリートと出会ってきたが、彼らが年を重ねていくと、セカンドライフに入る人と、いつまでも食らいついていこうという人の2つに分かれる。特にピークの時、頂点にいた人ほど悩んでいることが多い。年をとり、自分の現実に気づかず“まだやれる”というイメージだけが残っている人は、そんな自分を騙してでも続けようとする。自分の中でしっかり“ケジメ”をつけてセカンドライフを送っている人で成功している人は多々いる。どちらが正しい人生かと言うことは出来ないが、アスリートはいつの日か“引退”する日が来るものである。本当の引退は、本人しか決められないものだが、周りの人間が出来ることは、冷静に考える時間を作ってあげることではないだろうか?この作品を通して、最期までつらぬくことの良し悪しを深く考えさせられた。夢を追う人は、何度か決断をしなくてはいけない時がある。そんな時に見て欲しい1本です。


■ガチ☆ボーイ


監督:小泉徳宏
出演:佐藤隆太、サエコ、向井理他
2007年 日本映画

“知的障害者とスポーツ”
突然の事故で、事故以前の記憶は残っているのだが、それ以降の事は寝ると全て失ってしまうという障害を負った大学生が、プロレス同好会に入って、自分自身で生きている証をつかもうと必死に闘う姿を描いた作品“ガチ☆ボーイ” この作品で強烈に残っている言葉がある。「寝ると全て忘れるなんて死んでいるようなものだ。でも体のあざや痛みがあると生きているんだって実感できる」記憶という障害はあっても、体は少しずつ成長するし、体自体が記憶していくこともいっぱいある。毎日がリセットされるということは、不安の中、生活していることと同じであろう。“障害者だからスポーツはだめ”と決め付けてしまうのは良くないこと。このような視点で考えたことがなかった。知的障害者に何かを伝える時、恐る恐る接してしまうことがある。もちろん気を使わなくてはいけないこともたくさんあると思うが、差別してはいけない。体でいろいろ感じてもらうことも大切だということに気付かされた。そのためにもカリキュラムをしっかり考え、問題点はたくさんあると思うが、一緒に楽しめる環境を作らなくてはいけないだろう。障害を持つ人に対し、壊れ物に触れるように接していても未来が無い。もっと一体化出来ることを考えなくてはならない。障害を持つ子供を持つ親に、一度見てもらいたい作品である。


■ナチョ・リブレ 覆面の神様


監督:ジャレッド・ヘス
出演:ジャック・ブラック、エクトル・ヒメネス、アナ・デ・ラ・レゲラ他
2006年 アメリカ映画

“子供達に夢を与えよう”
ジャック・ブラック主演のタイガー・マスクのようなストーリー“ナチョ・リブレ覆面の神様”
ロックシンガーであり、コメディアンであるジャック・ブラックの作品だから、少し下品で笑えるストーリーに仕上がっている。
孤児院も兼ねた教会で調理係をやっている主人公は、プロレス好きで、教会では禁止されているレスリングを隠れて始める。
もらったギャラは、少しでも子供達に美味しいものを食べさせてあげようと、野菜などを買い、サラダを食べさせてあげる。
自分の好きだったレスラーが、自己のことだけを思い、傲慢だと知ると、レスリング自体に興味を失うが、子供達に楽しい思いをさせたいという希望と、修道女との禁断の恋が、再び主人公をリングに向かわせる。
まるで、子供の頃、TVで見たタイガー・マスクのようなストーリーだが、主人公演じるジャック・ブラックは、腹もぶよぶよで学問も身につけていない、下品でアホな3枚目。だからこそ、必死な姿や苦しんでいる姿は、心の琴線に染みてくる。
自分のためだけでなく、誰かのために戦う姿は、多くの人に感動を与える。
ストレートなストーリーだけに、気持ちも伝わってきた。
子供達に夢を与えることは、アスリートの1つの仕事だと思っている。立ち向かう姿、頑張ると夢が叶うこと、必死に前に向かうこと、そんな感動を伝えられる職業がアスリートだ。全力で戦う姿こそ、子供達に見せるべき姿なのである。
こんなバカバカしいストーリーのメキシコでのプロレス映画なのに、なんでこんなに熱く筆を走らせているのか。自分でも少し不思議であるが、お涙頂戴的ストーリーでなく笑いながらも心にボディブローを少しずつ打たれ、心がマットにホールドされてしまったのかもしれない。
コメディアンが演じると、なぜか哀愁を感じるときがある。この作品こそ、まさにその代表的な作品である。
誰かのために戦うこと、子供達に夢を与える大切さを教えてくれる1本です。


 OTHERS
  ■グラン・ブルー

監督:リュック・ベッソン
出演:ロザンナ・アークエット、ジャン=マルク・バール、ジャン・レノ他
1988年 フランス/イタリア映画

“友情と記録”
フリーダイビングの世界記録保持者“ジャック・マイヨール”の協力の下、2人の本物のダイバーを中心に映像美と共に描かれた作品。実際のストーリーは時代や恋愛の部分はフィクションのようだが、監督であるリュック・ベッソン自身がダイビングをやっていることもあり、その部分はリアリティがあると思われる。実際にエンゾは命を落としていないことをここに書いておくが、フリーダイビングも1つのスポーツとして海外では人気を博している。恋愛の部分についてはゆっくりと作品を観て楽しんでもらうとして、先輩・後輩と友情について描かれている部分はアスリートも学ぶべきものが多いであろう。先輩は後輩にチャンスを与え、後輩は先輩を尊敬しつつも自分の全力で立ち向かっていく。お互いに全力を尽くしたら結果にこだわらず、共に喜び合う。もちろん、お互いにライバルであるが、知り尽くした者同士が全力で、しかも楽しみながら戦うからこそ意義があるのだと思う。先輩が伸びてくる後輩をつぶす話を多々聞くが、それではお互いに伸びることなく、つまらないことで共にダメになってしまう。日本人は特にその場の結果だけを求めてしまいがちである。しかも小さなローカルの大会でこそ、そんなシーンをよく見かける。本当に成長したいのであれば、この作品のジャックとエンゾのように、お互いを認め合い、共に成長する道を選んで欲しいものである。グラン・ブルー映像の美しさだけでなく、アスリートの本当の誇りと友情を教えてくれる作品である。


■Mr.ウッドコック-史上最悪の体育教師-


監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ショーン・ウィリアム・スコット他
2007年 アメリカ映画

“トラウマ”
コメディ映画なのに僕は全く笑えなかった“Mr.ウッドコック-史上最悪の体育教師-” その理由は面白くなかったからではない。ストーリーは面白い。面白いのだが、僕はシリアスに考えて見てしまった。ストーリーは、体育教師の数人の生徒に対する嫌がらせ的授業のシーンから始まる。少しデブで運動神経の悪い子や喘息で運動が苦手な子に何かと文句をつけ、皆の前で罰として走らせたり、パンツ1枚で懸垂をさせたりなどしてしごいていく。その中の1人がその後頑張って自己啓発本の作家として大成する。都会に出て作家をやっていた彼は、父親を亡くしていて、ある日田舎に帰ると、自宅にあの時の体育教師が母の婚約者としているではないか!青年はその教師が“トラウマ”になっていたので、家から追い出そうとあの手この手を考える。結果は見てもらってのお楽しみという感じなのだが、僕は子供にスポーツを広めていく仕事もしているので、本当に身につまされるような思いで見ていた。子供のスポーツのイベントに行くと親が我が子に罵声を浴びせている時がある。その子なりに頑張っているのに、他人と並べて我が子に怒りをぶつけている姿を見ていると、この作品の青年のように“トラウマ”となり、スポーツ自体を嫌いになってしまいかねないと思う。子供のスポーツを応援しているつもりが、逆にあだとなってしまう。子供にスポーツを教えている人、そして我が子のスポーツを応援している人、是非一度この作品を見て、自分が正しいか胸に手をあてて考えてみてください。


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